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研修医を集めて高知の医療現場を改革
楽しいことが多かった大学時代ですが、5年生の時にショックな出来事がありました。病院の職場環境が悪く、うつになっていた先輩が自殺したんです。とても衝撃的で、これから先自分の同級生や先輩、後輩が自殺したらたまらないと思いました。二度とこんなことが起こらないよう、高知の医療現場の環境を良くしようと決めました。
そのために自分ができることは、人を集めることなのではないかと思いました。高知の病院に若者が集まってマンパワーが増えれば、少し上の先生に余裕ができる。そうすれば職場環境がよくなり、若手の教育もしっかりできるだろうと思ったんです。
そこで始めたのが、高知県のブランディング。学園祭の時に学んだスキルを活かして、ポスターなどをデザインして作り直しました。若者に響くような高知のイメージを作って、研修医を集めようという意図です。
医者の世界にも研修医を呼び込むための合同就職説明会みたいなものがありますが、高知の病院のブースは閑散としていたんです。そこで、「胸骨切開ティッシュ」などユニークな制作物を自腹で勝手に作って、勝手に配っていました。すると、それまで配布物はほとんどはけていなかったのですが、3万個近くもはけるようになったんです。研修医の数も増えて、もともと40人くらいだったのが、70人近くにまでなりました。
こうしたブランディングと並行して、研修医同士の仲を深めるための集まりも定期的に開きました。高知は病院単位での意識が強く、病院同士があまり良好な関係ではありませんでした。でも、それでは高知から人がいなくなるだけ。だから自分の代の研修医同士では、仲良くしていこうと思ったんです。
こうした活動を「コーチレジ」と呼んで、どんどん進めていきました。今後も続いていってほしいと思ったので、僕が代表になるのではなく、高知の研修医が代々受け継ぐことのできるシステムをつくりました。