20年で17回した挑戦を社会に還元していく。新規事業のプロとしての働き方。

【ビジネスノマドという、新しい働き方】専門家のスキルと企業の課題をマッチングし、マイクロコンサルにより課題解決する 「X-book」との協力でお送りする「新しい働き方」の特集です。  ビジネスノマド1人目は、「新規事業」のプロフェッショナル、守屋さんです。20年の間に17の新規事業を立ち上げ、現在も自分の会社以外にも5つの事業に経営参画しています。そんな守屋さんの歩みをご紹介します。

守屋 実

もりや みのる|新規事業立ち上げのプロフェッショナル
新規事業立ち上げのプロフェッショナルとして、ラクスル株式会社、ケアプロ株式会社、株式会社サウンドファン、株式会社ジーンクエスト、メディバンクス株式会社の経営に参画する。

※この特集は、株式会社サーキュレーションの提供でお届けしました。
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今日より明日が良くなるなんて当たり前


埼玉県で生まれました。 小さい頃は勉強が大好きで、性格は真面目、中学受験を経て、中学から東京にある中高一貫私立校に進学しました。 ところが、バブル真っ盛りだったこともあって徐々に遊ぶのが楽しくなっていき、 大学生になった頃には、1回に5000人も学生が集まるパーティーイベントなどを主催するようになっていました。次第にマーケティング目的の企業も巻き込んで、ビールや化粧品、旅行会社等から協賛金を集めるようになり、大学1年生の時には、先輩と一緒に会社を立ち上げ、活動するようになりました。

年商は1億円以上。 時代背景的としても「今日よりも明日の方が良い」のが当り前。目の前の学生ビジネスが楽しくて、将来のことは真剣に考えていませんでした。 そんな中、たまたま、電子機器や金型用部品のメーカーである株式会社ミスミ(現、株式会社ミスミグループ本社)の新卒採用の仕事を、立ち上げた会社が請け負うことになりました。 ミスミはその年から新卒一括採用を止め、中途採用を主とし、新卒は面白い学生がいた場合だけ採用する方針を取っていました。 そして、学生発掘のために新規事業コンテストを行うことになったのです。

自分が立ち上げた会社が受託したイベントでしたが、実は、すでに大学4年となっていた自分は、その会社を引退して後輩に譲っていたので、イチ参加者として、事業アイディアを応募してみることにしました。応募は1人1件の縛りはなかったので、僕はいくつもの事業アイディアを応募しました。すると、なんと、全応募の中の1割が僕のアイディアで、しかも、複数のアイディアを出した人は他にはいなかったのです。 そして、審査委員長に「新規事業は多産多死が前提だから、1つで成功するなんて甘い」と複数案出したことが評価され、優勝をしてしまいました。そのことがキッカケで、 ミスミ創業者の田口さんに、「うちで働かないか」と誘われたんです。

それまで、企業に就職することはあまり考えていなかったのですが、先輩から、「一度は、ちゃんとした企業で働いてみるのも大事だぞ」と言われ、「そうかも」と思い、入社することを決めました。

自分が戦う土俵を見極める


ミスミでは、採用方針が変わった一期生だったので新卒同期はいなく、 1年目は4ヶ月毎に行きたい部署を自ら選び、4ヶ月目の最後の経営会議でその部署の課題を発表する、という仕事をすることになりました。

その後、2年目以降は、ひたすら新規事業を立ち上げることになりました。 もちろん、新米の僕が1人で新規事業を立ち上げられるわけもないので、最初は先輩社員や外資コンサルタントのチームに入ることになりました。 すると、周りの人はみんな優秀な人ばかり。 さらに、元々優秀なのに僕の何倍も努力をしているので、今日の差よりも明日の差の方が大きくなることは歴然としていました。 それが分かってからは、同じ土俵で勝負してはダメで「自分にできることは何か」を強く意識するようになりました。

例えば、実際の顧客の声を聞けている人は部署内にあまりいないことに気づくと、ひたすら顧客のもとに足を運んで話を聞いたり、人脈ネットワークを活用してインタビュー候補者を探したりと、 他の人とは違う分野での価値を出していくようにしました。 やはり得意な領域は人それぞれ違うので、周りからも色々教えてもらいつつ、 ひたすら新規事業の立案を行っていきました。

ただ、なかなかうまく事業を立ち上げることができず、他の部署の人からお荷物的な扱いを受けてしまうような状態が長く続きました。 しかし、27歳の時から取り組んだ、動物病院向けのカタログ通販事業は大きく成長し、たった6人のメンバーで6年間かけて年商20億円の事業にまですることができました。 この成功は、自分の中でも大きな自信となりました。

そんな時、再び田口さんから、再び声がかかり 「株式会社エムアウト」の立ち上げに参画することになったんです。

新規事業のプロを育てるための会社


田口さんには、日本に少ない「新規事業立ち上げのプロ」を育てる思惑がありました。 一般的に、新規事業の担当者は成功するとその事業を続けることになるし、 失敗したら次のチャンスを与えてもらえないので、結果として新規事業立ち上げを複数経験した人材、新規事業のプロはなかなか育たないことになります。そこに問題を感じていた田口さんは、エムアウトでは成否に関わらず一定期間で次の新規事業に人を異動することにしたのです。

エムアウトは、新規事業の立ち上げ専門会社で、徹底的に市場のニーズから入る「マーケットアウト」を用いて事業を立ち上げ、その事業が成長したら売却しその売却益でまた事業立ち上げる、とういビジネスモデルでした。 事業の立ち上げを「開発」「推進」「参入」「成長」4つのプロセスに分け、 特に前者3つのプロセスに特化していきました。 本格的に「参入」をするには「開発」「推進」という2つのプロセスを突破する必要があるのですが、なかなか難しく、参入できないでボツになることが多かったです。もちろん、立上げの専門会社ですから、失敗しても次の新規事業の立ち上げをするしか仕事はなく、結果、2度、3度と連続で失敗することもあり、 さすがに自信も失い「辞めたい」と思ったこともありました。 そんな時は、「何が分からないかすら分からない」状態に陥ってしまったし、 周りの人も失敗続きの自分の意見なんて聞いてくれなくなり、どんどん悪循環に、はまったりもしました。

ただ、そんな中でも、諦めずに事業を創り続けたのは、ミスミでの成功体験があったからこそ「またできる」と心のどこかで思っていたんです。

20年を節目に、独立の選択を迫られる


その後、ミスミとエムアウト合わせて20年程、田口さんのもとで働いたタイミングで、 田口さんから「そろそろ独立したら?」と言われました。 最初は受け入れることができなかったのですが、しばらく考えたのち、2010年9月にエムアウトを離れて、独立することにしました。

独立してからは、エムアウトに在籍していたころからご縁をいただいていた、印刷通販のラクスルと、ワンコイン健診のケアプロに経営参画しつつ、 博報堂の新規事業の立ち上げメンバーにもなりました。 働き方としては、これまでの事業立ち上げた経験を最大限に活かすため、 コンサルタントとして外から関わるのではなく、経営の中に入って事業の立ち上げに深く関わることにしました。事業計画をつくるところから、パートナーや営業先の開拓、組織問題の解決や、社員の個別のキャリア相談など、多様なかかわり方をしています。

そして、現在では5社の経営関わっています。 時間のやりくりとしては、1日を4時間毎の3コマに区切って、1コマ毎に各社の仕事を割り当てていき、なんとかやりくりをしています。

ただ、自分はあくまでも事業の「立ち上げ」のプロであって、「成長」に関しては専門領域ではないので、 会社の成長に応じて、関わり方も変化していっています。会社のフェーズによって必要とされる人材やスキルは変わっていくので、自分の適している会社のフェーズを理解していることは大事なことだと思います。

新しい働き方のロールモデルになる


今後は、自分の様な働き方をする人を、増やすための活動もしていきたいと考えています。 人からは変わっている働き方・仕事だと言われることが多いのですが、 新規事業を専業としてきた自分としては、いたって普通の働き方だと思うんです。

とはいえ、ベンチャー企業で働くことや、複数の企業で同時に働くことで、 きちんと生活が成り立つのか、不安に思っている人は多いことも分かります。 だからこそ、僕自身の働き方を見てもらって、生活もできるし楽しんで働いていることを知ってもらいたいですね。

また、自分のように何かに特化した経験は、ベンチャー企業にも少なからず役に立つ実感はあります。 初めて事業を立ち上げる人は気づかないことでも、事業が成長する上で必ず直面する問題があって、 そういったものを経験として事前に伝えることができます。 持っている経験を社会に循環していくという意味合いでも、自分の様な働き方の人が増えてくれると嬉しいですね。

これまでは30年かけて1社で勤め上げる時代でしたが、今は一生の間に3回転職すると言われています。 さらにこれからは、同時に3社に貢献する時代がやってくるのではないかと。 自分の専門性を磨いて、それを軸に独立して複数社で働く方が、組織に依存して働くよりもリスクが小さいと思っています。また、今後の少子高齢化や専門性の多様化していく時代の要請に応えている働き方だと思います。

その新しい時代における働き方のロールモデルとして、多くの人にきっかけを与えられればと思います。

2015.04.16

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