しかし、ある時、母が脳梗塞で倒れてしまい、入院することになりました。さらに、ショックを受けた父は、ひとりだと食欲が湧かないと、あまりご飯を食べなくなってしまいました。そこで、毎日晩ごはんを作りに行き、父と一緒に食べることにしました。

仕事もしながら父や母のサポートをする生活は目まぐるしく、あっという間に3ヶ月ほど過ぎました。次第に母は回復していき、退院して、ひとりで料理を作ったり、病院に通ったりできるほどになりました。

そのため、少し自分の時間を持てるようになりました。しかし、いざ何かをしようと思っても、いったい何をしたいのか、分からなくなってしまったんです。家族のサポート、人のことばかり考えているうちに、自分のことを考えられなくなってしまったんです。

それまでは、「時間ができたらあれをやろう」と浮かんできたのに、その興味も湧かなくて、「あれ?」という感じでした。時間があるのに、何もする気が起きない。気づけば、可もなく不可もなく淡々と一日が終わってしまい、心にポッカリと穴が空いたような感覚でした。

仕事でも、明確なビジョンがあるわけでもないし、年齢も30代中盤に差し掛かっている。「このままでいいのかな?」と漠然と感じるんです。

そこで、まずは何かしたいと思い、資格を取ることにしました。その中で、仕事でも活かせる、人間の心理に関わるものを学ぼうと思い、コーチングを学ぶことにました。患者さんとは、ちょっとしたすれ違いでお互いストレスを溜めてしまうこともあり、コミュニケーションや人の心に興味があったんです。

また、周りからコミュニケーション能力を評価されることも多くて、せっかくならその強みを伸ばしたいとも思っていました。普段誰にも話さないような大事なことを相談してもらうこともあり、「何で私に相談してくれるんだろう?」と不思議には思いつつも、せっかくならより役に立てるようになりたいと考えたんです。