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ベンチャーキャピタリストとの出会い
3年位はそんな生活を送っていました。プログラミングの仕事をしているうちに、ゲームを開発するための「Cocos2d-x」というゲーム開発エンジンに詳しくなりました。ブログで情報発信したりしながら、本を出すまでになりました。勉強会などで発表するようになり、外出もするようになりました。
ある時、ブログを見た人から、twitter上で「会いたい」と連絡をもらいました。ちょうど東京の勉強会で発表する予定があり、少しだけ話しました。
お会いして分かりましたが、ベンチャーキャピタルの経営者でした。少し話したところで、いきなり「うちが出資するから会社を作らない?」と誘われました。その時はベンチャーキャピタルがどういうものか全く知らず、「怪しい」と思いましたね(笑)。
その時は何事もなく別れ、それから定期的に「最近どう?」と連絡をもらいました。ベンチャーキャピタルや東京のスタートアップ事情を調べ、何となくどういったものかは理解できました。定期的にやり取りを続けるうちに、「サポートするから会社を作らない?」とまた声をかけられました。
さすがにこの引きこもりの生活を続けるわけにはいかない、とは思っていました。とりあえずプロダクトを作ってみようと、引きこもり仲間の大学の後輩と一緒に、スマートフォン向けのアプリを試しに作ってみました。作ったアプリをそのベンチャーキャピタルの人に見せたところ、感想は、「そのアプリ作りたいの?」「それで世界を取りたいと思っているの?」でした。確かに、僕自身も、「正直、そこまででもないな」と感じていましたね。
他に何かやりたいことがないか考えてみた時、思い浮かんだのはVR(Virtual Reality /仮想現実)でした。引きこもり時代にVRデバイスに出会って、一目惚れして、趣味で開発していたんです。ただ、日本でVRスタートアップをやっているとこなんて皆無だったし、一般に普及するのはまだまだ先ということで、不安しかなかったんですけど、どうせ自分の会社を作るんだったら好きなことをやってしまえ、と。具体的な事業内容は決まっていませんでしたが、VR事業をするということだけ決めて、出資を受けて会社を作りました。
最初は、一般受けしそうな、可愛いアバターを使ってコミュニケーションできるシステムを開発してみました。ユーザーテストで女性10人くらいに使ってもらったんですが、「友達が使ってたら使います」という反応でした。つまり、自分からは絶対に使わないということですね。それなりにちゃんと作ったものだったので、ショックでしたね。
でも、正直なところ、一般に受けそうだという理由で作っただけで、自分が使いたいと思っていなかったんですよね。そこで吹っ切れて、自分が欲しいもの、自分がやりたいことをしようと決めました。
自分が欲しいもの、と考えた時に、引きこもり仲間の後輩と、VRは音楽ライブやプログラミングの勉強会といった、人が集まるイベント用に使えそう、と話していたのを思い出しました。
引きこもり時代に味わった、自分がイベントの場にいないという敗北感。VRを使えば、ライブの熱量をそのままに、家にいながらイベントに参加できるんじゃないか。そう考えつきました。