永田 恭子さんストーリーのトップへ
お客さんの顔を直接見た商売の方が納得できる
最初は友達など周りの人に宝石を買ってもらいました。すると、色々な宝石業者から自社の宝石を売って欲しいと言われるのですが、石の値段がどうやって決められるのか疑問に感じるようになりました。枠の値段は地金の目方でわかりますが石の値段は大きさでもなく種類でもない。「はて?」と困りました。
それなら実際に石の買い付け現場を見に行くしかないと、「一緒に買い付けに行かないか」と声をかけられたのを幸いに、私もタイに行くことにしました。「女性で直接買い付けに海外に行くなんて!」と周りからは驚かれましたが、納得しなければすまない私の性格で、他の男たちは何千万と持って行く中、無謀にもなけなしの30万円だけをもってタイに飛んでしまったんです。
買い付けの現場では、現地人の売人と一対一で丁々発止とやり合い、彼らが持ってきた石のなかから気にいったものがあれば値段交渉をして折り合えば商談成立。大手の業者はロットで大量に買うことで値段を安くしていましたが、私はその買い方は面白くないと感じ、自分で「絶対にこれが売れる」と思うものを1ピースだけ買っていこうと決めました。
ただ、選ぶといってもどんな石がいいのか見当もつきません。すると、ルビー好きの所長が大切にしているというルビーを、大事そうに引き出しから出して見せてくれました。そして、無理やりそれをねだって分けてもらい、日本に持ち帰ることにしました。
ところが、デパートにおいてもらいましたが売れませんでした。実際、そのルビーはヨーロッパなどでは大人気だったのですが、日本ではまだあまり知られていなかったのです。また、例え売れても約束手形の支払いになるので、現金になるのは何か月も先とのことでした。それに、デパートで販売しても、どんな人が買うのか分かりません。それなら自分で売ろうと思ったのです。
そこで、まずはそのルビーでペンダントを作ることにしました。すると、そのペンダントを見てルビーを気に入ってくれる方が増えていき、次第に「ルビーを買うなら、永田さんに頼もう」と言ってもらえる程になっていったのです。
その後も、自分の気に入った石だけを仕入れて、デザインにも作りにもこだわって、売った後もいつまでも気持ちよく、安心して使ってもらえるジュエリーを、始めから終りまで自分の手で作り続けています。そうすれば納得のいく品物を、直接お客さんに見てもらって売れるし、安心して自信をもって売れます。