一時期、外国人観光客のお客様が多い店舗で働いていました。外国人のお客様って、何かひとつ物を買うのにも、心から楽しそうなんですよね。日本人でこんなに楽しそうにしている人は見たことがない、と思うほどです。

その姿を見ていると、この人たちは買い物以外でも何に対しても全力で楽しめるんだろうな、と日本人にはないものを感じました。こんな人たちがいる所で暮らしてみたい、と海外生活に興味が湧きました。

そこで、4年働いた会社を辞めて、オーストラリアに留学に行きました。英語は全く喋れなかったのですが、行けばなんとかなると思っていましたね。

現地に着くと、予想に反して英語を全く理解できませんでした。聞こえないし、話せない。かなり落ち込みました。人と話すことが好きだったので、会話できないことがものすごく苦痛で、いっそのこと帰国しようかと思いました。

そんな私を心配したホームステイ先の家族が、丁寧に英語を教えてくれました。自分でも勉強して、1日18時間ぐらいは英語漬けでした。3ヶ月ほど経つと、まわりの会話が理解できるようになり、話せるようにもなりました。

ホームステイ先での生活は、英語を上達させてくれただけではなく、私の価値観を大きく変えてくれました。

私の両親は、仲が悪いわけではないし、私に愛情を注いでもくれましたが、よく喧嘩していました。喧嘩する両親の姿を見ていて、家族を持ちたいとは思いませんでした。

一方で、ホームステイ先では、家族で一緒に食卓を囲んでいるだけで、楽しくて笑顔が溢れてくるんです。自分の家庭では、父親が朝早かったり、夜遅かったりと皆で食卓を囲むことがなかったので、新鮮でした。

一緒にご飯を食べているだけで幸せ。ただ笑っているだけで幸せ。家族ってなんて素晴らしいものなんだろう。家族を持ちたいと、思うようになりました。

また、3ヶ月かけてオーストラリアを一周した時に、様々な自然に触れました。その中でも、ピナクルスで見た景色は忘れられません。荒野の地平線に落ちていく夕日。肌に感じる、温かい空気や穏やかに吹く風。その場にいると、自然と涙が流れてくるんです。

日本では見られない自然の景色。ずっとこんな景色を見続けたい。日本と外国を行き来する生活がしたい。そう思いました。