【複業人材募集】長野県塩尻市の関係人口を鳥取県19市町村と共有?地域を超えたタレントシェアリングの可能性

「関係人口」とは、移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域と多様に関わる人々を指す言葉です。2016年頃から言及されるようになったこの言葉は、今では多くの方に知られるほど普及しました。全国各地で「関係人口」に関する施策が様々行われています。

今回は、長野県塩尻市の「関係人口」を鳥取県の19市町村の課題解決に担い手としてシェアリングするプロジェクトをご紹介します。地域と関わりたい都会の生活者にとっては関わり先の地域の幅が広がり、各地域にとっては互いの関係資産をシェアできる、画期的なモデルです。

また、このプロジェクトから生まれた、鳥取県の3市町で募集している複業人材(リモート・短期)の求人についてもご紹介いたします。

人の繋がりで、地域の活性化や、キャリアの新しい選択肢を広げる本プロジェクト。ぜひご覧ください。

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長野県塩尻市と山田崇さん


今回のプロジェクトは、another life.でもご紹介している、長野県・塩尻市役所の山田崇さんが中心となり、塩尻市役所の三枝大祐さん、横山暁一さん、そして鳥取県庁関係人口推進室の岡本圭司さんが進めてきました。

山田崇さんは、塩尻市のシティプロモーション担当係長として、外部の人と塩尻市の接点を作り続ける「日本一おかしな公務員」。他自治体や民間企業での研修・講演会の回数は年間200回を超えます(2019年)



そんな山田さんをきっかけに、塩尻市では関係人口と接点を持つ取り組みが数々行われてきました。例えば、2016年から毎年開催される「MICHIKARA(ミチカラ)ー地方創生協働リーダーシッププログラム」。MICHIKARAは、首都圏の企業で働く人と塩尻市職員が一緒になり、地域の課題解決を目指す官民協働プログラムです。このプロジェクトから、子育て支援や空き家対策など、実際に予算がついた政策も生まれました。

また、2018年8月にはシビック・イノベーション拠点「スナバ」がオープン。官民、まちの内外といった境界を超えて、様々な人が集う場所です。この場所からも、農業ベンチャー「HYAKUSHO」設立、東芝との共創事業「WaiNari(ワインの味覚を可視化するIoTを活用したワイングラス)」など、新しいプロジェクトが生まれてきました。

そんな背景を持つ塩尻市の新しいチャレンジが、この関係人口創出・拡大事業「MEGURUプロジェクト」でした。

総務省 関係人口創出・拡大事業の取り組み


今回のプロジェクトは、総務省が公募した令和二年度の「関係人口創出・拡大事業」モデル事業に塩尻市が申請し採択され、スタートしました。

塩尻市では、外部のプロフェッショナル人材との長期的な関わりづくりに課題を感じていました。MICHIKARAなどで多くの人と関わりがあるものの、1ヶ月の期間が終わると、その後長期的に関わりづつける場がなかったのです。そこで、2019年11月に、塩尻市の地域課題解決に取り組む複業人材の募集をしました。

求人には想定以上の注目が集まり、100名以上が応募。2名のプロフェッショナル人材を3ヶ月間、複業・リモートで「特任CxO*」として採用。その成果は著しく、複業・リモートによる「塩尻市特任CxO」人材を7名に増やして、活動の機会を広げていきました。

この「CxO」の取り組みをさらに昇華させたのが、今回のモデル事業。塩尻市で地域課題に取り組んでいる人(=シビック・イノベーター)と、外部のプロフェッショナル人材をつなぎ、協働・共創で地域課題の解決に取り組んでいく仕組みです。

*特任CxOとは・・・地域の課題解決に関わる外部のプロフェッショナル人材



①これまでに塩尻市と関わりのあった「関係人口」を、オンラインイベントで発掘
②集まった外部人材とシビックイノベーターが協働・共創して、地域課題を言語化・可視化するワークショップを開催(仕様書作成研修)
④明確になった地域課題を解決するため、複業人材を募集
⑤複業メンバーとともに、課題に取り組む

という流れです。さらに、「塩尻と関わりたい」と思いを持つ人向けに
③有償のオンラインコミュニティ「塩尻CxO Lab」を運営
することで、継続的に塩尻と関わる機会を提供しました。

・外部人材と一緒に地域課題を明確にする
・明確になった地域課題を、さらに別の外部人材と取り組む

という、2階建てのモデルです。

実際に、参加者を募集するオンラインイベントには250名以上が参加。最終的な5つの複業人材の求人には、70名を超える応募がありました。

また、長野県辰野町や埼玉県春日部市で地域課題に取り組む人もシビック・イノベーターとして本プロジェクトに参加。塩尻市の関係人口が、他地域の課題を可視化することに携わった新たな展開も生まれました。

この「課題解決モデル」と「塩尻の関係人口」のどちらも他地域に展開した事例の一つが、鳥取県との取り組みでした。


なぜ鳥取県と連携するのか?



では、塩尻市の事業をなぜ鳥取県で展開することになったのでしょうか。それは、山田さん自身が、鳥取県の「関係人口」の一人だからです。

2020年2月8日、山田さんは鳥取県が主催する「関係人口シンポジウム」に登壇しました。そのときに、登壇者の一人である齋藤 浩文さん(鳥取銀行/まるにわ代表理事)や、主催である鳥取県庁の岡本圭司さん、NPO法人学生人材バンクの中川玄洋さんと意気投合。塩尻から鳥取へは京都を経由すると、電車内で仕事をしながら行けるということもあり、「塩尻と鳥取で一緒になにかやりましょう!」と盛り上がったそうです。

それから、毎週木曜日の朝7時から企画ミーティングがスタート。発想が広がり、塩尻市の関係人口を鳥取県19市町村にシェアするというプロジェクトが生まれました。

鳥取県庁の岡本さんは、今回の連携について次のように話します
「鳥取県は人口減少が進む中、若者の人口比率の低下が特に課題になっています。これまでのやリ方では地域を変えるのはなかなか難しい。今後、外部人材と議論をすることはより一層大事になると考えています。また、他の地域の活動を参考にすることもありますが、仕組みをコピーするだけでは定着しません。大事なのは、その活動のハートまで持ってくること。今回、塩尻の取り組みは、山田さんとの個人的な繋がりから始まりました。山田さんのハートも含めて塩尻の取り組みを参考にしたい。そんなことから、鳥取で実施していただくことになりました」

また、塩尻市役所の山田さんは、今回のプロジェクトの地域展開の可能性を次のように話します。

世の中では、人口減少、少子高齢化、人生100年時代など、過去人類が経験してこなかった出来事が起きています。その中で、鳥取県は人口60万人を切るほど過疎化が進み、課題の最先端の地と感じています。

地域の人が初めて向き合う課題とは、正解がない問いです。解決するのが難しい課題ですが、一方で、そこには金銭的な報酬を求める人ではなく、”腕まくりして“解決に取り組もうとする人が集まる可能性があります。そこで外部の人と一緒に新しい解決策が見つかれば、他の地域に横展開できる可能性があります。このプロジェクトを鳥取県でやろうとした背景の一つです。

また、2020年に「関係人口シンポジウム」に呼んでいただいてから、鳥取県の岡本さん、中川さん、齋藤さんと意気投合して、翌週から「オンライン関係人口」について考える打ち合わせを毎週してきました。ちょうどその頃から新型コロナウイルス感染症が拡大して移動が制限され始め、私の担当するシティプロモーションのやり方も変えざるを得ない状況でした。その打ち合わせには、富山県庁や広島県三次市の職員も参加するようになり、コロナ禍で変化を求められる自治体職員同士で、「今何ができるか?」と仮説を立ててアクションできることも大きかったです。


「とっとりMEGURUラボ」の取り組み


とっとりMEGURUラボでは、塩尻の課題解決モデルを踏襲。複業人材を受け入れる前の段階として、地域が抱えている課題とは何か、あらためて言語化するワークショップを行いました(仕様書作成研修)

鳥取県19市町村の中から公募で選ばれた、大山町、智頭町、境港市の各自治体のシビック・イノベーターが中心となり、鳥取県庁職員や外部人材と一緒に課題設定を行います。この外部人材には、塩尻市のシビック・イノベーターや、オンラインコミュティ参加者(塩尻市の関係人口であるプロ人材)が多く含まれます。約1ヶ月間、オンラインで地域の課題を外部の人とディスカッションしながら具体化し、「仕様書」というかたちでまとめました。



1ヶ月間の壁打ち期間が終わり、各地域のシビック・イノベーターから、なぜこの課題に取り組むかプレゼンテーションがありました。

大山町:松浦生さん




智頭町:西尾さん




境港市:竹本夏樹さん




今回の事業を通して、鳥取県の大山町、智頭町、境港市で募集が開始された複業人材の求人は以下となります。

募集職種
(1)

雇用形態
業務委託(2ヶ月間~)
※詳細は面談時に相談の上決定します。(2021年5月上旬から6月末までの2ヶ月を予定)

給与
月給30,000円
※詳細はミッションの内容と関われる頻度や経験を考慮し、相談の上決定します。
※プロボノとしての参加も可能です

待遇・福利厚生
リモート勤務を想定していますが、プロジェクトによって現地への訪問をお願いする場合もございます。
※交通費は各プロジェクトにて負担

仕事内容
詳細の仕事内容については各プロジェクトの仕様書を参照してください。

勤務地
基本的にはリモートワークでの勤務を想定
※業務により直接現地へ足へ運んでいただく可能性もございます。詳細は各プロジェクトの仕様書をご参照ください。

勤務時間
月16時間前後
※プロジェクトごとに異なります。詳細は各プロジェクトの仕様書をご参照ください。

休日休暇
業務委託のため規定せず

応募資格
※プロジェクトごとに異なります。詳細は各プロジェクトの仕様書をご参照ください。

求める人物像
※プロジェクトごとに異なります。詳細は各プロジェクトの仕様書をご参照ください。

募集期間
2021/2/26~2021/4/20
採用予定人数
各プロジェクト1~2名

選考プロセス
まずは下記「問い合わせ・応募する」ボタンよりご連絡ください
次のページで入力した内容にて選考のうえご連絡いたします
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書類選考
 ↓
1次面談
 ↓
2次面談
 ↓
業務委託開始
 ↓
ワーケーションプログラム実施(希望者)

・業務開始時期については5月を想定していますが、詳細はプロジェクトオーナーとご応募者間で決定頂きます。
・取得した個人情報は、採用選考にのみ使用します。
・選考プロセスは変更になる可能性があります。
・不採用理由についての問い合わせにはお答えできませんのでご了承ください。

その他
各募集の詳細内容について下記の「仕様書」を必須でご確認ください。各プロジェクトの背景や今回の人材に解決いただきたいことが詳細に記載されています。

(1)大山町:農業関係人口創出プロジェクト

(2)持続可能なビジネスをともに創る外部人材と事業者の協業人材プラットフォームの構築

(3)境港市の中学生を対象とした境港市民交流センター(仮称)の活用方法について考えるワークショップの開催




このプロジェクトを通して生まれたこと



塩尻市の継続的な関係人口を生み出し、それを他地域に展開する本プロジェクト。それぞれの地域や、関係人口当事者にとって、どのような価値があったのでしょうか。

山田さんは以下のように語ります。

塩尻に関わっていただいた関係人口の「タレントシェアリング」の可能性を感じた取り組みでした。今回、塩尻市の仕様書作成にテーマーオーナーとして関わってくれた方が、「塩尻CxO Lab」メンバーとして、鳥取県の仕様書作成のサポートとして参加してくれました。純粋に嬉しかったですし、塩尻市の人が他地域を応援しているようで「鼻が高い」ような感覚になりました。

また、塩尻市の複業人材としては採用できなかった方も、鳥取県の仕様書作成のサポートをしてくれました。塩尻市の複業人材募集では、応募者72人の中で62人は今回不採用となっています。予算や今回のプロジェクトの要件とズレているなど塩尻側の都合で、申し訳ない気持ちと、もったいないという気持ちが常になりました。その方たちの意志を実現するために、2021年度からは「関係人口創出コーディネーター」という職種を作り募集することになりましたが、地域と関わりたいという方に、ゆかりのなかった鳥取県に活躍の場を提供できたことも、今回のプロジェクトのよかったことです。

そして、境港市の竹本さんのような、地域の中にいるシビックイノベーターを発見できたことが嬉しい。竹本さんは、市の職員としては今回仕様にまとめたプロジェクトの担当ではありません。それでも、60年先まで市民に使われる施設、自分の子どもや孫の世代が使う施設に行政として、父親として関われるのはチャンスだし「見過ごせない」といって今回手を挙げてくれました。私自身、この言葉に心を動かされましたし、この言葉に惹かれて応募してくれる人がいると感じています。地域の中で奮闘する人の、この言葉を言語化できたことの価値は大きいと思います。

また、鳥取県町の岡本さんは「課題がつながりづくりの大きな資源である」ことを感じたと話します。

普通、外部の人を呼び込もうとすると、観光地など“いいところ”を紹介してしまうものです。しかし、今回は「課題」を発信することで関わりたいと人が集まってくれました。課題には、つながりづくりの可能性があると実感しました。

ただし、課題はそのまま出せば良いものでもありません。オープンな場で磨き上げることで、本当の地域資源になります。普段は、地域の課題は地域の中の密室で話そうとします。それを、オープンな場で磨き上げるプロセスを見てもらうことで、それ自体が繋がりをつくることになりますし、地域だけでは気づけないことに気づくことができました。外部の人に関わってもらえたことの価値はそこにありましたし、これまで選択肢になかった「頼る」という方法論を持てました。

また、シビックイノベーターは、最初からいるのではなく、関わりの中から生まれてくるというのが見れたことも大きな価値でした。地域を動かすのは「特別な人」と思い込んでいる人が多いですが、それは違うと思います。一人ひとりの心の中にある思いや感覚が、人との関わりの中で気づかされるのだと、今回のプロジェクトで感じました。

自分たちは恵まれた時代にいる。オンラインで人と繋がれる。それを発見できたことが、とても大きな価値でした。



実査に関係人口当事者として塩尻・鳥取のどちらにも関わった方にも話を聞きました。

井上格太さん「オンラインでも地域には関われる」

以前から、地域でなにかしたいという思いはありましたが、なかなかきっかけを作れずにいました。そんなとき、仕事でたまたま山田さんとオンラインミーティングをして、こんな面白い人がいると驚きました。私の妻が塩尻出身で、身近に感じたのもあり、塩尻CxOラボのイベントに参加したことが、このプロジェクトへの関わりの始まりでした。

塩尻市の仕様書作成に関わりつつ、複業人材の求人にも応募しました。結果はまさかの不採用でしたが、オンラインでも価値を提供できることやリアルで会ったことがなくても続けられることがわかったので、塩尻で経験したことを鳥取でも試したいと思い、とっとりMEGURUラボにも参加しました。

最初は「他の地域に関わりたい」という思いでしたが、智頭町テーマオーナーの西尾さんからの熱い話を聞いているうちに、行ったことない智頭町のイメージが頭の中に浮かんで、「あ、行ってみたいな」と「関わってみたいな」と感じました。また、塩尻市の複業に不採用だったことは結果的にはよかったと感じています。仕様書をつくるときと実行するときに違う人が関わるほうが、プロジェクトの広がりが生まれます。そこに、2階建て構造の価値があると感じます。



いかがだったでしょうか?another life.は個人のライフストーリーを発信しながら、様々な人の「良い出会い」をつくることを目指しています。

今回は、人が軸になり、地域と外部の人が継続的な関係を築ける仕組みや、思い入れのある地域の人からさらに別の地域の人へとつながっていく、新しい関係人口のプロジェクトをご紹介しました。興味を持っていただけましたら、大山町、智頭町、境港市の複業人材として、ぜひご応募ください。



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2021.02.25