高校の先生に勧められて、卒業後は東京の大学に進学しました。長男なので、いずれは父の会社を継ぐかもしれないという思いが漠然とありましたが、どうせ岡山に帰るにしても、一度は東京に行ってみたいと思ったんです。

大学では応援団に入部して活動する一方、やはりスポーツも続けたいと思い、面白そうだと感じたキックボクシングを始めました。ライセンスを取得するほど打ち込み、かなり体力がつきましたね。

夜まで練習してもまだ力が余っていたので、深夜に大きなホテルで配膳のバイトもしました。芸能人がよく来るので面白かったですし、政治家たちが政策や世の中の動きについて話すのを聞くのも興味深かったです。接客ルールやマナーを身につけることで、年上の人とも話ができるようになりました。

卒業後は、バイトの収入がよかったのでこのまま東京に居ようかとも考えたのですが、地元に彼女もいたし、故郷に戻る友達が多かったので、岡山に帰ることにしました。そこで、父が経営する会社のうち、おもに飼料輸送サービスを行う会社に就職しました。ずっと働くつもりはなく、単に経験を積めればいいやという気持ちでしたね。

平社員として入社し、3年ほどは営業所などを回り、運送業の現場を見ました。その後、事業所の立ち上げを任されることになりました。新たにできた飼料製造工場からの運送を担う事業所で、私は工場内での製造から製品の出荷まで、幅広く責任を負う立場になりました。

これまでずっと矢面に立ちたくないと思っていましたが、そうも言っていられません。自分がやらなければいけないんです。製造や出荷に関するトラブルに対応したり、運送を担当したドライバーと届け先の企業とのいざこざを仲裁したり、休む間もなく働きました。家には毎日数時間しか帰りませんでしたね。

それでもやる気が空回りして、商談で行き過ぎた発言をしてしまったり、解決する必要のない事柄に首を突っ込んでしまったり、失敗ばかりでした。余裕がなかったです。やっぱり、前に出すぎるのではなく、一歩下がるくらいが自分にはちょうどいいと感じました。