アクセラレーターとして、生体認証を利用したガジェットのチームでマーケティングをやっていた時にシリコンバレーに行きました。

日本国内でも見込み顧客にヒアリングしていたのですが、NECのお客さんだったりすると、気を遣ってあまり本音の感想を言ってもえません。国内ではなくて、ガジェット系の本場のシリコンバレーに行って聞いてみよう、ベンチャーキャピタルに見てもらおうということになり、シリコンバレーに、チームのリーダーと一緒に行きました。

シリコンバレーに行って、2日でピボット(事業の方針転換)しました。初日から、ベンチャーキャピタルに「こんなの誰が使うの?」と言われて。10社ぐらい回って、ニーズがないと分かってピボットしたんです。

自分自身の考え方が変わりました。一緒に行ったリーダーも人が変わったようになって帰ってきました。

技術力で成長してきたNECのような会社だと、会社の中の視点、自分たちの技術で提供できるプロダクトを重視し、それを変えないようにロジックを組んでしまいがちなんですね。それが、シリコンバレーでのたった1週間で変わって、使ってもらえるようにプロダクトを作る、という発想に変わりました。お客さんが課題を持っていて、うちの技術がその課題に対するソリューションとしてフィットするか。課題のソリューションが紙と鉛筆、アナログでもできるならそれにピボットする。必ずしも自社の技術を使わないといけないという発想がなくなりました。

その後、経産省のプログラムでシリコンバレーに再度行く機会があり、「チャレンジできる環境」を作りたいな、と強く感じました。

シリコンバレーには日本人村みたいなとこがあって、アイデンティティが日本にある人たちが集まって、世界的なインパクトを、大きくしてやろうって思っているんですよ。同じ視点で、うちの会社から世界に出て行こうとする、世界の発展に寄与できる、そういう人を増やしたいなって。

日本全体としてやらないとやばいぞとも、思いましたね。

日本の大企業にいると、リスクをとってチャレンジしている人の存在を目にする機会が非常に少ないと感じます。大企業にいると新規事業がほとんど出てこないんです。

シリコンバレーにいると、どこ見てもベンチャー、どこ見ても新しいことをやっている人です。もちろん失敗する人もいて、事業をEXITする人もいます。

でも、成功している人を見ると、みんながみんなザッカーバーグじゃないし、みんながみんなジョブスでもない。普通の人たちが成功していくという姿が身近にあることがすっごい大きいんです。

日本でそれを作ろうと思っても、作れるものではない。環境ってそういうことなんじゃないかなって。社内では、新規事業での成功体験を積むことまでいかないまでも、チャレンジできる環境を作りたい。こういうことがあってもいいんだ、やってもいいんだって思わせる環境を作りたい。そう思います。