官民の枠を超える!
世の中にプラスを生み出す、 新時代の「公務員」とは。

公務員/民間の枠にとらわれず、世の中をより良くしようとプラスの志を持って活動する、「公に務める人」たちのストーリーを紹介する「公務員+チャンネル」。

「公のために務める人こそ公務員」だという発想は、「よんなな会」主宰者の脇 雅昭さんと、「竹あかり」演出家の池田親生さんの出会いがきっかけで生まれました。

行政と民間、それぞれの立場から世の中をより良くしたいと活動するお二人は、どんな課題感を持ち、どうやってそれを乗り越えていこうとしているのでしょうか?二人が思う、これからの社会に必要な「公務員」とは。対談をお送りします。



脇 雅昭(わき・まさあき)
1982年生まれ、宮崎県出身。2008年に総務省に入省。現在は神奈川県庁に出向。人の持つモチベーションの力を信じ、「公務員の志や能力が1%あがれば世の中もっと良くなる」という思いのもと「よんなな会」を主宰。国家公務員と47都道府県の自治体職員が繋がる場づくりを進めている。
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池田 親生(いけだ・ちかお)
株式会社ちかけんプロダクツ、合同会社ちかけん取締役。崇城大学を卒業後、内丸惠一氏の提唱する「まつり型まちづくり」を基盤に竹あかりの演出制作・プロデュース会社を設立。熊本地震後は、一般社団法人チーム熊本、一般社団法人BRIDGE KUMAMOTOを設立し、復興支援活動を行う。
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「俺こそ公務員だ」と言われて気づいた、真の公務員のあり方



ー公務員というと職業を思い浮かべますが、お二人は「公に務める人」が真の「公務員」だと定義されています。公務員という言葉を捉え直したきっかけはなんだったんですか?


脇:ちかおちゃんに会ったこと。知ってはいたんだけど会ったことはなくて、人の紹介で、渋谷で初めて会ったの。その時、ちかおちゃんが「俺こそ公務員だ!!」って言い出して。

池田:そんな喧嘩腰じゃないよ。でもちょっと前のめりではあったかな(笑)。

俺は本当の意味での公務員は「公に務める人」だと思ってたのよ。地域に行くと、「お祭り作ってくれ、人呼んでくれ」みたいな作業公務員も結構いるからさ。俺はサポートする側で、業者じゃないんだと。だから公務員の人に会うと、飲み会でいつも「お前が務めている『公』ってなんだ」と質問するわけなんだけれども。

「公」って言葉は、日本が持っている美しい言葉の一つだと思う。自分じゃなくて誰かのために何かができるということが本当の「公」で、そこに日本の美しさはあると思っているから。でも、その心は俺も持っている。竹あかりを始めたのも、まさにそれだよね。だから、俺も公に務めている「公務員」だと言ったんだよ。

脇:この前提がないと伝わらないね(笑)。でも、それを聞いて「公務員」っていっぱいいるんだなって思った。僕らは公務員っていう言葉を「税金をもらって仕事をしている人たち」みたいに閉じ込めてしまっている。だけど、世の中のためにより良いことをしていることが真の公務員の定義だとしたら、もっと広がるんじゃないかって。今、職業的な公務員は338万人いるけれども、もっともっとたくさんいるんだって。ちかおちゃんがくれた言葉がきっかけで、「公務員」という言葉を広げていきたいと思ったの。


ー「俺こそ公務員」はすごい言葉ですね。ちかおさんは民間の立場で公のためになる活動をされていますが、脇さんも公務員という立場から民間と一緒になって、公のために活動されていますね。


脇:うーん、でも大義を掲げてやっているかっていうと、それって後付けで、心が赴くままにやってる感じなんですよね。

僕らは、地元のためとか国のためにと思って公務員になるけど、いざ仕事となると思っていたことを全部やれるわけではない。辞令という形で仕事を与えられて、それをやっていくわけだよね。でも、世の中にはちかおちゃんが言うような「公務員」がたくさんいる。

僕は29歳のときに父が亡くなって、自分の人生の使い方を考えたとき、そういう人たちにめちゃくちゃ会うようになって。比較していったら、僕は与えられたことばかりをやってないか、と思うようになった。元々はもっと、世の中のためにと思っていたはずなのに。

その一方で、ちかおちゃんは誰にも頼まれていないのに、竹を切ってる。勝手にあかりを灯している。給与的な保証もない中で、社会のために人生かけてやっていた。

僕もこの人生をかけてやれるものを探したんだけど、正直探し切らなかった。わからなかったし、言葉を見つけられなかった。でも世の中を良くするために思いつく、小さなことはあるなって。だから、やったほうがいいと思える小さなことをひたすらやっている。それで全国いろんな所に行ったよね、ちかおちゃんのやっているイベントにも行った。ちかおちゃんが見てる景色を見てみたかったから。

池田:高知でイベントを開催した時に呼んだら、本当に来たからびっくりした(笑)。俺は脇くんが、自腹で地域に行って面白い人たちに会って、横のつながりを作ってるって聞いて、「本当の意味で公務員だ」って思った。脇くんみたいな公に務めている人たちがいるってことこそが世の中の救いになると思うし、そういう人たちが集まって「公務員」のモチベーションが1%上がれば、日本は変わる。盛り上がるのは間違いないって思ってる。



肩書きを取り払い、フラットに繋がるから一緒に進める



ー公務員という言葉を「公のために務める人」だと定義すると、これからはこれまで以上に、官民の区別なく、さまざまな立場の人が協業していく時代になるのではないかと思います。


池田:うん、脇くんは公務員をオーバーラップして社会起業家みたいな部分もあるし、俺も社会起業家だけど公務員的な動きもする。公務員、民間に限らずお互いが少し頑張って動くことで、その重なった部分に新しいものが生まれるんじゃないかと思うんだよね。

脇:多分、0か1かじゃなくなって来ているよね。世の中は明確な区切りを求めるから、官民の間に線を引くけど、本当はその間にグラデーションがある。民間と公務員、それぞれの仕事は繋がっているはずだし、そのグラデーションの部分に価値があると思う。民間とか公務員という分け方じゃなく、両方を行き来しながら活動できるんじゃないかと思うんだよね。

池田:行き来できるようにしていかなきゃいけないなと思う。たとえば公園の草刈るのは行政の仕事みたいになってるけど、ちょっと話して「じゃあ俺たちでやるわ」ってなれば、その分の予算を別なことに回せるじゃない。そんな風にすれば、新しいポジティブなことをたくさん起こせるはずなんだ。

今は両者の境界線が、少し薄まってきたところ。もっとそれを起こせるように、仕掛けを作っていかないといけないと思う。その一つが、俺らのやっている祭りだと思うんだよね。

この前、「マジックサークル」っていう言葉を聞いて。何かをするとき、いろんなものを一つにしよう、一つにしようと思ってもなかなかできない。だから小さいサークルをたくさん作っていくんだって。

例えばサッカーだったら、人種も年齢も会社での肩書きも関係なく、フラットな状態で一つのサークルができるでしょ。そういうフラットなサークルをたくさん作っていくことで、だんだんそれが繋がって一つになっていくんだって。

祭りもマジックサークルの一つだよね。竹あかりでどんどん祭りを作りながら、肩書きを取っ払って、個人と個人が出会えるマジックサークルを増やしていきたいと思ってる。

脇:フラットな関係になるサークルは大事だよね。有志が集まって地域に架かる橋を清掃する「橋洗い」なんかもそうなんだよ。官民関係なく、橋を洗ったあとはみんなフラットになる。肩書きがあると誰かと会いやすくなるんだけど、自分を閉ざしてしまう部分もあるから、そいつをどうやったら取っ払えるか。鎧を外す場所をずっと作りたくて。祭りはまさにその空間を作ってくれるよね。

実は、僕が総務省に入って初めて地域のお祭りに誘ってもらったのも熊本だったの。そこには工場に勤めている人もいれば、不動産屋さんをやっている人も、大企業の人も公務員の人も、本当にいろんな人がいて。それが、この祭りの場を通して出会っているんだなって思った。

全国の地域の人たちと繋がっていく中で、一緒に面白いことやろうぜってなった時、じゃあ逆ってできているんだっけ?って思ったの。例えば熊本から霞ヶ関に来た時に、もっともっと広い出会いの場を作れるんじゃないか?って。東京は2、30代の地域の未来を背負う人たちが送られてきている場所だとすると、その人たちが出会える祭りみたいな場所を作れたらいいなと思った。実は、そう思って始めたのが「よんなな会」なんだよね。

池田:最高!

脇:フラットな場所で個人と個人が仲良くなると信頼が生まれて、お互いそれぞれの組織に戻った後も、協力しながら組織を動かしていけるんだよね。その中で、世の中って面白いと思えるかもしれないし、自分のできること、強みもわかってくる。それがわかると、また今の仕事を頑張ろうって思えるし。

池田:うん、ほんとそうだと思う。俺も、竹あかりだけじゃ作りたい世の中は作れないんだけれども、思想や方向性を同じくする人と出会って一つの人格となってやることで、スピードが上がるし、いろんなことができると実感してる。



馬鹿者も応援者も、頑張る人を応援できる社会を



ー肩書きに縛られず、世の中をよくするという志を持った人が繋がって、一緒にプラスを生み出していく。そんな世界をつくるには、何が大事になるでしょうか。

池田:まずは、肩書きの外に飛び出す馬鹿者が大事だよね。まちづくりには、よそ者、若者、馬鹿者が必要だってよく言われるけど、この馬鹿者には二種類の馬鹿が必要だって言われてるの。民間と行政、それぞれの馬鹿が必要だと。俺と脇くんだね(笑)。

全員が馬鹿になる必要はないんだけど、馬鹿が出てきて組むことによって、できることが広がるよね。そうやってできた器が、世の中をハッピーにすると思う。

脇:最近、なんで馬鹿になれるのかなって考えたの。世の中には馬鹿を批判する人がいるわけじゃない。でも、いいねって言ってくれる人もいるんだよね。馬鹿が頑張れるのはやっぱり、周りの人が「いいね」って言ってくれるからなんだよ。それがあるから僕は、よんなな会は必要なんだって言い続けられる。同じことを100万回でも言える。それは支えてくれる人がいるからなんだよね。だから、応援してくれる人も大事だと思う。

池田:わかる。嬉しい嬉しい。馬鹿も大事だけど応援者も同じくらい大事だし、応援者にこそ光を当てたいよね。

脇:うん、自分は何もできなくてっていう人もいるけど、いいねって言ってくれるだけですごい力になるんだよ。応援してくれる人がいるから、いろんなことができるんだって。いろんなプラスを生み出して、頑張ってる人を頑張ってるねって応援できる社会にしていきたい。





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公務員+チャンネルでは、47都道府県、さまざまな「公務員」のみなさんのストーリーをシェアしてつながることで、いろいろな形で新しいプラスを生み出していきます。

2020.04.01

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