日本のITビジネスの進化を、人でデザインする。やっと見つけた、「揺るがない大義」。

インターネット業界専門の人材サービスを運営する志水さん。昨年立ち上げた新規事業を通じて、「人生を賭けても良いと思えるミッションを見つけた」と話します。その背景にどんな転機があったのか、お話を伺いました。

志水 雄一郎

しみず ゆういちろう|インターネット業界専門の人材サービス運営
株式会社セントメディアにて、インターネット業界専門の転職支援サービス「NET jinzai bank」の事業部長を務める傍ら、
「RainbowApps School」の運営を行うジークラウド株式会社の社外取締役を務める。

NET jinzai bank

働き方が分からない社会人


福岡県に生まれ、小さい頃から絵を描くのが好きな子どもでした。高校まで祖父の家で生活していたのですが、祖父の友人の著名な画家が酔って描いた落書きが家中にありました。そんな環境の影響もあってか、子供心にアートに関心を持ち、大学は慶應SFCを選択し、テクノロジーアートを学んでいました。

大学時代はアート作品の制作や色の研究を行う傍ら、ダンススクールに通い、週1~2回はクラブ通いという日々で、所謂、チャラい学生でした。(笑)留年もしましたしね。そんな大学生活を経て、就職の時期を迎えると、親がマスコミ関係の役員をしていたこともあり、コネでマスコミ就職しようと考えました。

しかし、そんな時に届いた「リクルートと電通を超える」というキャッチコピーのDMに興味を持ち、採用説明会に行ってみることにしたんです。それはインテリジェンスという人材系ベンチャーで、実際に説明会に参加してみると、経営陣が熱っぽく話をする姿がすごく素敵に見えたんですよね。結果、コネで内定していたマスコミを蹴り、入社を決めました。

ところが、就職してからすぐに大きな壁にぶつかりました。成功したいとか、社会貢献したいとか、特に目標も無く、どう働いて良いのか分からず、営業として目標を一度も達成できないという、燦々たる状況でした。

その後、特に気付きも無く、めざましい実績も無く、給与も上がらずに平凡に過ぎる年月。

気付けば27歳となり、「流石にヤバいな」と感じ始めていました。収入も貯金も役職も無い。年齢的にも生き残りを掛けたラストチャンスの時でした。

そこで、初めて覚悟を持って努力することを始めたんです。TOPプレイヤーのKPI(業績評価指標)の2倍をやり続けようと決め、休みも無く夜中まで働く日々が始まりました。必死に努力を続け、1年経つ頃には、営業部門で実績トップに立つようになったんです。

40歳という節目


一度トップに立つと、もうそこから落ちたくない、過去の自分には戻りたくないという一身で努力を続けました。トップチームのマネジメントを任せて頂けるようにもなり、ハイパフォーマーとしてビジネス誌にも取材を受ける程になっていました。

ところが30歳の時に慢心から手綱が緩んでしまった瞬間があり、メンバーからの信頼を失い、自分が率いるチームが上手く機能しなくなってしまったんです。

結果、マネジメント失格の評価を受け、降格。フロントからミドルへ異動し、慣れない仕事と環境に精神的に参ってしまい、心身共に苦しい時でした。「何とか再度フロントでブレイクしたい」という一心でしたね。

そんな思いで仕事を続け32歳になった時、転機が訪れました。会社にて新規事業立案の機会を頂戴し、自分を含めた数名で起案した案が採用されることになったんです。それは「DODA」という転職サイトの事業案でした。

そこで、再度フロント、しかもマネジメントに挑戦できる機会を頂戴できました。その後、良い仲間に恵まれた事もあり、事業の成長と共に自分も上級管理職という立場を得て、それなりに仕事を楽しんできました。

そんな中、39歳の誕生日を迎えた日に、このまま現職で貢献し続けるのか、もしくは40歳から新たなキャリアに就くのかを、1年間をリミットに考えようとする自分が居たんです。同業最大手リクルートでは40歳定年制とも言われていたため、同業界でキャリアを積んできた自分としてもそのことを強く意識していたこともありました。

それまでは社外でのキャリアを意識した事はほぼ無く、これからへの不安・焦燥感と同時に、リセットしたらどうなるだろうという前向きな期待感もありました。

実際に、転職活動にて役員待遇のオファーなども頂戴する中で、セントメディアという中堅人材派遣会社から新規事業を立ち上げて欲しいというお話を頂戴したんです。人を大事にするカルチャーがあり、離職率も非常に低く、ピュアなタイプの人材が集い、どこか現職のインテリジェンスを重ねるところがありました。

また、セントメディアは成長中の企業グループで、持ち株会社が上場準備中という前向きな状況もあり、自分が加わることによってもう一段上の高みを目指すことができるのでは、という期待感もありました。反面、期待されていたことが既存事業への経営参画ではなく、新規事業立ち上げということであったため、自分1人で立ち上げを行うことに怖さも正直感じていました。

結果、「DODA」立ち上げを行った仲間にも相談して、「DODA」立ち上げユニットで纏めて転職するという結論に至りました。ちょうど40歳のことでした。

私達の大義名分


実際に新規事業を考えるにあたり、カテゴリー特化型の人材サービスという、グループの特徴を生かしてできることはないかと考えていきました。

また、どうせやるなら日本のためになるような何か尖ったことをしたいという気持ちもあったので、外貨を獲得できる産業を育成・支援する人材サービスの立ち上げという切り口で事業を考えるようになりました。

世界に目を向けると、競争力のある国はエネルギーやインターネットビジネスで商売をしていましたし、日本はそもそも資源国家ではない。しかし、Googleやamazonのように国際競争力のあるインターネットビジネスを日本から創出できる可能性はまだ十分あると考え、インターネットビジネスに特化した人材サービスをやろうと決め、2013年4月に「NET jinzai bank」という名前で、3人のメンバーでスタートを切りました。

その後、事業開始より半年後、幹部クラスの採用をご支援させて頂いた美人時計(現BIJIN&Co.) 田中社長の伝手で、国内有数のベンチャーキャピタリストであるグロービスキャピタルパートナーズ 今野さんをご紹介頂いたんです。そこで、協業させて貰えないかと厚かましく相談したところ、試しにと、新たな投資先の1社をご紹介頂ける事になりました。

その投資先はゴクロ(現SmartNews)という、ニュースキュレーションアプリを運営する社員数4名のベンチャーで、お世辞にも綺麗とは言えないオフィスに入居されていました。(笑)

しかし、お会いした鈴木さん(現SmartNews 代表取締役会長 共同CEO)は、機械学習・人工知能のテクノロジーをキーに「世界中の良質な情報を必要な人に送り届ける」という素敵なビジョンをお持ちで、そのビジョンに共感した私達は、その世界観を実現するためには大型の資金調達が不可欠だと考え、国内最高水準のCFO人材のご紹介に注力したんです。

結果、有名上場ベンチャー企業の執行役員CFOとしてご活躍になられていた堅田さん(現SmartNews ヴァイス・プレジデント 財務担当)に参画頂き、シリーズBでは国内最大級の資金調達を果たされ、その資金力を背景に更なる成長を遂げていかれました。

そして、このご支援を通じ、自分達の中でも何かが明確になった気がしました。「日本のインターネットビジネスの進化を“人”で最適にデザインする」という私達が目指すべき大義名分が生まれたんです。

人生を賭けても良いミッションを見つけた


そのご支援をきっかけに、IPO前ベンチャー企業へのCxO人材のご紹介は、2014年だけでも20名以上のご縁を結びました。また、高年収者向け転職サイトとして有名なBizReachよりヘッドハンター新人賞を頂戴するなど、私達の業界内でのポジショニングも非常に高まりつつあります。

しかし、私たちが目指すビジョンから考えると、日本にはインターネット業界に優秀な学生が流入するエコシステムが確立されていないという問題があります。

就職人気ランキングの上位にインターネット企業がランクインしないのは先進国で日本くらいですし、米国と対比してもGoogleのような企業が生み出される土壌としての差は非常に大きいと思うんです。

最近ではイギリスでも国際競争力を維持・向上させる施策として、プログラミング教育を5歳時からの義務教育課程に組み入れるなど、世界的には国家のグランドデザインの中でインターネットビジネスをどう生み出すのか、を真剣に考えていますよね。

だからこそ、日本の学生がインターネット業界でのキャリアを選択するきっかけとなる場を創出したいという思いから、国内最大級のiOS/Androidエンジニア育成スクール「RainbowApps School」を運営するジークラウド社に出資し、日本国内におけるエンジニア就労人口の最大化というテーマにも挑戦しています。

そうやってビジョンに沿って愚直に走っていると、周囲からの応援の声が大きくなり、自分達が早く成長しなければならないという考えを強く持つようになりました。今は「日本のインターネットビジネスの進化を最適にデザインするインフラカンパニー」を目指し、新たに集った13名の仲間達と共に市場に向き合っています。

今、自分の可能性、事業の可能性を信じられる程、未来に期待できています。それは間違いなく、5年・10年掛けても取り組むべき「揺るぎない大義名分」を見つけたからだと思っています。やっと人生を賭けても良いと思える本当のミッションを見つけたんですよね。

遅咲きかもしれませんが、これから自分達が起こす未来の出来事にワクワクしています。

-0001.11.30

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