サボりがちだった授業の中で、倫理の授業だけは興味を持てました。生徒が自分で考える時間が長い授業スタイルだったので、飽きずに取り組めたんです。

毎回異なるテーマを扱う中で、あるとき環境問題が取り上げられました。授業で、このまま環境破壊が進んでいった場合、人類が地球に住めなくなるかもれしれないと知って恐怖を感じました。授業が終わっても、環境問題への漠然とした不安が頭から離れませんでした。自分の子孫や未来を生きる人々が安全にこの地球に暮らせなくなるのが怖かったんです。

環境問題への関心はあったけど、仕事に結びつけては考えられなかったので、卒業時は、なんとなく自分に向いていそうだと感じて美容師の専門学校を選びました。

専門学校に通い始めても、不安が頭から離れませんでした。ずっと一人で考え込んでも何も始まらないと思い、学校の友達への呼びかけを始めました。地球環境が悪化していると伝えた上で、「電気こまめに消そう。アイドリングやめてみない」などと促してみたんです。大抵の場合、「えらいね」と感心されて終わりで、誰も真剣に取り組んではくれませんでした。

地球温暖化対策に取り組む団体に電話して、専門家の考えや具体的な対策を聞こうとしましたが、まともに取り合ってもらえませんでした。自分一人が呼びかけても何も変えられない現実に絶望しましたね。

強い危機感を持ちながらも、どれだけ行動しても、なんの改善にも繋がらず、残るのは自分の無力さだけでした。完全に心が折れ、鬱状態になりました。

鬱になってからは、環境問題に関する話題を徹底的に避けるようになりました。テレビを見ていても、環境問題が取り上げられるとすぐに消さずにはいられませんでした。一瞬でもその話題が頭をよぎると絶望して気持ちが沈んでしまうので、思い出したくなかったんです。いつか来るかもしれない恐怖を妄想しすぎて、生きているのがしんどかったですね。

1人でいると考えすぎて辛くなるので、どうにかして楽になりたいと、人と会うようになりました。学校の友達と他愛のない話をしているときは、1人でいるときよりも大分気持ちが落ち着いたんです。人に絶望していたはずなのに、同時に人に救われてもいましたね。

その後、鬱状態はゆるやかに回復していきましたが、地球環境問題への関心は封印したままでした。