息を吐くようにイノベーションを。
半身不随の僕に起きた3つのパラダイムシフト。

NTT東日本に勤務し、様々な新規事業の種を日々発掘し続ける沼田さん。 学生時代に原因不明の難病で半身不随になるという壮絶な経験から、現在のように「息を吐くようにイノベーションを起こしたい」と思うようになるまでには、ご自身の中での常識が変わる「パラダイムシフト」の瞬間がありました。 一体そこにはどのような背景があったのか、お話を伺いました。

沼田 尚志

ぬまた ひさし|通信会社勤務、イノベーター
NTT東日本のビジネス開発本部に所属し、コラボレーション推進担当として、新規事業開発に取り組んでいる。当面の目標は”東日本最強のイノベーター”になること。

2017年2月3日(金)沼田さん登壇イベント「“SHARE”〜想いの繋げ方〜」開催!
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将来有望な野球少年に訪れた悲劇


生まれた場所は東京の青梅市です。小学校2年生から野球を始めました。

最初は父親が監督をやっていたことをきっかけに始めたのですが、通っていた小学校が野球の強豪校だったこともあり、練習するうちにどんどん上達しキャプテンも任されるようになりました。

そのまま中学入学後も野球を続け、着実に実力をつけていたので、将来はプロになると本気で思っていました(笑)

ところが中学3年の冬、野球の練習中に原因不明の脳卒中を患い、僕は突然倒れました。

脳を血栓が埋め尽くし、一命こそ取り留めたものの、その日から意識がない日々を過ごしました。意識が戻った後も首から下は思うように動かず、運動機能や思考力も著しく低下していました。

懸命のリハビリが功を奏し、左半身の運動機能は回復しつつありましたが、もう以前のように野球をすることは不可能でした。
野球どころか日常の生活さえままならならず、毎日本当に死にたいと思いながら過ごしていました。

幸いにも自ら命を絶つという選択はしませんでしたが、それでも毎日家と病院の往復をするだけで、楽しいことは何もなく、将来に希望が持てないなんてことは通り越えて、「また明日が来てしまうのか・・・」とさえ思っていました。

ただ、そうやって毎日時間を過ごしていくうちに、徐々に自分が生きていることがリアルに感じられるようになってきて、ゆっくりとですが、客観的に自分の状況を捉えるようになっていきました。

改めて考えると、自分は障害者で高校にも行っていない。漠然とした焦りが生まれこのままでは社会のお荷物になってしまうという危機感を感じました。
両親は何も言わず見守ってくれていましたが、大きな心配をかけたので、まず学校だけは行こうと高校に進学することを考え始めました。

もっとあきらめた方がいい


意識が回復した当初は、指を動かしたり喋る練習等のリハビリしかできなかったものの、3年ほど経った頃には杖をついて歩く事ができるようになりました。

再び高校進学を考えましたが、当時18歳の自分が16歳の高校一年生と肩を並べて毎日を過ごす事は想像しづらく、毎日登校する必要の無い通信制の高校に行くことにしました。
しかし、体育やHR等で毎月数回は登校しなければなりませんでした。

最も辛かったのは体育の授業でした。走る、飛ぶ、投げる。自分には全ての動作が困難で、改めて障害を負ったという事実を突きつけられました。毎回ショックで気を失いそうになりながら出席していました。

その後も誰ともコミュニケーションを取らずに生活を続けていると、そんな僕を見兼ねた担任の先生から、
「沼田くんはもっとあきらめたほうがいいよ」という言葉をもらったんです。

聞いた時は耳を疑いました。本当にひどいことを言う人だと思いました。体育の授業や運動会の準備で僕が苦しんでることを知っている筈なのに、なぜそんなことを言うんだろうと。

でも話をよく聞くと、とても深い意味がありました。

「今、あきらめるという言葉は、物事を断念するというニュアンスで使われることが非常に多いよね。でも昔は違ったんだ。
昔は物事を明るみにして、出来る事と出来ない事を瞬時に判断するという意味で使われていた。漢字にすると”明らめる”だ。
もちろん僕が沼田君に言っているのは昔の”あきらめる”だよ」と。

沼田君はもっと色々な事をあきらかにしなさい。そして自分に出来る事だけを一生懸命やりなさい。
そう言われた瞬間、雷に打たれたような気持ちになりました。僕の身に起きたはじめてのパラダイムシフトでした。

今までは身の回りのこと全て何でもやりたがっていて、できないことばかりだったから歯がゆかったのだということがわかりました。
その瞬間から「やらない」という判断が後ろ向きなことではなくなったんです。

それからは読書や勉強など自分にできることだけに挑戦し続けました。不思議といつしか悩みは消えていきました。

僕がもし君と同じ悲劇にあっても、胸を張って復帰したい


その後も先生にはとてもお世話になり、いつしか自分も教師という職業に強い憧れを抱くようになりました。
そして自分も憧れの先生と同じ大学に進学します。

入学後は、大学の勉強よりも興味の赴くままに様々な分野にトライしていました。
専攻は中国文学でしたが、ここでも早々にあきらめて興味のままに好きなことを研究していました(笑)卒業論文のテーマは“クジラの研究”でしたね。

また、高校で失った青春時代を取り戻すべく、「モテる」ということにはかなり敏感な学生でした。
この分野だけはかなりアグレッシブで、女の子と会うと片っ端から口説いていました(笑)

そうした学生生活を送りながら、就職活動の時期を迎えました。
もちろん高校時代の恩師のようになろうと教職資格の取得を目指していましたが、障害を持つ自分を受け入れてくれる学校はそう簡単に見つかりませんでした。

色々と思うことがあり教師への道は一旦あきらめましたが、他にやりたいことも見つけられず、就職サイト等の人気企業ランキングを端から受けていました。
そしていくつか内定を頂いた企業の中で最も私の琴線に触れた企業がNTT東日本でした。

この会社がすごいと感じたきっかけは、選考が進み何度目かの面接中のある出来事でした。

ふいに思い切ってストレートな質問をしてみたんです。
『なぜ御社は私に興味を持って下さるのでしょうか』と。

すると少し考えてこう返してくれました。

「僕がもし明日、沼田君と同じよう病気になっても、胸を張って復帰したい。だから沼田君を良く知って一緒に働きたい」

この言葉が2度目のパラダイムシフトでした。
自分の身に起こりうる可能性を考えているからこそ言える言葉。
他人のことを自分のことに置き換えて考えられる。そんな社員が育つ会社はきっと良い会社だろうと思ったのです。

また家族に親に大きな心配をかけた事もあり、安定した企業であるNTT東日本に入社する事を決めました。もう迷いはありませんでした。

自分で活躍できるフィールドを作れ!


ところが入社してみると、日々の仕事はルーティーンワークばかり。
とても仕事が面白いとは思えませんでした。

しばらくして、ある研修で会った先輩社員に、自分はここでは成長できないと思うから、会社を辞めたいと相談してみたんです。

すると、先輩が急に真面目な顔をして
「みんなと同じ能力を伸ばそうとするからいけない。自分でフィールドを創ってその中で成長すればいいんだ」
という言葉をくれたんです。

その時、はじめて活躍できるフィールドは自分で創れるんだということに気がつきました。
部署なんて関係ない。どこにいたって社会人にやっちゃいけないことはないんだと思いました。
自分の中でまたパラダイムシフトが起きた瞬間でした。

その後は商品開発の部署に配属されたこともあり、以前より情熱的に仕事をするようになりました。

それからは「やっちゃいけないことはない」を合言葉に、ありとあらゆる社内外のイベント、勉強会に参加し続け、人的ネットワークを広げていきました。

特にNTT東日本の公式オンラインショップ『光セレクトショップ』は情熱が先行して世に出た代表例です。
このサイトは大企業・ベンチャー企業に関わらず先進的で優れたハードウェアだけを扱い、通信を使った楽しさを世の中に広く届けることを目的としています。
サイト構築は本来業務ではありませんでしたが、情熱120%の企画書が偶然目に止まり、多大な周囲の協力があって日の目を見ました。

それ以来、加速度的に色々な世界に脚を踏み入れるようになりました。
やっちゃいけないことはないし、何が自分の成長を促してくれるかは誰にもわからないのです。
色々な世界を見て、非連続な出会いに心を震わせたいと思い、動き出しました。

息を吐くようにイノベーションを起こしたい


そして現在は、ビジネス開発本部のコラボレーション推進担当に所属し、主に異業種で自社のブロードバンドサービスを活用してくれるプレイヤーを探す仕事をしています。

新しいビジネスを生み出すということは一見すると華やかですが、多くの苦労があります。ただ同時に私には根拠のない確信があります。
自分の成長と同じように、新しいビジネスもまた非連続で非合理なところに生まれるのではないかと。

いつか花咲く日を夢見ている個人的な活動、優れたサービスを持つベンチャー企業と大企業のイノベーターを繋ぐ『新ビジネスのつどい』というイベントもそのひとつです。
このイベントで様々な事業提携の機会創出を担っています。
ロジカルではないため趣旨の説明が難しいのですが、参加者が持つ非連続なコミュニティが繋がることで、目の前の仕事だけをしていたら起こらないようなイノベーションが起こるんです。
最近はイベントを開催するたびに何らかの事業提携が生まれるため大きな醍醐味を感じています。

僕は人から言われた言葉で一瞬にしてパラダイムシフトが起こり劇的に救われた経験が数多くあります。
だからこそもっと多くの人にパラダイムシフトの機会を味わって欲しい。人生が好転する奇跡の瞬間を感じて欲しいと思っています。
それこそが僕のイノベーション。そんなイノベーションをそれこそ息を吐くように起こし続けていきたいと思っています。

非連続で非合理なイノベーションを息を吐くように起こし続け、停滞する世の中をメチャメチャ面白くしたい。
それこそが僕に与えられた使命だと思っています。

2014.12.25

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