働き始めて2年目に、リーマンショックの影響で、仕事が思うようにいかなくなりました。不景気でお客様の足が遠のき、服が売れないんです。職場での人間関係も良くなくて、周りのスタッフに悪口や陰口をよく言われてました。そのおかげで人間不信にも陥ってしまい、いっそのこと、会社を辞めようかと悩んでました。

そんな時、隣のテナントで働く女性から、「悲しい顔してるね、きみ」と突然声をかけられ、食事に誘われました。普段、軽く挨拶をする程度で、ゆっくり話したことは一度もなかったので、突然のことに驚きました。

食事に行って話をする中で、その人が不動産で成功していることを聞き、私は、職場が大変なことや、仕事を辞めようと考えていることを話しました。

私の話を聞いて、その人は「3年働いてみないと分からないこともあるよ」「いま頑張らずに逃げ出したら、将来同じことで逃げ出してしまうよ」と、真剣な顔で言いました。また、『カンブリア宮殿』というテレビ番組を取り上げた本を、「1ヶ月後に感想を教えてね」と言いながら私に渡してくれました。

初対面で真剣に向き合ってくる人なんて出会ったことがなかったのですが、その人は本気でした。自分と本気で向き合ってくれている。この人の話は聞いた方がいい。そう思い、仕事の合間を縫って、借りた本を読み始めました。『カンブリア宮殿』に出演した、成功した経営者の言葉が詰まった本で、経済用語をはじめ知らない言葉ばかりでしたが、辞書を片手に必死で読みました。

本に書かれた経営者の考え方を知って、自分の甘さを痛感しました。それまでの自分にとって、仕事とは、お金やステータスのために、与えられたことをこなすだけのもの。我慢できない事があったら、上司には反発し、ライバルでもある同僚とはぶつかってばかり。

そんな考え方ではうまくはいかないと気づかされました。自分の中で、仕事への向き合い方が大きく変わった瞬間でした。

それからはとにかく必死で、月400時間近く働いて入院もしましたが、働かせてもらえることや、自分の環境と周囲の方々に、心から感謝するようになったんです。