WORLD KIDS LAB FESTIVAl 2016 in Jordan開催!

2016年8月、WORLD FESTIVALは中東にあるヨルダンという国を訪れ、現地の子どもたち向けのお祭り「WORLD KIDS LAB FESTIVAL」を開催しました。プロジェクトの背景や、当日の現地の様子をお届けします。



ヨルダンとは?


正式名称はヨルダン・ハシミテ王国。中東・西アジアに位置する立憲君主制国家です。今でも紛争が頻繁に起こっている、イスラエル、パレスチナ暫定自治区、サウジアラビア、イラク、シリアと隣接しています。国民の半数余りは、中東戦争によって生まれたパレスチナ難民とその子孫です。現在も、多くのイラク難民やシリア難民を受け入れています。





想像する力を育み、人種・宗教・文化の壁を超えた「楽しい」を共有するためのお祭り


ヨルダンは、天然資源や独自の産業がありません。そのため、大学を卒業しても職に就くのが難しく、2016年第2四半期の20歳から24歳の失業率は33.3%にものぼります。学歴社会で就学率や教育水準は高いのですが、その多くは詰め込み型・講義型の授業スタイル。美術・音楽・体育などの授業もなく、自由に想像したり夢を描いたりする力、考える力を育むことが困難だと聞きました。

また、宗教や人種など様々な境遇の背景が入り混じっているので対立が起こりやすく、お互いに政治的な話しを避け、異文化を受け入れたり、何かを一緒に成し遂げたりする経験は乏しいそうです。その結果、お互いの敵対感情が拭えず、テロや戦争が続く負のスパイラルに陥っている現状があります。

そこで、ヨルダンの子どもたち向けに、音楽・アートなどエンターテイメントを通して世界とつながるお祭りを開催することにしました。目的は二つ。一つは、創作を通して自分の才能や好きなものに出会い、自分の選択肢や可能性を広げること。もう一つは、世界と身近になって視野を広げることです。

アートやエンターテイメントを通して、楽しい中で自由に考え、自分で発見しながら行動することで、「好きなもの」が見つかるかもしれません。また、子どもたちが、人種・宗教・文化の壁を超えて一緒にものをつくったり交流して、「楽しい」という成功体験を持てれば、自分以外の世界と身近になれるはず。そういう経験をした子どもたちが、「関係ない」という意識がなくなる未来を作ってくれる。そんな思いを込めてプロジェクトを立ち上げました。



11のブースで300名の子どもが参加


お祭りを実施したのはマカニセンター(Makani Centre)。パレスチナ、イラク、シリアからの難民を中心に、満足な教育機会を得られていない3歳から24歳の子どもたちが通う教育施設です。運営するのは「East Amman Charity for Development」というNGOで、UNICEF Jordanが支援しています。教育施設の運営スタッフをはじめ、JICA Jordan Officeのメンバー、ヨルダン大学で日本語を学ぶ大学生のバックアップの元、お祭りは開催されました。

前日に会場で設営していると、子どもたちも積極的に手伝ってくれました。物怖じしない子どもが多く、高いところに飛び乗ったり、壁への釘打ちを積極的にやってくれました。

当日は朝8時過ぎには集合して、準備。10時頃スタート予定でしたが、9時を過ぎると子どもたちが続々と集まり、気がつけばお祭りが始まっていました。

11のブースとコンテンツを用意して、それぞれ自分なりの表現をできる場を用意しました。子どもたちの自発性を大切にしており、運営からの強制は一切ありません。子ども自身が興味を持ったブースに、自由に行ってもらいます。各ブースにはスタッフやヨルダン大学の学生がつき、子どもたちをサポートしました。

用意した11のブースとコンテンツは下記になります。

1.Music Stage (Anyone can play! Sing!)


音楽を自由に演奏できるステージです。ギターや打楽器を演奏してもらったり、自由に歌ってもえます。また、子どもたちと音楽教師による演奏会も開催されました。

日本人スタッフがギターとカホンで、演奏を開始すると続々と他の子どもたちも集まってきて、それぞれが自由に手拍子をしたり、踊ったりとセッションなども始まりました。



2.Live Paint (Anyone can draw anything you like!)


絵を描いたり色を塗れたりする大きなボードを用意しました。絵の具やペンを使って、自由なアート表現をしてもらいました。真っ白なキャンバスボードに、子どもたちが集まってきて、絵の具を顔につけたりしながら、好奇心の赴くまま、自由に、なんでも好きなものを無心に描く表情は、楽しそうに、でも真剣に。

国や宗教が違う人たち同士でも、一緒に何かを楽しく作っていける、成し遂げていけるという成功体験は、きっと子どもたち一人一人の心に残り、大人になったときにその考え方で社会を作っていってくれるのではと思います。また、美術や音楽が授業にないヨルダンでは、こういった経験が一人一人の想像力や自信に気づくきっかけにもなってもらいたい。様々なことに疑問をもったり、自分の考えをもつことが、あらゆる課題を解決する上でとても大切なことだから。



3.Creative Lab (Craftwork with Japanese staffs/Origami/Original Accessaries/Boon Boon spinning top )


工作スペースです。折り紙やぶんぶんごま、温めると自由にカタチを変えられるスライムを使って、ものづくりをしてもらいました。何か家にも持って帰れるものを自分たちで自由に作っていく。頭の中にあるイメージや好奇心を形にしていく経験は、きっとさらに大きい好奇心と希望に育っていくと思います。



4.Makey Makey (Circuit Board that everyone can connect anything that has potential to conduct electricity.)


Makey Makeyという、電気を通すものなら何でもパソコンのキーボードに変換できるキットを使って遊べるブースです。野菜や果物、水などをキーボードにして、パソコンから自由に音を出すようなゲームをしてもらいました。例えば、「バナナを触っても音がならない」という固定概念がある人が、実際にバナナを触ったら音がなる、という経験は、「なんで?」という疑問をうみ、一生懸命原因をさぐろうとしたり、ひたすら触ったり、電極を他のものにさして見たりと、考え方やものの味方や視点を広げてくれる。そんな中、一人の子どもが「水が含まれるもの」は全て機能することに気づき、自ら他のものを持ってきたり、水をこぼしてみたりして、原因を発見していました。これにはスタッフ一同とても驚くとともに、とても誇らしく思いました。



5.Wishes Tree Monument (Write & hook your “wish” on the monument)


日本の七夕のように、子どもたちの願いを短冊に書いてもらい、木に見立てたモニュメントに吊るしてもらいました。一人一人の思いや願いが一本の木を作っていくコンセプト。想像以上に大人気なコーナーになり、友達が書いた短冊をみて、ニヤニヤしたり、恥ずかしそうに願いを吊るしたり。そして、運営側としてはそれぞれの本音を直接聞ける貴重な機会にもなりました。



6.What I Love (Write, draw, stick, construct your expression of “What I Love”)


「あなたが好きなもの」を、画用紙に自由に表現してもらうブースです。文字や絵を描いたり、何かを貼ったりして、好きなものを自分なりに表現してもらいました。クレヨンやペン、セロハンテープやハサミ、ノリなどを使って、自由な発想で!中には、紐や立体物をつくって貼ったりと、想像以上なクリエイティビティを発揮する子どももいました。それぞれの好きな形が全部正解という経験、みんなと一緒につくったという経験、きっとそれぞれの国や世界の未来をもっと優しくしてくれるきっかけになってくれると思います。



7.Think our Earth (Recycle Crafts / Lemon Electricity & Generator)


リサイクル工作を通じて、地球環境を考えてもらうブースです。リサイクルペットボトルを使ったおもちゃを作ってもらったり、レモン電池の体験をしてもらいました。レモンで発電するキットを作る際、子どもに混じって、参加している現地の大人たちもとても好奇心をもって珍しそうに作って、遊んでいる姿がとても印象的でした。何かを知るというのは、人が持っている可能性や能力を広げていくんだろうな、と感じた瞬間でもありました。



8.Photo & Video Making Workshop (Teacher:Mr.Omar)


ビデオや写真の撮影講座を開きました。担当したのは、ヨルダン人映像クリエイターのオマールさん。彼自身もパレスチナ難民三世としてヨルダンで暮らしています。今回のプロジェクトを実施するにあたり、事前調査でヨルダンに訪れた際に街を案内してくれ、またプロジェクトの実施が可能になるため、影で支えてくれていました。彼なしでは今回のプロジェクトの開催は不可能でした。本当に感謝でいっぱいです。

オマールさんのanother life.:子どもたちに自分の可能性を気づいてほしい。自分が好きなことを追求する生き方。



9.Photo Session (another life. × WORLD FESTIVAL Inc.)


ポートレイト写真を撮影して、その場で名前を入れた「another life.風写真」が印刷できるブースです。大学生スタッフの協力の下、アラビア語で名前を入れました。自分の写真と名前が入った、いつでも持ち歩けるようなものは中々ないので、大人が子どもよりも興奮するほどの大盛況!みんなとっても嬉しそうでした。一人一人の人生を肯定できた気がして、運営側もとてもハッピーな気分になりました。

10.WORLD FESTIVAL Inc. Photo Gallery


WORLD FESTIVALがこれまで行ってきたプロジェクトや、撮影した映像から切り出した写真を展示するスペースです。写真を通じて、世界中の人の暮らしや生き方を知ってもらいました。いくつかの写真を日本から持参し、おそらく見たことがないかもしれない国の人や日常を切り取った生活、文化などに触れてもらうことで、異文化を知り、たった一度のことだけど、一人一人の人生にとって大きな財産になる、視野が広がる一つになれればと思っています。



11.Japanese culture experience (Calligraphy /Japanese harp Koto / Japanese chopstick game/Soran Bushi Dance)


日本文化を体験するスペースです。書道や琴、橋を使ったゲームを体験してもらいました。また、日本人スタッフによるソーラン節も披露しました。違う国、文化、宗教、肌の色、だけど、こういったアクティビティを通して、それを知り、触れて、お互いを受け入れあえるような機会になれればと思っています。日本だけを好きになったり、興味をもったりするのではなく、自分たちとは異なる人やものをこの先の人生でどれだけ受け入れることができるかで、社会の形は大きく変わっていくと信じています。



イベントは大盛況で、どこのブースにも子どもが殺到しました。予定では200名程度と聞いていた子どもたちも、当日は300名近く参加。また、先生たちも子どもと同じように各ブースで楽しんでいました。日本語も話せるヨルダン大学の学生ボランティアによって、何とか場を落ち着かせながら時間が過ぎていきました。最後のほうでは、大人も子どももみんなで輪になって、手拍子をして伝統の踊りを披露したりと、とても楽しそうで、笑顔で会場があふれていました。これこそまさにお祭りが作る楽しい心地よい空間。

その他の写真や子どもの制作物は、WORLD FESTIVAL GALLERYにてご覧いただけます。

世界とのつながりが可能性を拓く


子どもたちが熱心に取り組んでいる様子やで出来上がった作品を見ていると、その創造性に驚かされます。子どもの発想力はどの国の子どもでも変わらず高く、素晴らしいものだとあらためて実感しました。

一方で、難しい状況に置かれているということも事実です。子どもたちが願いを書いた短冊には「早くシリアに帰りたい」「イラクで平和に暮らしたい」という言葉や「希望が持てないからもう死にたい」という言葉もありました。私たちの目の前では笑顔の子どもたちも、それぞれ大変な想いをして暮らしていることが伺えました。

ヨルダンには複雑な背景を持つ子どもたちがたくさんいます。 彼らは教育や創造性を発揮する機会をあまり得ることができません。しかし、多様な価値観に触れて世界とのつながりが生まれることで、世界中で起きている紛争を含めた多くの問題が生まれない社会を、きっと子どもたちが大人になった時に作っていってくれると考えています。このイベントで生まれた多くのつながりが、子どもの生活の選択肢と可能性を広げ、たった一度の人生を豊かに、そして幸せに生きていけるために役立つことを願っています。



WORLD KIDS LAB FESTIVAL 2016 in Jordan
開催:WORLD FESTIVAL Inc.,JICA Jordan Office (JOCV - Japan Overseas Cooperation Volunteers),NGO East Amman Charity for Development (Makani Centre),UNICEF Jordan (Makani - “I am safe, I Learn, I connect”),dot life, ltd. (another life)
協力:ヨルダン大学日本語クラス生徒,マカニセンターの子どもたち
協賛: SWITCH SCIENCE, Inc.(Makey Makey Deluxe Kit)

2018.08.31

世界がつながる!CH

ライフストーリー

プロジェクトレポート