多様な人との出会いの中で、心は育まれていく。未来を担う若者に、特別な経験を提供したい。

フランス東部の教育施設のディレクターを務めるオリヴィエさん。子どもの頃から内向的でしたが、青少年のサポートを行うボランティア活動をきっかけに、自分の使命を見出します。オリヴィエさんが現在の活動に込める想いとは。お話を伺います。

Olivier croux

オリヴィエ・クルー|青少年研修センターディレクター
フランスの青少年研修センターでディレクターを務める。

内向的だった子ども時代


フランス北東部のメスという都市に生まれました。フランスでは多くの家庭が夏はバケーションに出かけると思われがちですが、私の家族はどこかに出かけて休暇を過ごすことはほとんどありませんでした。

私は子どもの頃からとてもシャイで、自分の意見や感情を表現することが苦手でした。当時は他の多くの子どもたちと同じく、消防士や警察官になることが夢でしたね。成長するにつれてものづくりがしたいと思うようになり、中学卒業後は工業高校で、電子工学を学びました。

将来のためにも、多様な人たちとつながりたいと考えていましたが、学校に通うだけではそういった出会いはありません。そこで、ボランティア活動を始めることにしました。Éclaireuses Éclaireurs de France (EEDF)という、野外活動を中心とするプログラムを通じて青少年の人格・市民性・適合性・リーダーシップを育成する団体に参加しました。

当時のフランスでは徴兵制度があったため、高校卒業後は兵役に就かないといけませんでした。ただ、その頃のフランスの兵役は過酷なものばかりではなく、事務職などの仕事もありました。私は銃を持ったり、戦闘に加わったりすることは嫌でしたし、軍の中に、私がボランティアをしていたEEDFに関わる仕事があり、組織運営に携わることになりました。

ボランティアで感じた使命感


青少年を取り巻く環境を整え、学びの機会を守り、人道的なサポートをするEEDFの活動は、私が大切にしている価値観そのものでした。ここでの活動に強い使命感を持っていました。

組織の活動を続けるうちに、内向的だった性格はオープンになっていきました。大切にしている価値を共有しながら、たくさんの人と触れ合っていくうちに、感情や意見を発したり、自分自身をよりうまく表現することができるようになっていました。

組織ではプロジェクトがどんどん立ち上がっていて、野外活動を実践する場所が必要でした。あるとき、フランス東部で、緑に囲まれた美しい宿泊施設を見つけました。もともとは貸しスペースとして、バケーションにきた旅行客が滞在するために利用されていた場所です。ここなら、キャンプや研修など、子どもから若者まで幅広くプログラムを提供できる。この施設を組織に組み込み、私にプログラムの開発を担当させてほしいと説得し、施設の専属スタッフとして働くことになりました。

施設での実践的なプログラム開発


施設で働き始めて最初のミッションは、毎週のアクティビティを作ること。そこで、施設に青少年が滞在し交流や様々なアクティビティを行う、バケーションプログラムを企画しました。

私のようにバケーションに出かける機会がなかった子も、ここでは仲間と思いっきり休暇を楽しむことができます。プログラムはとても好評でした。喜ぶ参加者の姿に達成感を感じて、とても嬉しかったですね。

その後、フランスのSecours Populaire Français(SPF)という、国や文化の枠組みをこえた支援活動を行う組織と国際交流キャンプを開催することになりました。ただ、情報の行き違いで施設のダブルブッキングが起こってしまい、この施設に子どもたちを宿泊させることができない状態でした。しかも、参加する子どもの情報が届いた時には、すでに子どもたちは船に乗ってこちらに向かっているところでした。

慌てて滞在先を手配して別の施設でキャンプを開催することになりました。国際キャンプのプロジェクト運営は本当に大変なことなんだと実感しましたが、それだけやりがいも大きなものでした。

その後は、EEDFの施設の専属スタッフとして、会計担当やソーシャルワーカー、企画運営のコーディネーターを経験した後、施設全体のディレクターになりました。

多様な人々が集う国際交流キャンプへ


学生時代にボランティアとして始めたEEDFの支援活動も、20年近くが経ちました。現在はEEDFに属する青少年研修センターのディレクターとしてフルタイムで働いています。

毎年たくさんの子どもや若者が、夏のバケーションを楽しみながら、社会で役立つスキルを学ぶための様々なプログラム開発し、提供しています。子どもたちには、サマーキャンプ、青年や若者たちにはインターンシップや、研修などを開催しています。

2016年には、この施設で初めてSPFの国際交流キャンプを開催することができました。貧困や飢餓、災害などで苦しむ子どもたち、発展途上国や先進国など様々な地域の子どもたちが参加しました。

世界中から様々なバックグラウンドを持つ子ども達が集まり、アクティビティに取り組む中で、お互いを大切に想う気持ちが育まれるのは素晴らしいことだと思います。SPFとのパートナーシップを大切に、今後も国際交流キャンプを開催したいですね。

フランス国内では、私が働く施設をモデルにした教育施設がいくつか作られました。私たちが大切にしている価値観や取り組みが、認められて広がっていくことがとても嬉しいですね。

最近では、他の施設からプログラム開発のアドバイスを求められることも多くなってきました。組織の他の支局や教育施設の人々と連携して、さらに大きな規模で交流プログラムを展開したいと考えています。さらに、いつかフランスの子どもたちを海外のキャンプにつれていきたいですね。

私は教育施設での活動を通じて様々な人と触れ合い、成長できたのだと思います。だからこそ、多様なバックグラウンドを持つ人々と出会い、つながることが人を成長させると信じています。子どもたちのプログラムでも、発展途上国の子どもたち、先進国の子供達が一緒に参加し交流することが大切だと考えています。

未来を担う子どもや若者に、特別な体験を提供すること。その先に、参加した子ども達が、ここでの経験や学びを生かして、やがては自分でアクションを起こし、社会で活躍してくれることを願っています。

2017.07.29

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