使命を持つと、生き方が変わる。感謝を伝える経営で、住宅業界に革命を起こす。

【エニワン株式会社提供】住宅業界の業務を一元化するソフトを開発・販売している中澤さん。父が創業し、子会社を多数抱える住宅資材販売商社の跡を継ぐことになりますが、プレッシャーに押しつぶされそうに。そんな中澤さんがプレッシャーをはねのけ、経営者として肚を括る背景には何があったのか。お話を伺いました。

中澤 秀紀

なかざわ ひでのり|ナカザワ建販株式会社、エニワン株式会社代表取締役
ナカザワ建販株式会社代表取締役社長兼、エニワン株式会社代表取締役社長。

人はいつ死ぬかわからない


大阪府岸和田市で生まれました。僕が生まれる1年前、父は建築材料を販売するナカザワ建販株式会社を起業し社長に。僕は小さい頃から、ポジティブで明るい性格でしたね。小学校高学年の時、運営委員会に入って学校行事を運営したり、中学入学の時に新入生代表としてスピーチをしたりと、学校では目立つタイプでした。

小学校1年の時に、地域の少年野球チームに入って、ソフトボールを始め、中学では、野球部に入部しました。入部して数カ月後の夏、部活中に同級生が大怪我をしました。ノックをしていた先輩のバットが、球拾いをしていた同級生の後頭部に直撃したんです。同級生はバタッと倒れて、その後救急車で運ばれていきました。

そんな事故を目の当たりにし、人はいつどこで死ぬかわからないんだと思いました。それならば、今生きていることに感謝したいなと思うようになりました。また、生きているうちに周りの人を大切にしないといけないとも思いました。いくら感謝をしていても、自分が死んでしまったら伝えられませんし、伝えたい相手もいつ死ぬのかわからないわけですから。

高校は地元の私立高校に進学。勉強はそこそこにバイトに明け暮れる生活を送りました。バイトはやればやる分だけ上達し、お客さんや仲間から喜んでもらえるのが嬉しかったんですよね。

ニーズがあるものを作る=社会貢献


大学は実家から通える学校に進学しました。学校にはあまり行かず、バイトばかりしていました。

大学3年の夏、父からの誘いがあって、父が営むナカザワ建販株式会社でアルバイトをすることにしました。物流部署に配属され、建築現場へ建築の材料を運ぶ仕事をしました。バイトをしながら、将来は父の跡を継ぐんだろうなと思っていましたね。

ですが、卒業後、すぐには父の会社に入ろうと思いませんでした。というのも、父に「卒業後すぐは他の会社に入って好きなことをやっていい」と言われていたんです。そこで、これまでとは違う視点で住宅業界について知りたいと考え、リフォームが売りの会社に就職しました。

その後、父の勧めもあって、地盤調査の会社に転職。そこでは営業としてサービスの販売を行なっていたのですが、それが全然売れなかったんです。興味を示してくれた企業の方にアポイントをとって、後日、上司が出向いて詳しい話をするのですが、最終的な契約は取れません。

なぜ売れないんだろうと必死で考える中で、高価な割に、他社の商品との差別化ができていなかったことが原因なのだと気がつきました。だから、自分がもし新しい商品やサービスを生み出すことになったら、他のサービスと明確に差別化されていて、心から使いたいと思える商品を作りたいと思いました。そうしなければ、誰にも使ってもらえず、社会に貢献ができないと思ったのです。

地盤調査の会社に勤めて3年が過ぎた頃、父から一緒に働いてみないかとの誘いを受けて、ナカザワ建販株式会社に転職しました。

今度はソフトの面で社会に貢献を


父の会社に入って、建築用のデザインソフトの営業を担当した後、現場監督をやったり、住宅保険を立ち上げたりしました。

数年して、父から、子会社である設計事務所を立て直して来いとの指令を受けて、その会社の社長に就任しました。電話対応など細かいところから改善を重ね、課題だった赤字経営を黒字に転換することができました。

その頃、父から阪神淡路大震災の話を聞く機会がありました。父は「あれは天災じゃなくて人災。もっと頑丈な家づくりをしていたら、人を殺さんでもよかった」と言っていて、衝撃を受けましたね。そして父は新しい工法を開発しました。その工法のおかげで建物を頑丈にしつつ、建築現場の大工さんが安全に作業をできるようにしました。

建築業界に貢献し、多くの人のためになるものを作った父の姿を見て、僕には何ができるのだろうと考えました。ちょうどその頃、不動産業界で使われる業務効率ツールの開発を行なっていたこともあり、「父がハードの面で業界に貢献したなら、僕はソフトの面で役に立ちたい」と思いました。そこで、社内に新部署を立ち上げて業務効率化ソフトの開発に本腰を入れることにしました。

そのソフトがあれば、これまで紙で管理していた顧客リスト、家づくりの工程表、見積もり書といった情報を一元化でき、管理、共有、分析が簡単になります。そうすれば働く人の業務を効率化することができ、その結果、お客さんに提供する商品やサービスの質をあげることができると思ったのです。

試行錯誤を重ね、最初に出来上がったソフトは多くの人に使ってほしいと考え、無料版としてリリースしました。

その後、工務店の方や住宅会社の方から意見を聞きながら改良し、数年かけて本格的に販売。だんだんソフトが認知されていき、全国で使われ始めた頃、開発を行なっていた部署を子会社として独立させる提案をしました。世の中に広めるためには、建材会社が作ったソフトではなく、ソフト開発の会社が販売しているものとして認知させたいと思ったからです。それで、ソフト開発を専門で行うエニワン株式会社を立ち上げ、社長に就任しました。

初心を思い出させてくれた卒業文集


ソフト開発会社の社長として、ソフトの普及に力を入れながら、ナカザワ建販株式会社でも共同代表を務めていました。ある日、役員が集まる飲み会があり、そこで役員に「代表が複数いたらややこしい。1人で社長をやらせてほしいと提案できないのは、覚悟が足りないんじゃないか」という指摘をいただき、ハッとしましたね。自分としては覚悟を持って会社を導いているつもりでしたが、もしかしたらどこか中途半端になっていたのかもしれないと思いました。

同じ頃、尊敬している会社の社長から、「社長が2人いたら会社が迷走する」と同じ課題感の指摘をいただきました。さらに、その社長は、父と僕を会食に誘い、その席で「会社をリードする人が2人いたら、方向性を決めるときにブレが出るから、1人の方がいい」と話してくれたんです。その言葉を聞いた瞬間、背中を押されて覚悟が決まりましたね。それで父に、代表は1人体制にしてほしいとお願いしました。父は賛成してくれて、半年後、共同代表から単独代表として会社を任されることになりました。

しかし、就任する前は、プレッシャーに押しつぶされそうでした。400名の社員を背負って、父が作った会社を継いでいくことへの不安があったんです。仕事場で笑顔を作るんですけど、心が笑っていないんですよ。ワクワクしていなくて、心の中がずっとしんどい感覚でした。

それを見かねた母が、僕に小学校の文集を渡してくれました。文集は小学校4年の時のもので、将来の夢が書かれていました。そこには、「お父さんの跡を継いで、社長になりたい」と書いてあったんです。それを見た瞬間、僕の夢は実現しているのに、ワクワクしていないなんて、絶対あかんなと思いました。子どもの頃の気持ちを思い出して、その夢が今叶っているんだと思ったら自然と楽しさがこみ上げてきました。

同じ頃、会社の研修で出会った方や社長仲間と、使命について語る機会がありました。語り合った方はみんな、確固たる使命を持ちながら、周りへの貢献の気持ちで仕事をしていました。これに感銘を受け、僕もそうありたいと共感し、社員に対してもっと感謝を伝えようとか、いいものを作って住宅業界を良くしていこうという思いがどんどん強くなっていきました。

住宅業界のプラットホームを創出


現在は、エニワン株式会社とナカザワ建販株式会社の2社の社長に就いています。

エニワン株式会社では、「ワクワクした世界をつくる」ために、住宅業界に特化した業務効率化のための基幹ソフト「AnyONE」の開発や販売を行なっています。従業員が数人の工務店さんから大手住宅メーカーまで、幅広い会社に使っていただいています。

「AnyONE」はお客様からの要望にお応えするため、常時システムのバージョンアップを行っており、現在は接客面談時での営業スタッフの満足度調査や、電子契約のシステムを開発中です。これらのシステムが完成して公式に導入できれば、社内スタッフの育成やスキルアップ、また、契約にかかる印紙課税の削減ができ、エンドユーザーを含む顧客満足の向上につなげられると考えています。さらに、システムに蓄積されたデータを簡単に高度経営分析できるレポート機能やAIの活用による新たなサービスの提供なども検討しています。住宅業界に役立つ商品を自分たちで開発して広めていけることにワクワクしてます。この「AnyONE」として提供するソフトやサービスが住宅業界のプラットホームになれば業界に貢献できると思っています。

ナカザワ建販株式会社では、経営理念を『未来を見つめ、新しい価値を創造し、幸せな家族、豊かな社会の実現に貢献する。』と掲げており、具体的には建築用資材の販売や加工及び配送、また建設現場での施工管理や大工業などを行なっています。

また、人にも環境にも優しい良質な材料を使った家づくりや、ゴミの削減による建設現場美化システムなどの新しい事業にも取り組んでいます。他の業界では当たり前に行われていることが建築の現場ではおざなりになっていることがよくあるので、私たちがリードして住宅業界の価値基準を上げていきたいですね。

ゆくゆくは関西で拠点を増やそうと動いています。広く展開することで、安心安全で高品質な建築材料と新しい技術を使った工務店が増えれば、住宅業界に革命を起こせると思っています。それが僕にとっての使命であり、住宅業界へ社会貢献だと考えています。

2019.02.07

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