伝えればちゃんと伝わる。
エンジニアの僕がスポーツ居酒屋を開いた理由。

スタジアムにサッカー観戦に行くような、ラフな雰囲気の空間をテーマとした、スポーツ居酒屋を経営する河野さん。7年間務めたエンジニアを辞めて脱サラした背景には、抱えていたコンプレックスと向き合うことで得た、キッカケがありました。

河野 創

こうの はじめ|スポーツ居酒屋経営
東京都立川市にて、スポーツ居酒屋KITEN!を運営する。

スポーツ居酒屋KITEN!(JR中央線立川駅から徒歩6分)

内気だった中高生時代


大学に入るまでの学生時代は絵に描いたように大人しく、休み時間には小説をひたすら読んでいるような、クラスではもちろん目立たないタイプの学生でした。会話をしているとどもってしまい、更に早口になってしまうのがとてもコンプレックスでしたね。「話してもどうせ伝わらない」と、伝えるという行為を諦めてしまっていたんです。

中学に入学してからは、父に買ってもらったコンピューターがきっかけで、インターネットの世界にどっぷり浸かるようになりました。16歳の時に、初めて自分で掲示板サイトを開設し、将来はパソコン関係の仕事に就きたいと考えていました。

運営していた掲示板上での話題は、もっぱら野球のことばかりでした。運動はできませんでしたが、家族揃って野球好きだったんです。特に地元のホークスが大好きで、野球の試合は年間60試合も観るほどでした。

そんな掲示板の繋がりで、18歳の時、インターネットの向こう側にいた人に会うために、初めて東京に行きました。当時の衝撃はとても大きかったですね。その華やかさに惹かれ、ここにいたら大好きな野球もたくさん観ることができると思い、東京の大学を受験することを決意したんです。

「伝えようとすれば伝わる」


上京して最初の頃は、大好きな野球を観ながら働けるという考えから、東京ドームやマリンスタジアムで案内のバイトをしていました。ところが、ある日友人と一緒に地元のサッカークラブ、アビスパ福岡の試合を観に行ってから、サッカーに関心をもつようになりました。初めての試合で、サッカーの応援ってこんなに楽しいものなのか、と驚いたんです。

その時の興奮は今でも忘れられません。ルールもわからなかったサッカーにどんどんのめり込み、野球よりもサッカーを観ることが段々増えていきました。

また、大学2年生からは、居酒屋のホールとして、オープニングスタッフのバイトをすることに決めました。ずっと苦手としていた、人と話すことを、いつか克服したいと思っていたんですよね。

ところが、働いて2日目で、「これは無理かも、やっぱり接客は自分には厳しいかもしれない」と感じました。席の番号は分からないし、早口過ぎてお客さんに「え、なんて?」と言われるし、とにかく最初は手一杯だったんです。

何よりも、接客をするということは、今まで避けてきた「伝える」ということを、自ら行わなければいけなかったんですよね。それでも、オープニングスタッフというフラットな環境にも助けられ、段々とお客さんと会話ができるようになっていきました。自分から自然に会話を始め、話を広げていき、お客さんが喜んでくれるようになっていったんです。

「伝えようとすればちゃんと伝わる」

ということを、身を以て感じられたような気がします。接客だけにとどまらず、自分自身の軸となる考え方を得た経験でした。

やりたい、楽しい>不得意


大学卒業後は、昔からの夢だったエンジニアの仕事に就くことができました。レンタルサーバーを扱う会社で働き、「インターネットは自分が支えている」という責任感とやりがいでいっぱいでした。

また、仕事の傍ら、趣味の延長でサッカーのトークイベントを企画するようになりました。「燃えろ!J2党」という、普段目立つことが少ないJ2のためのトークイベントで、ほぼ全てのJ2チームのサポーターが揃い、毎回サッカーに関わる活動をしているゲストを呼んで、大いに盛り上がるイベントでした。

そのイベントで司会を務めていたのですが、居酒屋で慣れていったとはいえ、僕の喋りは、他の人と比べたら伝わりにくいものだったと思います。興奮してつい早口になり、話していることの6割しか伝わっていないようなこともあったかもしれません。

でも、司会として人前で話すのが本当に楽しかったんですよね。なんだか、すごく生き生きしていたような気がします。また、イベントの合間の休憩時間に、たくさんのサポーター達が自ら交流を始めているのを見て、自分がそういった場を創っていることに大きな喜びを感じました。

そんな活動をしていたこともあり、5年ほど働いた頃、もっと違う方面で自分の力を活かしたいという気持ちを持つようになりました。エンジニアの仕事は責任もやりがいもあったのですが、裏方ではなく、もっと自分が表に立って仕事をしてみたいと思ったんです。

夢は突然叶う


トークイベントや、趣味のサッカー観戦を重ねていくうちに、試合後にみんなで飲んで騒げるような飲み屋を開きたいという、新しい夢を持つようになりました。

社会人になってからもサッカーの観戦によく行っていたのですが、スポーツ観戦をできるのが、BARなどの洒落た雰囲気のお店ばかりなことに、違和感を持ったんですよね。スタジアムでの試合中は、ビールを飲んで屋台のご飯を食べて、といった具合なのに、スポーツBARでは、よそ行きの服装で背の高い椅子に座り、お洒落なカクテルを頼んで、と、あまりにも、ギャップが大きいと思ったんです。

そんな背景もあり、座敷に座ってラフな雰囲気で、スタジアムに行くのと変わらない気持ちで来てもらえるお店が創りたいと思ったんですよね。こんな店を創りたい、と店のレイアウトを考えFacebookやTwitterに載せていき、どんどんイメージが膨らんでいきました。

ただ、飲食店を開くための資金を考えると、早くても10年後くらいという、漠然とした夢だったんですよね。

そんな折、以前トークイベントで出会ったスポーツバーを経営しているオーナーから連絡がきました。僕が発信していたSNSを見て、

「店はいつ開くつもりなんだ?」

と声をかけてくれたんです。僕は質問に対して曖昧にしか答えることができなかったのですが、「この店はもう閉めることにしたんだが賃貸の契約がまだあるんだよ。好きに使っていいからやってみないか?」と、思ってもいなかったチャンスをいただいたんです。

懸念していたコストについても、居ぬきの物件で抑えて始めることができるため、奥さんと話し合い、とりあえず半年挑戦してみることに決めました。だめならまたやり治そうという覚悟があったんですよね。安定したレールを外れる不安はありましたが、それよりもやってみたい気持ちが強かったんです。

話が決まってからすぐに脱サラを決意し、会社に辞表を出しました。自分がやりたいことを伝えるために発信し続けたことで、ずっと先の未来で考えていた「いつかやってみたい」を実現できたんです。

文化を創りたい


店の名前は、福岡の方言で「きてね」という意味の「KITEN!」と名付けました。自分のスタートということで「起点」という想いも込めています。

お店をOPENして4か月が経った今、やってみないとわからないことはたくさんありますが、このままやっていけそうな手ごたえは掴めています。今後はこのお店を「文化」にしていきたいんです。

小さいころ、公園に行けば誰かがいるからとりあえず行ってみる、といった経験がみなさんあると思います。まさにそれと同じように、何かイベントがあるから人が集まるのではなく、そこに行けば何か面白いことがあるという場所にしたいんです。昔、インターネットで掲示板を運営していた頃と同じで、みんなが集まる空間を創りたいんですよね。

まだ初めて日が浅いですが、描いていた理想の店に少しずつ近づいている気がします。いつかは、ここでトークイベントもやってみたいですね。

2014.05.06

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