大学では、大学の機関誌を作ったりイベントを開催したりするサークルに入りました。何となく、ふらっと足を運んだのがきっかけです。最初は機関誌の記事を書いていただけなんですが、2年生に上がる時に、代表をやらないかと他のメンバーたちから推薦を受けました。

最初は、嫌なので断りました。そもそも人前に立ちたくないですし。断ってもしつこくお願いされるので、他のメンバーに「ダメな人間だ、こいつには任せられない」と思わせようと、成績証明書のコピーを配布して自分がいかに単位を取れていないか、ダメな人間かを力説しました。当時、授業にはほぼ全く出ておらず、単位はほとんど取っていませんでした。

ところが、「単位はサポートするから、代表をやってくれ」と言われてしまいました。僕が単位を取れるよう、サークルにサポート体制を作ってくれる、サポート事務局を作ると言うんです。そこまで言われたら断れず、仕方なく代表を引き受けました。

代表の主な仕事は、お金の出し手である大学生協や、外部の人と交渉することでした。引き受けてみて分かりましたが、大人の前でもあまり動じない性格だったので、そこは適任だったんですよね。

メンバーが200名以上いるサークルで、その規模の組織を運営するのは大変でした。運営するうちに200人もいると、一人でマネジメントはできないなという気づきがありました。一人で全てを見ようとするのではなく、小さなグループに分けて、それぞれに仕事を任せた方が自発的に動いてもらえるんですね。

3年の夏にサークルを引退して、卒業研究を始めました。元々興味のあった宇宙に加えて、友達から誘われて量子コンピューターの研究も掛け持ちでやっていました。

宇宙の分野での研究って、理論は山ほど学ぶことがありますが、実験は宇宙を見るという行為だけなんですよね。宇宙にはそんなに簡単に行けません。地球の外を観察して、実験のほとんどは電磁波を観測するだけなんです。物質や粒子の観測もしますが、基本的には観測すること=「見る」だけです。

宇宙の実験でやれることは、ただ「見る」こと。それで分かったことって、100年位前にハッブルが宇宙を見て、ビッグバン理論を提唱した時から、大して変わっていないんですね。

一方で、理論の方だけはどんどん進んでいました。実験に比べて、理論が300年分くらい先行していました。先行している理論を実証しようとしても、技術的にできないので、それは仕方ないんです。ただ、理論ばかりを学ぶ宇宙の研究はつまらないなと、私は思ってしまいました。

宇宙の研究は学部時代まででやめ、大学院からは、量子コンピューターの研究に絞りました。