苦しんだ転職の経験が武器に。 その選択を正解にするために、今動く。

株式会社NTTドコモで、新規事業開発に携わる下川さん。過去に老舗企業とベンチャー企業の両方で経験を積んだ下川さんは、行動し続けることを大切にしていると語ります。転職の経験から得た、下川さんの信念とは。お話を伺いました。

下川 佑斗

しもかわ ゆうと|株式会社NTTドコモ
1993年生まれ。明治大学経営学部卒業後、2016年に岡谷鋼機株式会社へ入社。営業として、自動車業界を中心とした三国間貿易に従事する。2020年、株式会社Relicへ入社。自社SaaSサービスのセールスや顧客企業の新規事業支援を担当。2021年に株式会社NTTドコモ入社。法人向けソリューション営業を行う傍ら、NTTコミュニケーションズ株式会社のイノベーションセンターにて、新規事業開発に携わる。

真面目にやれば、評価されるんだ


東京都杉並区で生まれました。幼稚園のときから近所のサッカースクールに入っていて、スポーツが得意な子どもでした。水泳も習っていましたが、コーチが厳しかったので、ある程度のレベルで辞めてしまいました。自分にとって、誰とやるかがすごく大事だったんです。

家庭の方針で中学受験をして、大学の付属校へ進学しました。中学3年生のとき、担任の先生から学級委員長に指名されました。それ以来高校3年生まで同じ先生が指名してくれて、委員長を務めたんです。特別成績がよかったわけではありませんが、真面目にちゃんと頑張っていれば評価されるんだなと感じて、すごく嬉しかったですね。

高校でもサッカー部に入りました。でも、思うような環境でプレーはできませんでした。足が速くてヘディングが得意だったので、僕はフォワードで点を取りたかったんです。それに反して、任されたのはセンターバックという縁の下の力持ちのようなポジション。

練習試合で一度フォワードに挑戦させて欲しいと、顧問の先生に頼みました。それで点が取れなかったら諦めますと。でも挑戦すらさせてもらえませんでした。適性を見た判断だったのかもしれませんが、やってみた結果を評価して欲しいのに、それができなかったことが不満でした。そこでサッカー部を辞め、ラグビー部へ転部する決断をしたんです。人生で初めて、自分で何かを選択した瞬間でした。

ラグビー部での活動は、最初はケガばかり。試合にも練習にも出られない期間がありました。それでもチームのメンバーには恵まれ、一緒に過ごす時間はすごく楽しかったです。メンバーの支えもあって、少しずつやれることが増えていきました。

後悔している後ろ向きな決断


大学では、国際経営学を専攻しました。親の影響もあり、英語を学びたくて留学を考えていました。

部活は体育会のラグビー部に所属するつもりで、名前を書いて提出していました。でも入部の一週間前になって、やっぱり辞めますと伝えたんです。そのラグビー部は、全国でもトップクラスの強豪チームでした。今まで自分はチームの中心メンバーとしてやってきたけど、日本代表がいるチームに付いていけるかなと不安になってしまったんです。その強さにびびってしまった。

そこで体育会には所属せず、準体育会の方のラグビー部に入りました。このラグビー部では副キャプテンも務めたし、チーム内で一定の活躍はできました。ただ一方で、体育会を辞めた決断は後悔として心に残り続けました。留学のためという理由もありましたが、後ろ向きな決断だったからです。

せっかくトップクラスの環境でラグビーができるチャンスだったのに、そのチャンスを逃してしまった。もしそこにいたら、自分はどこまでやれたんだろう。後になってその興味の方が、強く残ることになりました。

看板を捨てて、自分に残るものは何か


卒業後はグローバルな仕事がしたくて、商社や海外展開しているメーカーなどを受けました。最初に内定をもらったのが、鉄鋼や化成品を扱う老舗商社です。

入社前に社員の方に会う機会があり、最年少で室長に就任したという人とお話しました。いかにも商社マンという感じで、この人の元で働きたいと強く思いました。そうすれば自分もきっと成長できると。同じ部署に配属して欲しいと会社に要望を出し、入社後は一緒に働くことになりました。

担当したのは営業です。自動車部品メーカー向けに部品や化学製品を提供する仕事で、三国間貿易に携わっていました。憧れた上司は、常に複数の選択肢を持っている人。相談すれば的確な答えが返ってくるし、いつも自分の細かいところまで見てくれていました。英語を使ってグローバルな仕事をするのも楽しかったですね。

しかし仕事に慣れてきたころ、自分の将来へ不安を感じるようになりました。この会社のキャリアステップは、同じ製品を扱って経験を積んでいくというもの。入社5年目になり、部署の先輩たちを見たときに、なんとなく自分の未来が予測できてしまったんです。このままいたら、一定のポジションまでは行けそうだと。

安定はしている。でも人生としては面白くないんじゃないかとふと思いました。この安定を捨てたら、自分には何が残るのだろう。会社の看板を外したとき、自分にどんな市場価値があるのかを考えるようになりました。

そこで、コロナ禍真っ只中にも関わらず、転職活動を始めました。自分自身に力を付けたくて、とにかく外に出てみようと思ったんです。失敗してもいいから、若いうちに動こうという気持ちでした。

文化も言語も違うベンチャー企業へ


転職活動をして出会ったのが、企業の新規事業開発をサポートするベンチャー企業です。自社サービスを提供している会社だったので、自分が得意とする営業スキルを活かしながら、新しいスキルも身に付けられそうだと感じました。

前の会社が創業350年以上の老舗企業だったのに対し、今度は設立して数年のベンチャー企業。考え方もスピード感も使われている言語も、全く違います。パソコンはMacだし、業務でチャットツールを使うのも初めて。まるで留学したときのように、環境の変化に戸惑いました。

以前は既存クライアントへの営業だったので、新規開拓をする必要もありませんでした。自然と案件が入ってくる環境だったんです。でもここでは、自社サービスをどう売り出すかを考え、どこに広告を打つかから検討しなければいけません。一日200件テレアポをしたこともあります。マーケティングも自分たちでやらなければならず、全く分からないマーケティング用語を学ぶところから取り組みました。インプットとアウトプットを同時にこなしている状況でした。

仕事はとにかく大変で、正直楽しかったとは言えませんでした。ひたすら筋トレをしているような感覚でしたね。思うような成果は出せず、周りから評価されている感覚はあまり無かったです。

辛かった経験は、無駄じゃなかった


自分がほんとうにやりたいこととは違う気がして、環境を変えるために動くことにしました。

そんなとき、クライアントだった通信事業者、NTTドコモに興味を抱いたんです。新規事業にたくさん挑戦していることに驚き、こんな会社で働いてみたいと思いました。面接では、新規事業開発に携わってきた経験が認められ、顧客の課題解決をするソリューション営業を任されることになりました。

ところがいざ入社してみると、ソリューション営業よりもモバイル回線の営業に携わる時間が増えていきました。明確な目標が与えられず、ソリューション営業の案件もない。自分の強みを全く活かせず、誰も何も教えてくれない状況で、放置されているような気持ちでしたね。入る会社を間違えたかなと、ずっと思っていました。

そんなとき、社内起業や社会変革を目指す人材を育成する「ドコモアカデミー」の募集を見つけたんです。このままだと自分の市場価値が落ちていくという危機感があって、応募してみました。

ドコモアカデミーは、さまざまな講師陣と共に、新事業開発に必要なマインドとスキルを学ぶ場です。とにかく行動してみようというベンチャーマインドを持った人がたくさん集まっていて、自分の感覚と合うと感じました。居心地がよかったです。この環境に対して何か還元したいし、ここで活躍すればきっと誰かが見てくれると思いました。

また、アカデミーでベンチャー企業での経験を話すと、みんなすごく関心を寄せてくれました。テレアポの話も「事業の立ち上げにはそういうことが必要なんだ」と興味を持たれたんです。とても辛い期間だったけど、あの経験は全く無駄じゃなかったと思いましたね。同じような経歴を持つ人は少なかったので、あの経験のお陰で自分は稀有な存在になれたんです。

アカデミーでは、新人が会社に慣れるのをサポートする、オンボーディング事業の案を出しました。アイデアの元となったのは、自分自身がこの会社に入って感じた孤独感。新しく入った人が、入社後何をやるべきかを設計して、会社側も可視化できるSaaSサービスをつくりたいと思いました。

アイデアは社内の新規事業コンテストで、セミファイナルまで残りました。しかし、検証を続けていく段階でサービス化の課題が見え、結局事業化には至りませんでした。

行動し続ければ、評価されるはず


今は、NTTコミュニケーションズでソリューション営業をしながら、イノベーションセンターという部署でオープンイノベーションに関わっています。社外の技術と社内の技術を掛け合わせ、新規事業を創出していく仕事です。

新規事業に携わってきたキャリアが自分の武器になると気づいたので、その力を伸ばしていきたいと考えました。オープンイノベーションは未経験の分野ですが、大企業でしかできないイノベーションに挑戦して、経験を積みたいと思っています。

同時に、自分個人の事業案を形にすることもやっていきたいです。人の暮らしを少し豊かにするような事業をやりたいですね。成り立ってはいるけど満足できていない状況にプラスアルファして、暮らしをよりよくする事業ができたらと思っています。そのための案を今考えているところです。

振り返ってみると、僕は社会人になってまだ成功できていません。ベンチャー企業では思うように活躍できなかったし、新規事業案も形にできなかった。でも学級委員長に選ばれたときのように、行動をしていればいつか評価してもらえるはずだと信じているんです。そこを目指して今頑張っていますね。やってきたことに対して何か返ってくれば一番嬉しいし、モチベーションになります。

大事なのは、行動し続けることです。これまでいろんな選択をしてきましたが、選択をした時点では、その選択が正しかったのか間違いだったのかまだ分かりません。すごく嫌なことがあって、間違えたと思うかもしれない。でも行動し続ければ、その選択を正解にできると思うんです。ベンチャー企業に入ったときは辛かったですが、行動していった結果、それが強みになりました。

選択しないのが一番のリスクです。体育会のラグビー部に入らなかったことをずっと後悔しているから、僕はそう思います。あそこで選択していたら、人生変わっていたかもしれません。選択し、できるだけその選択を正解にするために、行動し続けたいですね。無駄な経験なんて、一つもないと思っています。

2023.06.01

インタビュー・ライティング | 塩井 典子
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