「育てる」でなく「育つ」、保育士の私が起業した理由

「子どもの“イマ”を虹色に。」をモットーに保育士・幼稚園教諭のための総合情報サイトHoiClue♪(ホイクル)を中心とした、保育関連事業を運営する雨宮さん。乳幼児期の子どもと接する保育士として働く中で感じた危機感から、保育を取り巻く環境の改善のため、現場と同じ目線に立ち事業を運営しています。子どもが好きという気持ちから保育士を目指した先に、いったい何を見て、何を感じたのでしょうか?

雨宮 みなみ

あまみや みなみ|保育士情報共有サイト運営
保育士情報共有サイトHoiclue♪(ホイクル)の運営を行う、株式会社キッズカラーの代表を務める。

Hoiclue♪(ホイクル)
株式会社キッズカラー

自然な笑顔でいれる仕事


昔から子どもが好きで、近所の子たちの面倒を見るのが好きでした。

中学校の職場体験で保育園に行き、仕事の手伝いをさせてもらったのですが、
とにかく「あーもう楽しい」という感覚でしたね。
自分がこんなに自然な笑顔でいれる仕事があるということに、衝撃を覚えました。
それまで私が知っていた仕事のイメージとは全然違っていたんです。

高校に入る頃には保育の道を進むことに決めていました。
夏休みに保育園に連絡し、遊びに行かせてもらったり、
早くから保育の資格が取れる短大に進むことを決めたり、気持ちはブレませんでした。

保育士養成校の短大に進学すると、実際に保育園や幼稚園での実習にも参加しました。
初めて実習で行ったのは私が通った幼稚園で、すごく親しみをもって実習に通ったのですが、まぁ辛かったです(笑)。
初めての現場に緊張して、色々なことに神経を使い過ぎていたこともありましたし、
仕事の後に日誌を深夜まで書き続けたりと、大変でしたね。

それでも、やっぱり子どもと関わるのは楽しいんですよね。
まさに、好きなことを仕事にするという言葉がぴったりでした。

その後、就職活動を経て、ついに待ち望んだ保育士として働き始めることになりました。

好きだけじゃできない仕事


保育士になって最初の一年は、今まで生きてきた中で一番辛かったです。
好きじゃないとできない仕事です。でも、好きだけじゃできない仕事でもありました。
入った保育園が設立2年目だったこともあり、周りの先生も忙しくて余裕がなく、覚えることに追われる日々でした。
夜中に帰ることがほとんどでしたね。

それに輪をかけるように、他の先生の退職の影響で、5歳児のクラスを持つことになったんです。
最終学年のため求められることも多くなりますし、何より、子どもたちの保育園最後の運動会を控えた時期だったんですよ。

正直、自分が5歳のクラスの運動会を務めることにすごく大きな不安がありました。
子どもたちの最後の運動会を、自分の不甲斐なさで終わらせたら申し訳ない、という気持ちでいっぱいだったんです。

悩んだ結果、その日から、毎日運動会の練習のための日記を克明に付け、全力で準備に没頭しました。
今考えても、相当力が入っていましたね。

直前で、子ども達が「もうやだ」と疲れてしまったり、他の先生からは「だから言ったじゃない」と突き放されたりと、
もう本当にどうしたらいいかわからず限界近くまで来ていましたが、なんとか本番を子どもたちと楽しむことができたんです。

ある時、その子たちの卒業式を控えた時期に、私が階段で子どもたちのクレヨンを落としてしまったことがありました。
その時に子どもたちが、

「も〜う、一人で頑張らなくていいんだからね!」

と言ってくれたんです。
その瞬間、責任感を背負い込んで無理してきたことが、なんだか一人よがりだったことに気付いて。
あぁ、“目の前にいる子どもたちが真ん中にいないと、意味がない”って。

いつの間にか視野が狭くなっていた私にとって、いちばん大切なことを子どもたちが気付かせてくれた出来事でした。

保育を取り巻く環境への危機感


2年目からは少しずつ仕事がスムーズになりましたが、相変わらず夜は遅く、
土日に仕事をすることもあり、体調を崩したこともありました。
ちょうど3年目に家族が病気をしたことも重なり、退職して他の公立保育園の、非常勤保育士になることに決めました。

初めて違う園で働いてみて感じたのは、保育園ごとにこんなに保育が違うのか!ということでした。
ルールの厳しさや子どもへの接し方、何をとっても本当に衝撃をうける程違ったんですよ。
なんだか自分の視野がすごく広がったような気がしました。
そこで働くうちに、自分の中でもこういう保育がしたいという考えが定まってきて、
保育の方針を任せてくれる裁量の大きい大手の園で働き始めることにしました。

そうやって複数の園で働く中で、段々と保育士を取り巻く環境への危機感を強く感じるようになったんですよね。

まず、保育士の離職がすごく多かった。
もしかしたらお母さんよりも長く一緒に過ごしているかもしれない保育士がコロコロ変わるのは、
子どもたちにとって絶対に良くないと思いました。

それに、子どもの大切な時期に関わるのに、保育士自身の経験や知識が浅ければ、それだけの中でしか保育ができないんです。
保育のことを学びたい気持ちはあるけど、時間はないし、保育の本が置いてある書店も限られている。

なんだか、そんな環境にすごく危機感があったんですよ。
保育士として働きながらも、保育を取り巻く環境をなんとか改善できないか、毎日考えるようになりました。

そんなある時、保育の不安が軽減されて楽しさにつながるようなきっかけがあったらいいなと思うようになったんです。
自分自身が一保育士としてほしいものを作ることで、少しでも保育士の不安を減らすためにできることがあるんじゃないかと思ったんですよ。
思いついた後で気付いたのですが、ちょうど5月5日(こどもの日)のことでした。

そして、そのアイデアをもとに、私は会社を立ち上げることに決めたんです。

「育ちを保つ」


自分が保育士としてこんなものがあったら良かったと思える情報共有サイトとして立ち上げたのが、
Hoiclue♪(ホイクル)でした。
Hoiclue♪では子どもたちと一緒に楽しむ「遊び」を中心に、保育に役立つ情報を提供しています。

結婚と会社設立を機に保育園は退職しましたが、その後もアルバイトで保育士を続け、
子どもといる感覚は持ち続けていました。

ただ、少しずつ使っていただける人が増えていく中で、求められていることを形にしていくスピードを速めるためにも、
去年からは会社一本に集中することにしたんです。

多くの人から必要とされていることへの嬉しさと同時に、期待に応えなければという責任感も生まれ、
保育とはまた違った責任感を感じていますね。

今運営しているのは、保育士さんのためのサービスではありますが、保育士さんが便利なだけではダメだと思うんです。
その先は、やっぱり子どもの幸せに向いていなければいけないと思うんですよね。

保育の現場を離れてみて、改めて「保育」とは何だろうと考える機会が増えました。
そんな中で気付いたのは、保育とは文字通り、

「育ちを保つ」

ことなんじゃないかと思うんです。
子どもを育てるのではなく、子どもが持っているそもそもの育つ力をいかに保つかだと思うんですよ。

子どもは大人を経験していないけれど、大人は子どもを経験しています。
だからこそ、大人が少しだけ余裕をもって子どもに歩み寄って、同じ視点をもつことで、
子どものイマはもっと輝くんじゃないかと思うんです。

そんなことが無理なく生まれていく環境を増やしていきたいと思っています。

2014.04.30

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