宴会の楽しい雰囲気をもっと多くの人に。日本酒を飲むことを、あたりまえに。

ネット通販の事業を行いながら、「日本酒アンバサダー」として日本酒を広めるために活動する大森さん。小さい頃から将来は独立すると決め、歩んだ半生とはどんなものだったのでしょうか。お話を伺いました。

大森 慎

おおもり まこと|日本酒アンバサダー
日本酒アンバサダーとして、日本酒を広める活動を行う。

宴会の楽しい雰囲気が好き


新潟県豊栄市(現:新潟市北区)で生まれました。小さい頃から、宴会が好きでした。もちろん私がお酒を飲むわけではありません。お正月などに親戚が集まり、お酒を飲みながら笑って話している楽しそうな雰囲気を見るのが大好きでした。早く大人になって、一緒にお酒を飲みたいと思ってましたね。

9歳の時に両親が離婚して、母と弟妹と暮らすことになりました。父は自分で商売をしていて、とても苦労していたそうです。母からは、「将来は安定したお給料をもらえるサラリーマンになりなさい、できるなら公務員になりなさい」と言われて育ちました。

ただ、私は父の血を受け継いでいましたし、サラリーマンになるよう言われ続けた反動もあったので、将来は独立したいと心のどこかでずっと思っていましたね。

中学生の時、バンドを始めました。周りの友人たちは人気の高いギターやベースを始めましたが、私はドラムを始めました。人と違うことをしたいという考え方が徐々に湧き出てきましたね。

高校生になると、地元のお寿司屋さんでアルバイトを始めました。家計を少しでも助けたいと思ったことと、働くならまかないが出て食費がかからない飲食店が良いという母のアドバイスがあったからです。

高校卒業後は、千葉県の大学に進学しました。サークルなどは一切見向きもせず、すぐに居酒屋でアルバイトを始めました。学生生活の大半をアルバイトをして過ごしました。

高校・大学の7年間のアルバイトを通じて、飲食店で働くことの素晴らしさを学んだとともに、宴会で楽しそうにお酒を飲む大人たちをここでも目の当たりにしました。やっぱりお酒の場って楽しいなって改めて感じましたし、その楽しい雰囲気を間近で見れることも好きでした。将来は自分で飲食店を開いてみたいと思うようになりました。

そこには日本酒がなかった


20歳になると、お客さんとして居酒屋に行くようになりました。ただ、大学生の飲み会では安く飲めるチェーン店などの居酒屋にしか行けず、そういうところに置いてある日本酒は、あまり美味しくなかったんですよね。一気飲みのツールみたいな感じでしたし。そういう雰囲気で日本酒を飲むのって、おかしいなと感じてました。何より楽しくなかった。

また、メニューには銘柄さえ書かれておらず「日本酒」とだけ書いてあるお店が大半でした。地元新潟では、安い居酒屋でさえ、銘柄はもちろん、純米酒や吟醸酒など細かく書かれていたり、それを飲む大人もしっかりお酒と向き合いながら楽しく飲んでいて、全然違うんですよね。大人に連れてってもらった子どもの頃の記憶でも、メニューに「日本酒」だけのお店はなかったです。

将来自分で開く飲食店は、日本酒を知ってもらえるお店にしようと思いました。

30歳までに独立すると決め、大学卒業後は開業資金を貯めるために就職することにしました。稼げる仕事を探していると、不動産販売の営業は成果次第で給料が変わると知り、不動産会社に入社しました。

仕事は飛び込み営業が大半で、お客様に怒鳴られたり追い返されたりすることもありました。大変でしたが、「世の中にはもっと辛い目に遭っている人がいるだろう」と思って、落ち込むことはありませんでしたね。脳天気だったんです。

ただ、自分は会社員に向いていないと感じました。感覚的なものなのでうまく表現できないのですが、どこか疎外感があったんです。自分のせいかもしれないですけど、会議やミーティングに参加できていない自分がいて。心ここにあらずみたいな。

あと、新入社員の言葉がなかなか上に届かないと言うか。会社って、仕事の役割は違いますけど、社長から平社員までひとつの方向を向いている必要があると思うんですよね。でも、営業の人間は会社のコマのように扱われている気がしてしまって。やっぱり組織の中にいるのは向いていないというか、何かが違うかなと思っていました。

30歳で独立するための経験


1年ほど働いた後、友人が経営する会社に転職しました。組織が苦手と言っても、独立するまでにもう少し社会勉強したいと思っていましたし、友人が立ち上げたばかりの会社を手伝ってあげたいという気持ちもありました。

会社の規模が小さかったので、一体感があり楽しかったですね。独立までに別の経験もしたいと考え、3年で区切りを付けて会社を辞めました。

住み込み・観光地・高価格帯のお店で働いてみたいと前々から思っていたこともあり、箱根にある会員制ホテルのレストランで働き始めました。ここのお客様は今まで出会ったことがないような上品な方ばかりでした。喋っている内容だけでなく、話し方、雰囲気、しぐさなどが素晴らしく、そのようなお客様にご満足いただくための接客スキルがつきました。他にも、和食・フレンチ・イタリアンなどのマナーや作法など、全てが勉強になりました。

初めは1年ほどで辞めようと思っていたのですが、みなさんに良くしてもらい、とても居心地が良かったので、3年間働きました。気づけば29歳。独立すると決めていた年齢が迫っていました。

飲食店を開くという目標はなくなりかけていました。いい物件がなかなか見つからなかったことと、何よりも、料理や価格帯など、日本酒を広めるためにはどんなお店にするべきか、「これだ」という決定的な案が浮かばなかったんです。なので、別の形で独立する方法を探しました。

独立すること自体に不安はありました。雇われている方が気が楽ですし、本当に自分にできるのか、失敗したらどうしよう、と頭をよぎるんです。でも、「やってみなきゃ分からないし、とにかくやっちゃえ」と思い、勢いで独立を決めました。

主催者としての達成感を感じる瞬間


もともと日本酒を広める活動をしたいと思っていたので、独立するにあたって比較的自由な時間を作れることが必須条件でした。色々調べる中で、ショッピングサイトのAmazonが、通販ショップ運営で一番面倒な梱包や発送業務の負担を減らせるサービスを提供していると知りました。

この業務が省けるなら、ある程度自由な時間を持てる。以前からネットショップやオークションサイトを使っていたので、インターネットでものを売ることに抵抗はありませんでしたし、これがベストな独立方法だと思い、Amazon上で自分のお店を持ち、ネット通販を始めました。

並行して、「日本酒アンバサダー」と名乗り、日本酒を広める活動も始めました。この肩書きは自称なんですけどね。どうせやるなら人と違ったことをしようと思って。アドバイザー、コンサルタント、コンシェルジュとか、他にもいっぱいあったんすけど、ネットで検索して出てこなかったのがこれだったんです。少なからず日本酒の知識があることを証明するためにと、日本酒のソムリエとも言われる唎酒師の資格も取得しました。

日本酒活動の最初は、ブログを書き始めました。「日本酒を飲むとモテる」という切り口でちょっと強気な感じで記事を書いてみたのですが、全然でしたね(笑)。「日本酒は楽しい」「人と人とをつなぐ」「美容や健康にいい」といった方向にシフトしました。

独立して半年経つ頃には、日本酒に関わるイベントを企画するようになりました。一番最初のイベントは、地元新潟の酒蔵さんに千葉のレストランまで来てもらい、イタリアンと日本酒のマリアージュ的なイベントを開催。当日はめちゃくちゃ緊張して、しどろもどろでしたね。進行は酒蔵の方にほとんどお任せ、私はお客さんと一緒に日本酒を飲んでいるだけでした。

それでも、イベント自体はうまくいったと思います。自分で企画するのは、やっぱり楽しくてやりがいがあります。主催者としての充実感や達成感が違いますし、自分の呼びかけでこんなに集まってくれたというお客様への感謝、一緒にイベントを盛り上げた飲食店さんや酒蔵さんとのチームワークも生まれてくるんですよね。その後もイベントを不定期で開催していきました。

日本酒を広めるアンバサダーとして


現在では、ブログでの発信やお酒に関連するメディアでの記事執筆に加え、インターネット動画の番組で自分の日本酒コーナーを担当させてもらえるようになったり、日本酒のコンテストの審査員までやらせてもらえるようになりました。本当にありがたいことです。

イベントも、大小含めると月に1回くらいのペースで企画しています。一緒に日本酒を飲みに行こうというラフなものから、飲食店さんに酒蔵の方をお呼びしてお酒の会をやったり、お客様と一緒に酒蔵見学に行ったり、日本酒の原料であるお米との関わりを作るために、田植えや稲刈り体験をしたりもしています。

独立して3年ほど経ち、自分の時間の半分近くは日本酒の活動に使えています。今後は、その時間をもっともっと増やしていきたいですね。

今後は、実際に酒造りをするイベントを企画してみたいですし、将来はやっぱり日本酒を楽しんでもらえる飲食店を開いてみたいとも思っています。個人的には、1500を超えると言われている日本全国すべての酒蔵さんに行ってみたいですね。やりたいことは尽きません。

このアンバサダーとしての活動を通じて、最終的には「日本人が日本酒を飲むこと」をあたりまえにしたいと思ってます。日本酒の活動を始めてから、人との御縁がどんどんつながっていき、今では本当に多くの人にお世話になっています。毎日新しい方と出会えるので、楽しくて仕方ありません。そんな貴重な経験をさせてくれる日本酒に、恩返しをしたいという気持ちもあります。

何より、私はやっぱり日本酒を飲むことや、宴会でみんなが笑って楽しんでいる雰囲気が大好きです。この日本酒の文化をもっともっと広げていきたいですね。日本酒の魅力を表現する方法はたくさんあると思うので、今後も色々なことにチャレンジしていきます。

2016.02.17

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