東松 寛文さんストーリーのトップへ
会社の枠を超えたクリエイターになる
2015年の5月、キューバがアメリカとの国交正常化の影響で、大きく変わるかもしれないと聞きました。行くなら今しかないと思い、首都のハバナに向かいました。
観光地を回るのはすぐに飽きたので、現地の人に声をかけてみました。すると家族の食事に招待されたり、一緒に踊らされたり、驚くほどフレンドリーに迎えられたんです。水たまりにはまって靴が泥だらけになった時なんか、おばちゃんが軒先で洗ってくれて、乾かす間はみんなでお茶しましょうと、もてなしてくれました。
彼らはすごく貧しいにもかかわらず、生活を心から楽しんでいました。だからこそ人をもてなす心のゆとりがある。「自分らしく人生を楽しむこと」を学ぶ旅になりました。
入社4年目に、新聞広告全体をプランニングする部署に異動しました。それまでは忙しすぎて考える余裕はなかったんですが、仕事について考える時間が持てるようになりました。なんのために働くのか、改めて考えるようになったんです。
他にも、残業をたくさんしている後輩の方が給料が多いことに疑問を持ったり、転職を検討してみて、報酬のために頑張るような働き方に違和感を感じたり。お金のために頑張るんじゃなくて、やっぱり好きなことがしたい。そう思うようになりました。
そんな時、会社の先輩が投稿したSNSの投稿が目に留まりました。
「タレントのPRやりました」「新聞にでかい広告載せました」みたいな内容に「いいね」が200人くらい付けられていました。それを見たとき、「面白いことやってるのに、反響はこんなもんなんだ」って、なんだかがっかりしたんです。
自分のやりたいことの規模感って、「ありがとう」を何人から言われたいかだと思うんです。10人にありがとうって言われるだけでよければ、家族とか親友だけに素敵なことをすればいい。100人からなら友達に、1000人からならSNSで繋がる人に素敵なことをすればいい。それを考えたときに、僕は世界中の人に「ありがとう」って言われたいと思ったんですね。せっかくなら、同じ時代に生きている人みんなに言われたら超最高じゃんと思ったんです。
そのためには、社内だけで頑張っても広がらないと思いました。僕が満足できるような反響を得るには、会社の枠を超えたスーパークリエイターになるしかないと思ったんです。それからは、会社の外でできることを探すようになりました。仕事が忙しいにもかかわらず、わざわざ行きまくっている海外旅行に何かヒントがあるかもしれないと直感し、なぜ僕はわざわざ旅に行っているのか真剣に考えるようになりました。
その時ふと、キューバの旅を思い出しました。キューバと日本の暮らしが全く違うように、国や文化、社会が違えば、暮らしは大きく異なります。そこで、自分にとっての旅行の意味は、観光地を回るためではなく、人々の多様な生き方や働き方を知ることなんだと腹落ちしたんです。
公立の小中高に行き、国立の大学を出て就職する、それが普通の選択だと思っていました。言ってしまえばレールの中の真ん中らへんを走って来ただけでした。
日本では見ることができなかった、いろんな生き方の選択肢。それを知れた僕は、すごくラッキーでした。時間もあって、お金もあって、語学力はないですが勇気があったことで海外旅行に行くことができ、生き方の選択肢を知ることができた。でも、この3つがネックになって、海外にいけない人だっている。だから、僕が発信することで、より多くの人が生きる選択肢を知り、自分らしく生きることにつなげたい。
そして、そうやって情報を発信していき、「ありがとう」と言われる規模を広げていくことが、自分のやりたいことなんだ。それがきっと、僕の「自分らしい生き方」なんだって気づいたんです。