総合商社から一転、教育への挑戦!
見えない将来へのワクワクを源泉に。

【Teach For Japan協力:民間出身教員特集】日本の教育をより良くすることを志し、その一歩目として奈良県で小学校教員として働く池田さん。大学卒業後、総合商社に入社して希望通りの仕事をする中、なぜ教育への関心を持ち始めたのか?お話を伺いました。

池田 由紀

いけだ ゆき|小学校の先生
奈良県で小学校教員として働く。

※この特集は、Teach For Japanの協力で提供しました。
全ての子どもが成長できる「教室」。Teach For Japan

チアリーティングに全力投球した大学時代


私は東京で生まれ育ちました。小学校卒業後は私立の中高一貫校に通い始め、体操部に所属して運動も勉強もしっかりとする活発な性格でしたね。ただ、将来のことはあまり考えていませんでした。父が英語を使って仕事をしている姿を見た時にカッコいいと思い、何となく海外で働きたいと思っていましたが、具体的ではありませんでした。

そのため、大学も単純に偏差値が高い学校を目指し、早稲田大学に進学しました。高校の先輩が大学でチアリーディングをしていたので、大学に入ったらチアサークルに入ろうと思っていましたが、実際に入学すると遊びたい気持ちが勝り、サークルには入りませんでした。そして、ひたすら遊び呆ける生活を送るようになっていったんです。

ただ、1年ほど経った時、チアをやっている友達を見て、「私もチアやりたかったじゃん!」と思い出したんです。そして、まだ間に合うとチアサークルに入り、サークル中心の生活を送るようになっていきました。

チアの大会では、とにかく自分たちが納得できる演技をしようと、練習してきた成果を精一杯出します。すると、それを見て喜んでくれる友達もいて、自分のために打ち込んだことが周りにも感動を与えられるのが嬉しかったですね。また、団体競技なので、メンバーの心が通じ合う瞬間もたまらないんです。

チアを始めてからは、それまでの生活とは一変。チアのことしか考えないようになり、就職活動の時期もサークルを続けていました。通常は、就活をする学年のチームは一旦休止になるのですが、私はひとつ下の学年のチームに入っていたので、みんなと就活の時期が1年ずれていました。「最後の大会まで一緒に出たい、就活は1年遅らせてもいい」と思っていたので、サークルを続けることにしたんです。

ただ、就活をしない理由もなかったので、できる範囲で会社説明会に行ったり、面接も受けていました。幼い頃から憧れのあった海外で働くことを軸に、商社、海運、メーカーを見ていき、最終的には雰囲気が合うと感じた総合商社の伊藤忠商事から内定をもらい、就活を終えることにしました。

そして、最後の冬の大会までチアで燃え尽きる大学生活を過ごしました。

中高生が自分と向き合い将来を考える時間を増やしたい


会社に入ってからは、海外貿易の物流に関わる仕事をしたいと考えていました。日本は島国なので輸出入は肝心。今後の日本経済のためにも、その分野で何か関わりたいと思っていたんです。そして、運良く希望通りの部署に配属され、その後も仕事も一生懸命取り組み、3年目には望んでいた仕事も任せてもらえるようになりました。

しかし、目標としていたことが達成できると、今度は「これを一生やりたかったんだっけ?」と疑問が湧いてきてしまったんです。私は本当は何がしたくて、今ここにいるのか。これまでトントン拍子で進んできたけど、深く考えずに目の前にある限られた選択肢の中から選んできただけではないかと。

また、仕事では海外の人と関わる機会も多くあり、自分の価値観や日本について聞かれることも多かったのですが、私は浅い答えしか返せませんでした。これまでいかに自分の頭で考えていなかったのかを思い知りましたね。

確かに、振り返ってみると、これまで自分の頭で考えて行動することも、自分の意見を持つこともほとんど無かったんです。中高生時代も、受験勉強のことばかり考えていて、外の世界や自分自身の将来に目を向けることなく過ごしていました。そう考えていくうちに、「学校って本当はどうあるべきだっけ?」と、疑問に思ってしまったんです。

受験勉強ばかりするのではなく、将来と向き合ったり、自分の頭で考える機会をもっと作るべきなのではないか。「こうあるべきだ」と理想の状態が描けたわけではありませんが、学校をもっと良くしていけるイメージや、良くしていきたいという想いが生まれてきました。

そこで、私は中学校か高校の教師になると決めたんです。私と同じような環境にいる子どもに、自分と向き合って考える時間を作りたいと。

とはいえ、会社を辞めることには不安もあり、決断までには半年ほど考えていました。ただ、先が見えない教師の道を進む未来と、先がある程度見える会社で過ごす未来。ふたつの未来を比べた時、私はどうなるか分からないけど挑戦している方がワクワクしたんです。

教育をより良くするために様々な関わり方があると知る


3年ほどで会社を辞めてからは、教員免許を取るために、通信制の大学に通い始めました。また、毎日通う必要はないので、空いている時間は教育に関しての視野を広げるために動くことにしました。会社を辞めてまで選んだ道なので、自ら動いていかなければと思っていましたし、自分の学生時代の経験でしか物事が見えていなかったので、実際に教育現場にはどんな課題があるのか、どんな状態が理想なのか、幅広く学ぶ必要があると感じていたんです。

そして、様々な教育関係者に会いに行ったり、本を読んだりしました。すると、企業やNPOなど、教師以外にも「日本の教育をもっと良くしたい」と熱い想いを持った人がたくさんいることを知りました。ネガティブなことを言われることも少なくはないのがこの教育の世界ですが、でも、これなら絶対に変えられると確信を持つことができました。

一方、多くの人が教育に携わる中でも、公立の学校で働く教師は、その最前線であり、ど真ん中にいる存在。やっぱり私は、教師の立場から教育を良くしていきたいと思ったんです。

また、「Teach for Japan」の松田代表の本を読む機会があり、本場アメリカの「Teach for America」の仕組みに衝撃を受けました。これは、一流大学の卒業生を、教員免許の有無に関わらず、国内各地の教育困難地域にある学校に2年間常勤講師として赴任させるプログラムでした。

優秀な卒業生が教育現場に入ることや、プログラム後に教師になる人がいること、その後企業やNPOに就職してもそれぞれの立場から教育に関わり、社会全体で教育に携わっていく「公教育」の仕組みがあることに驚いたんです。

実際にTeach for Americaの先生に会うためにアメリカに渡り、その現場も見に行きました。そこで出会った先生方は情熱と人間味に溢れていて本当に魅力的で、教師になりたいという気持ちが強まっていきました。

そして、この仕組をもっと学びたいし、ここにいれば教育に関わる情報が集まってきそうだと考え、Teach for Japanでスタッフとして働き始めることにしました。

環境によって満足な教育を受けられない子どももいる


私は中学校と高校の教員免許の取得を目指していて、教育実習では母校に行きました。もともと、自分と同じような環境にいる子どもたちに「将来を考える機会」を提供したいと思っていたので、教師として価値を発揮したいイメージ通りの職場でした。

一方で、様々な情報を得る中で、世の中にはこういう恵まれた環境にいる子どもばかりでないことを感じていました。家庭の事情や経済的な問題で、十分に教育を受けられない環境にいる子どものために何かすることも、非常に重要なのではないかと思い始めていたんです。

また、中学生は、価値観がある程度確立されてきている感覚もあり、もっと年齢が下の子どもたちに関わる方が意味があるのかもしれないとも考えていました。勉強そのものを教えるというよりも、自分の頭で考える力や、「やればできる!」というマインドセット、さらには自己肯定感を育むことの重要性を感じていたのです。その意味では、初等教育において教師が関わることの可能性が大きいのではないかと思ったんです。

さらに、Teach for Japanのプログラムを通して現場に赴任している先生たちが、毎日子どもたちのことを必死に考え試行錯誤しながら奮闘している姿を見て、感銘を受けていました。そんな熱い先生たちに刺激をもらいながら、私も子どもたちのために何かしたいと感じるようになっていったんです。

そこで、教員採用試験で合格していた自治体は辞退して、Teach for Japanのプログラムで、2年間臨時教師として小学校に行くことを決めたんです。このプログラムはまだ始まって数年のスタートアップ段階で、どうなるか分からない状態。それでも、私にも何かできそうというワクワク感がここにもあったんです。

この領域が一番課題だと確信があったわけではありません。ただ、将来どんな形で教育に関わるとしても、この経験は絶対に活きると思ったんです。

目の前の子どもたちが成長できる環境を


そして、2015年4月より、奈良県の小学校に赴任してきました。それまで東京でしから暮らしたことがなかった私にとっては、住む場所が変わるのは初めてのこと。今までにない刺激を受けて、私自身の価値観が変わっていくことを感じています。また、自分が育ってきた場所とは、家庭環境を始めとして子どもを取り巻く環境が異なります。そのため、様々な課題も目の当たりにしていて、教育の難しさも実感しています。

また、教育は現場に入らないと分からないことが多いと言われますが、その言葉の意味を体感していますね。学校文化、働く先生の気持ち、子どもと関わるとはどんなことか。これまでも学んできたものの、実際に入ってみなければ分からないことだらけだったんです。

この2年間、何を目標とするか。今、改めて考えているところではありますが、やっぱり目の前の子どもたちのことを全力で考える期間にしたいと考えています。このプログラムは「教育現場の課題を見つけて解決する」という命題もありますが、まずは目の前の子どもが学びやすく、成長できる機会を提供したいんです。

私はもともと「子ども大好き!」「学校大好き!」というよりは、教育への課題意識から教育に携わっていこうと考え始めた方です。もちろん、その課題意識は忘れていませんが、実はそれ以上に、今は子どもたちと多くの時間を一緒に過ごして成長に寄り添うことができる「教師の仕事」の魅力や醍醐味を素直に感じています。子どもからも、周りの先生方からも、たくさんのことを学ばせてもらっているんです。

今年度受け持っている特別支援学級では、一斉授業だけでは子どもが学びづらさを感じているのを実感しています。だからこそ、この子たちがより成長しやすくなる環境を作っていきたいですね。それと同時に、学校とは本来どういう場所であるべきか、現場の中から突き詰めて考えています。

プログラムを終えた後に、私は中学校や高校に行くのか、それとも小学校で教育に携わっていくのか、また別の道なのか、まだ分かりません。それでも、将来のことにワクワクしているんです。

2年前に会社を辞めてから色々な人に出会い、影響をもらって私自身変わってきました。辞める時には想像もできなかったようなことがたくさんありました。将来も、自分で決めて動いていけば、そんな生活が待っているんだと思います。

だから、今はあえて明確なプランを持つ必要もないと思うんですよね。これからも、教育をより良くしていくため、自分がワクワクする方向に進んでいきます。

2015.09.09

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