生活の瞬間を写真で切り取りたい。難民キャンプで暮らす僕がしたいこと。

ヨルダンにあるシリア難民キャンプ「ザータリ難民キャンプ」にて、写真撮影や映像製作のボランティアを行うユニスさん。シリアとヨルダンでどんな生活を送ってきたのか、お話を伺いました。

Younis Mohammed Aharake

ユニス モハメド ヘラク|フォトグラファー

いろんな街に訪れるのが好き


シリアのダーラにあるハラクという田舎町で育ちました。静かな場所でトラブルは少なく、近所の人はみんなが知り合いといった感じの場所でした。そこで、両親や6人のきょうだいと一緒に暮らしていました。

小さい頃はやんちゃな性格で、いろんな問題を起こしていましたね。友達と喧嘩することも多かったです。じゃれ合うような時もあれば、激しい喧嘩をして怒られることもありました。

10歳位になると少し落ち着き、喧嘩はあまりしなくなりました。友達といろんな街に遊びに行くのが好きでした。知らない場所に行き、その場所の文化や伝統、食事などに触れたり、生活スタイルの違いを知ったりできるのが楽しかったんです。僕が育ったのは田舎の村だったので、村と都市の違いを知るのも面白かったです。

特に、首都のダマスカスがお気に入りの場所でした。ダマスカスには、他の都市で見つけた面白いものが何でもあるんです。地元で見つけたものも、他の街で見つけたものも、ダマスカスに行けばありました。中心地だから、何でも集まるんですよね。

この頃から、写真に夢中になりました。常にカメラを持ち歩き、行く先々の街でシャッターを切るんです。行った場所の記録をしっかりと残して、友達にも見せたいと思ったんですよね。プロフィール写真を撮ったり、街の様子を撮ったり、風景を撮ったり。特に、建物を撮るのが好きでした。お城や宮殿など、行った場所毎に違う建物があって、それを写真に収めるのが楽しかったんです。

いつかはプロの写真家になりたいという気持ちもありました。ただ、ぼんやりと思い描いていただけで、そのために何かを勉強していたわけではありません。将来のことはあまり考えていなかったですね。やりたいことは、大人になったら見つかると思っていたので。その頃はとにかく自分の好きなことをしていました。

内戦の影響でザータリ難民キャンプに


2011年頃から、シリアで内戦が始まりました。シリアに住み続けるのは難しくなり、2013年、家族で国境を超えてヨルダンに避難することにしました。16歳の時の出来事でした。

ヨルダンに来て、ザータリ難民キャンプでの暮らしが始まりました。全く知らない文化や伝統を持つ場所で暮らすのは、とても大変でした。知り合いは家族以外は誰もいない状況。誰にも頼れません。また、水や食料など、欲しいものがすぐ手に入るわけではありません。

人生がゼロからスタートしたような感覚で、それまでの人生の中で、こんなにつらいことはありませんでした。それでも、ザータリで生きるしかなかったんです。生き続けていくためには、他に選択肢はなかったんです。

来たばかりの頃はすることがなく、しばらく暇を持て余していたのですが、1ヶ月ほどした頃から、save the childrenというNGOが提供していた写真のワークショップに参加することにしました。シリア時代に持ち歩いていたカメラは、戦争の影響で無くなってしまいましたが、シリアに戻る時までに、写真の撮り方を覚えていたいと思ったんです。

また、写真だけでなく、映像の撮影や編集をするワークショップにも参加しました。映像のワークショップは9ヶ月と言う長い期間のもので、その間に3つの映像作品を作りました。写真を撮ったり映像を撮影するのは面白かったですね。

難民キャンプ内でのボランティア


ある時、JENというNGOが、ザータリ難民キャンプ内向けの雑誌を作るプロジェクトを始めるという話を聞きました。その時、編集長がsave the childrenに来て、ネタの集め方や、記事の書き方、タイトルの決め方など、編集のワークショップをしてくれました。それが面白くて、雑誌を作るチームでボランティアをすることにしたんです。

雑誌を作るプロジェクトは、基本的には難民である僕らが取材、撮影、編集を行うものでした。その中で、僕は雑誌で使うための写真を撮りました。撮った写真が毎回使われるわけではないのですが、僕の撮った写真が雑誌の表紙を飾ったこともあります。雪が積もった日に、子どもたちが外で遊んでいるのを撮影した写真です。自分の撮った写真が使われるのは、とても嬉しかったですね。

その後、JENが、新しくザータリ難民キャンプ内の映像を作ってWEBサイト上で公開するプロジェクトを始めると聞いて、そっちも手伝うことにしました。このプロジェクトは、難民キャンプ内での生活を難民目線で伝えることを目的としていて、取材や編集は僕たち難民が行い、NGOのスタッフがサポートしてくれます。元々、映像よりも写真の方が好きでしたが、色々な経験を積みたいと思ったのでチャレンジすることにしたんです。

どんな人を取材するかの企画も自分たちで持ち込みます。一番最初、「ザータリ難民キャンプは砂漠なので、植物を育てる人にフォーカスを当てよう」という話になり、僕の知り合いを取材することになりました。

最初だったので、撮影はNGOスタッフの人がやり、僕たちは次からできるように見て学びました。実際に出来上がった映像を見るのは、やっぱり嬉しかったですね。それからも、企画を自分たちで練ったり、撮影を行ったりと、週に1本程度のペースで映像を作っています。

未来を取り戻したい


現在は、JENで雑誌と映像を作るプロジェクトに参加しつつ、save the childrenでボランティアをしています。毎朝日が昇る頃には起きて、外で写真を撮ります。ザータリ難民キャンプの朝は、いろんなNGOの人たちが活動しているので、その瞬間を撮りたいんです。

朝のルーティンが終わった後は、家の仕事の手伝いをしていることが多いですね。特にすることがない時は、家で両親とゆっくり過ごしたり、友達と外に出て買い物に行ったりします。今はボランティアとしてやっているNGOの手伝いも、今後は仕事にして、お金を稼ぎたいと思っています。

写真と映像、どちらもやっていますが、どちらかが好きかと訊かれたら、やっぱり写真です。映像は、色んな物を同時に捉えられるし、カメラを回しておけば全てのシーンを収めることができます。一方で、写真は物事の瞬間を捉えるので、チャンスを逃したら撮ることができません。でも、その緊張感が心地いいんです。

スマートフォンやノートパソコンに保存した写真を見返している時が、何よりも楽しいですね。こんな写真を撮ったんだとか、自分の仕事を振り返るのが好きなんです。

これからも、大好きな写真を通じて人の役に立ちたいです。写真を通して、他の人の生活を見てもらったり、色々な活動をしている人がいると知ってもらうことで、コミュニティを活性化できるんじゃないかと思います。根本的には、自分のしたことが誰かの役にたてばいいな、というのがあります。

僕は、戦争の影響で難民としてシリアからヨルダンに移り住みました。まだ戦争は終わっていませんが、必ず自分の未来を取り戻したいと思っています。そして将来は、世界中に行き、世界中の人たちと一緒に働いてみたいです。

2016.08.11

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