逃げることは悪いことじゃない。高校・大学両方を中退した僕が伝えたいこと。

教育を変革して、多様な働き方を実現させたいと語る榊原さん。現在の思いに至った背景には、自身の高校・大学中退という「レールから外れた」生き方がありました。ご自身の経験から何を思い、何を目指すのか、お話を伺いました。

榊原 正幸

さかきはら まさゆき|学校教育コンサルタント・ライフキュレーター
子供の心の安定をはかり、視野を広げるためのツールとして、スマホやITの使い方を授業形式or個別に教えたり、
将来設計や進路、人間関係の相談・駆け込み寺の存在を目指す、Rebirthinkの代表を務める。

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これなら自分で勉強したほうがいいな


福岡県の春日市という街で生まれ育ち、地元の小中学校を卒業してからは、生徒の大半が福岡大学を目指すような、地元の高校に進学しました。

ちょうと高校生の時に母を亡くしたこともあり、将来の計画は明確でないものの、家計との兼ね合いから、違う大学に行こうと考えるようになりました。

ところが、ある先生が理不尽な連帯責任の宿題を課しており、そんな環境に対して違和感を感じるようになったんです。例えば、座席の列の中で、誰か一人でも宿題を忘れたら、列の全員が罰として古文の単語を300回書くという宿題が出され、最初は、「えー!」と思いながらも、それらをこなしていました。しかし、まともにこなしていたら、それだけで自分の時間をほとんど費やしてしまうし、宿題を無視したらより大きなペナルティになる。

もともと理不尽なことが許せない性格だったこともあり、いつしか、「これなら自分で勉強したほうがいいな」と思うようになりました。

もともと、高校に入ってから自己啓発本等、様々な本を読むようになったこともあり、高校を卒業しなくても社会では働ける、という感覚もありました。そんな背景から、学校で勉強をするのと、自分で勉強をすることを天秤にかけて考えた結果、高校2年生で迷わず退学を決めました。

親も先生も反対しましたが、決心が変わることはなかったですね。

2度目の中退と見つかったやりたいこと


高校を中退した後は、元々の想定通り大学に入るために、大学入学資格検定の勉強をすることにしました。しかし、思ったより家計の状況が厳しかったこともあり、本屋に通い参考書を立ち読みする日々を過ごすことになりました。

また、大学はやりたいものを決めてから入りたい、という思いがあったため、勉強と並行して、自分の関心対象を探すために、バイトで貯めたお金でPCを買いました。もともと、子供の時からゲーマーで、箱物が好きだったこともあり、PCには憧れを抱いていたんですよね。実際に手に入れてからは、趣味のHPを作ったり、オンラインゲームをやったり、どんどんのめり込んでいきました。そんな日々を過ごした後、父の知人のアドバイスもあり、一度通信制の大学に進学することに決めました。

大学に入学してからは、課題が送られてきて小論文を書くという形式で勉強をするようになりました。しかし、2年目の6月を迎えたタイミングで、家計の問題から再び中退せざるを得なくなってしまったんです。

一方で、自分の中では段々とやりたいことが明確になっている感覚もありました。憧れていたPCに触れる中で、インターネットに関心を持つようになったんですよね。とはいえ、まずはまとまったお金を稼がなければいけなかったこともあり、一番稼ぎがよかった住み込みの派遣形態で、茨城の精密機械の工場で働くことに決めました。

ここでの仕事は、予想以上に稼ぐことができましたね。周りも同様に一時的に働いている人が多く、やりたいことが見つかると辞める人が多かったこともあり、僕自身も、一区切りが着いてからは福岡に戻り、IT系のキャリアを積もうと考え、プログラマとして福岡で働き始めることに決めました。

レールから外れながらも評価を受ける


結局その福岡の会社は条件的な面が合わなかったこともあり、3ヶ月程で退職することになりました。そこで、再び今後の選択肢を検討していると、高校・大学中退というレールから外れた生き方が担当者の目に止まり、株式会社インテリジェンスにてエンジニアとして働くことになったんです。

勤務地は東京だったため、地元福岡から引っ越すための資金を貯めるのに半年程かかり、22歳から横浜に住み、東京で働く生活が始まりました。都心での暮らしは刺激の連続でしたね。家賃が高いのは、常に広がる色々な刺激を享受するための税金だとすら感じました。

仕事に関しては、まず、社内のヘルプデスクや委託業務に関わるようになりました。すると、必死に働いていたこともあり、社内での仕事を目に留めていただき、社内でも難易度の高いレイヤーの仕事を任せてもらえるようになっていったんです。自分自身、仕事を楽しむことができましたし、元々培ってきた根本的な問題解決の考え方が生きていることも感じました。

しかし、そうやって本格的にエンジニアとして業務に携わるうちに、自らの関心はマネジメント側にあることに気づいたんです。加えて、社内のマネジメント職は飽和していたこともあり、転職をすることに決めました。

その後は外資系のIT企業に転職したのですが、結局エンジニア業務を行うことになってしまったこともあり、早期に退職し、EC系のベンチャー企業に転職し、ようやくマネジメント職に携わる機会をいただきました。

実際に働き始めると、それまでとは異なりECコンシェルジュとして、幅広い仕事に携わることができ、非常にやりがいを感じましたね。お客さんに近い立場で、社内でもある程度権限を与えてもらっていたこともあり、承認の手間も少なく、それまでは3日かかっていたようなことを3時間で実現でき、スピード感も非常に心地よく感じていました。

教育に課題を見つける


ところが、社内の人間関係についてはあまり上手くいっておらず、誘っていただいた方含め離職も増え、雰囲気は良いものではありませんでした。だからこそ、自分自身は仕事に没頭しようと考えていたのですが、気づけば外部の情報に触れる機会も減り、その会社に染まってしまい、ある時、ついに自分の中でアラームが鳴ったような感覚がありました。

知らず知らずのうちにその環境に耐えられなくなっている自分がいて、動物的本能で、逃げなければいけないと感じたんです。最初こそどこか転職先を決めてから退職しようと考えたものの、それまで待てないような状況に追いつめられていました。

その後、職場を離れ冷静になって考えたことは、自分が潰れる寸前までいってしまったからこそ、同じようなことを防ぐために、採用や教育など、人に関わる仕事をしようということでした。しかし、いくつか候補を見ていく中で、あまり自分のイメージにあうものが無かったこともあり、自ら何かしようかな、という気持ちになっていきました。

そこで、改めて課題の原因を考えてみると、自分と同じように、狭い視野に陥り苦労している人はたくさんいるんだろうなと感じたし、その根本は「逃げること」をネガティブに捉えてしまう学校教育にあるんじゃないかと感じたんです。実際に、今辞めたら替えの人がおらず、他の人に迷惑がかかるという理由で環境を変えられずに苦しむ人が多いと思うのですが、極論、総理大臣でさえ替えがいるので、それ自体は悪いことではないと思うんですよね。

特に、僕自身、レールから外れた経験、そしてその後もキャリアが成り立った経験があるからこそ、そこには再現性があるという感覚がありました。

「レールから外れること」=「社会不適合者」ではないし、視野の持ち方等、自分の経験から伝えられることがあるんじゃないかと思ったんです。

学校教育をアップデート


実際に独立を決めると、まずは自分が苦しんだこともあり、メンタルケアのサービスを行おうと考えました。しかし、ビジネスモデルとして採算がとれるイメージがなかったことに加え、問題を根本から解決していないような気がしたんです。

そこで再び考える中でたどり着いたのは、学校全体に向けて事業を行うということでした。学校教育に求められるものが増える一方で、教師に対する要望、必要なスキルが増し続けている今、多様な専門性で教師をサポートする機関となり、民間経験者と教師が分業する仕組みを作ることで、教師、生徒、保護者全てが恩恵を受けるサービスを作ることができると思ったんです。直近では、学校の先生や生徒へ向けて、SNSやスマートフォン、ITリテラシーを向上させるための勉強会や授業を行う機会をいただき、民間だからこそ提供できるようなプログラムを行っています。

そのように、予防医学的に問題が起こらないための支援を通じて、教師には業務過多な状況を改善、生徒には親と教師以外で既に社会で活躍している大人との接点による経験、視野拡張、保護者には多様な働き方や生き方の現実、今後の社会で求められるスキル等、実学への情報共有などを行いたいですね。

今後は学校教育をアップデートさせることを目標に、東京や神奈川から取り組みを始め、実績をもって法人化した後は、全国に展開していきたいと考えています。また、それらの活動をより広く展開するために、クラウドファンディングに挑戦しています。

何故NPOではなく法人でやるかというと、このような事業で食べていくことができるロールモデルを作りたいからです。東京や神奈川の一部の学校だけがより良く変化するだけではダメで、47都道府県全ての学校がより良く変化する必要があると思っているんです。ロールモデルが作れることで、同じ志をもった仲間を集め、サービスを拡大していくことができます。世の中を俯瞰して見れる大人、おかしいことをおかしいと感じて行動できる大人が増えれば増えるほど、数の論理で世の中はより良くなっていくと思っています。

2014.12.18

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