「ソーシャルビジネス」に光をあてたい。「仕事」と「趣味」が一つに重なるまで。

【女性起業家特集】「社会貢献をより身近なものにする」「ファッションと社会貢献の橋渡しをする」というミッションのもと、ソーシャルビジネス・NPOの活動に取り組む林さん。「仕事」と「趣味」が重なったような分野を創り出した、と話す現在に至るまでには、どのような背景があったのでしょうか?






林 民子

はやし たみこ|社会や環境に配慮したライフスタイルの提案を行うNPO・株式会社を経営
イベント企画運営やファッション誌での情報発信などを通じて、
エシカルなライフスタイルを提案するNPO法人「ソーシャル コンシェルジュ」を主宰する傍ら、ダブルツリー株式会社(SHOKAYジャパンオフィス)の代表を務める。

NPO法人ソーシャルコンシェルジュ
SHOKAYジャパンオフィス

興味あることをチャレンジし続けた学生時代


17才まで、北海道の大自然の中で育ちました。小さい頃は森が遊び場でしたので、自然にあるものを使った遊びを友達と考え楽しんだり、父親がレコード店などを経営していたこもあり、家にレコードがたくさんありましたので、常に自然と音楽に囲まれた環境で、のびのび育ちました。

開放的な環境に加え、親がリベラルで、常識にとらわれずしたいことをさせてくれるタイプだったので、興味があることはオタクのようにフォーカスするような性格でした。

気がつくと、洋楽、洋画、洋雑誌が大好きな青春時代を過ごしていました。そして、より英語を理解したいという思いから、17歳でアメリカ西海岸の高校へ留学。

高校卒業後は東京の短大の英語科へ進学し、とにかく好奇心旺盛で、アルバイトや習い事をたくさんしていました。茶道や華道、着物の着付け、お料理教室にヨガ、乗馬・ゴルフ・テニス・英語以外の外国語など、様々な習い事に挑戦していましたね。

また、高齢者ケアなどのボランティアや、有機農業などのエコ関連にも関心が強かったです。本をたくさん読み、映画もたくさん鑑賞し、したいことを存分チャレンジする日々でした。


「光をあてる仕事」


卒業後は、小さい頃から触れていた音楽に関わる仕事に惹かれ、外資系の音楽エンターテイメント会社に就職し、いわゆるアシスタント業務に就いていたのですが、20代は学生時代と同じく、様々な「興味のあること」を追求する日々でした。

世界一周旅行に出てみたり、語学のスキルを活かして、インド政府観光局で局長の秘書をしてみたり、韓国で開催された万国博覧会で日本館にて通訳アテンダントの仕事をしたり、ロンドンで取材コーディネーションの仕事をしたり・・・。

そして、知り合いからの紹介で、ファッション雑誌『VOGUE』等を出版するコンデナスト・ジャパンにて、仏人Vice Presidentのパーソナルアシスタントとして働くことになりました。

ファッションはもちろん、カルチャー等、面白い情報が集まってくる環境で、自分のコミュニケーション・スキルも活かすことができ、刺激的な仕事でしたね。

結局、アシスタントを担当していた方が辞めてしまったことで、私も転職することにしたのですが、ファッション業界は変わらず、知人の紹介で、欧米のラグジュアリーブランドの輸入代理店で、ブランドのプレスとして働くことになりました。

プレス自体の経験は無かったのですが、姉がファッション誌の編集者の仕事をしていたこともあり、仕事の内容はある程度理解していました。また秘書の仕事の経験も活かせ、ゼロから企画立案し目に見える形にしていくPRプロジェクトに面白さを感じ、充実した日々を送っていました。

PRでは、作品・作り手の良い所を探し、「それをどう魅力的に多くの人たちに伝えるか?」というポジティブな視点を常に持っていなければならないのですが、それが自分の性分に合い、まるでこれが天職なんじゃないかと思うくらい、やりがいを感じたんですよね。

また、ファッションブランドのPRの仕事をしながらも「興味のあること」を追求する日々は変わらず、趣味で日本全国の障害を持った方が作る「授産製品」で面白いものを探すコレクターであったり、いろんなNPOのイベントに参加したり、農作業も続けていました。

「趣味」と「仕事」が重なった働き方


PRの仕事は、「これまで光が当たっていなかった所に光をあてる仕事」でもありました。そして、ファッション業界だけでなく、自分がプライベートの趣味で関わっていた「社会貢献」の分野は、「光をあてるべき」対象がたくさんあることを感じていました。

ファッション業界はたくさんPRの担い手がいるものの、非営利の社会貢献活動の分野では、本業でみなさん忙しく、その活動をPRし、より多くの人に伝えるところまで手がまわらない現状をいたることころで目にしていたんです。

活動の認知度が上がれば、それだけ支援者、寄付者も集まりやすく、活動に共感する熱意ある優秀なボランティアやスタッフも集まりやすい。そこに良い循環が生まれるんです。

だからこそ、資金が少ないNPOやソーシャルビジネスの世界の方がよりPRの役割が実は重要で、より必要とされていると感じたんですよね。なんとか応援できないかと、普段の仕事の中でも考えるようになっていきました。

そんな中、障害を持った方が働く施設で作られる「授産製品」で面白いものを日頃から探していたのですが、ちょっとデザインやパーケージをマーケットのニーズにあったものに変えれば、もっとステキな商品になり、より多くの人に買ってもらえるのに残念だな〜と思うアイテムをたくさん目にし、「なんとかできないものかな・・・」と模索していました。

そこで、『VOGUE』で編集者をしていた姉と相談しているうちに、障害者の方が作る逸品を、一流のクリエイターのデザインの力でさらに魅力的にするプロジェクトの企画が生まれ、当時の『VOGUE』編集長の理解協力のお陰で、6ページにわたり誌面で紹介してもらい、且つ東京デザイナーズウィークでブースを無償で提供いただき、そこでクリエイターと障害を持つ方の施設とのコラボ商品を展示販売することになったのです。

しかし、このプロジェクトを実現するためには、プラットフォームが必要でした。また、このプロジェクトを機に、今まであればいいな〜と思っていたけれど存在しなかった、「ファッション」×「社会貢献」のプロジェクトを企画運営するNPOについて、「無いなら自分で作ろう!」と、2007年にNPO法人ソーシャルコンシェルジュを立ち上げたんです。

まだ「エシカル」という言葉も使われていない時代でしたが、エシカルファッション、エシカルなショッピング、ライフスタイルを提案・PRするプロジェクトを多くプロデュースを始めました。気がついたら、「仕事」×「趣味」を融合させた仕事を自分でクリエイトしていたのです。

「伝える人」を増やす


また、NPOの活動をしている中、ソーシャルビジネスを研究する知人を介して、中国辺境地の少数民族の貧困問題の解決を、ビジネスのノウハウで試みたいと誕生した、『SHOKAY (ショーケイ)』の創設者と出会いました。

『ビジネス・ウィーク』誌の特集でちょうど「世界を変える100人の社会起業家」にも選ばれたばかりの彼女から、チベット族の宝であるヤクという動物から採れる、カシミヤのように肌触りの良い毛糸で作るニットブランドのSHOKAY を、日本で広めたいと相談を受けたのです。

私のこれまでのファッションブランドのプレスという仕事の経験知識、そしてソーシャルビジネスに対する私の関心を最大限活用できるプロジェクトが、また私の前に現れたんです。国内外のフェアトレードブランドの情報収集もしていたのですが、クオリティもデザインも良いバランスのとれたブランドは希有でした。そんな中、SHOKAYの商品を見た瞬間、これは、「Good Quality」「 Good Design」「 Good Story (=ブランドの成り立ち、フィロソフィー)」の三拍子揃ったソーシャルビジネスだと感じ、将来性を直感しました。

そこで、SHOKAY を日本で展開するためにダブルツリーという株式会社も設立しました。そして株式会社の収益事業で得た余剰利益をNPOソーシャルコンシェルジュの活動にうまく循環できればと思ったのです。

2008年から日本展開を始めたSHOKAYですが、これまでたくさんの社会の問題意識の高い、心あるメディアの方に支えられ、少しずつ成長してきました。PRの仕事同様、メディアの仕事も「これまで光が当たっていなかった所に光をあてる仕事」だと感じます。

そして、SHOKAYのような社会問題の解決に真摯に取り組むまだ光があたっていない活動は、世界中にまだたくさんあります。そのような活動を魅力的に且つ正確に世の中に伝えることができるエシカルマインドの高いジャーナリストがたくさん増えれば、世界はより加速的に変わっていくんじゃないかと思っているんです。

そのため、これからは、自分自身のソーシャルビジネスの取り組みに加えて、業界全体の広がりのためにも、生の情報を分かりやすく伝える人を増やす活動も行っていければと思っています。

2014.07.25

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