現在は厚労省を離れ、秋葉原で2018年9月にオープンさせるクリニックの開業準備をしています。このクリニックのコンセプトは「人生のセーブポイント」。ゲームの中で出てくるセーブポイントのように、ここで休んで回復し、また歩いていけるような、患者さんにとっての居場所になりたいと思っています。

このクリニックを拠点に、力をいれていきたいと考えているのがコミュニケーションデザインです。まずは、医者と患者とのコミュニケーション。今後どんどん少子高齢化が進む中で、病院の医療は効率が重視されるようになると予想されます。医者と患者の接点は少なくなり、患者さんと魂を通わせるような治療はできなくなる。そうなったら、ますます医療が遠いものになってしまうという危機感があります。

そのため、医者と患者が積極的にコミュニケーションをとったり、病院の外でも医療の情報を発信していく必要があると考えています。病院が怖いとか嫌なものだという体験を変えることで、もうちょっと病院も医療も身近なものにしたいんです。うんこ学会の活動も、こうした問題を解決するために行っています。開業後も積極的に地域に出て、地域の人たちに気軽に健康の悩み事を相談してもらえるような医者になりたいです。

また、医療の現場同士のコミュニケーションも促進したいと思っています。医療現場には、患者と向き合う臨床現場、病院の運営などを行う経営の現場、そして厚労省を中心とした国の現場があります。これまで、それぞれがお互いを理解できず、現場間のすれ違いがあることを感じてきました。だから僕は自分の経験を活かし、それぞれの現場をつなぐ、ハブのような存在になりたいと思っています。

誰かのための居場所であると同時に、このクリニックは僕にとっての居場所でもあります。これまでは、日本のため、患者さんのため、世の中のためにという気持ちでさまざまなことをやってきました。それがいろいろな経験を積むうち、だんだん自分と向き合うというか、自分自身の幸せを考えるようになったんです。

自分が幸せなのは、「この人を助けられた」と手応えをもって感じられた時でした。じゃあ、助けたい人は誰だったかを問い直した時、自分の好きな地域で、自分の好きな人たちを助けたいと思ったんです。そのために、小さいころから好きだったゲームや漫画などのコンテンツの発信地である秋葉原で、地域の人たちと関わりながら医療をしていきたいと思いました。このクリニックから、自分自身にとっても、患者さんにとっても、幸せな居場所をつくっていきたいです。