10回転職した私が、「ゾクゾク」し続ける理由

国内外10社にて、インターネットの黎明期から多くの人の笑顔につながるプラットフォームづくりに携わって来た尾原さん。変化し続ける先に描く世界について、お話を伺いました。

尾原 和啓

おはら かずひろ|エンパワメント・プラットフォーム創り
楽天株式会社の執行役員として、チェックアウト事業の事業長、楽天市場事業を兼務している。

楽天市場
著書「ITビジネスの原理」

とにかく飽きっぽい性格でした


親子三代、医者という家庭で育ちました。周りの大人の背中を見て育ったこともあり、困った人を助けるということは、すごく身近にありましたね。ところが、近くで見ていたからこそ、医者にはなりたくないとも思っていました。とにかく飽きっぽい性格で、同じことを続けられないタイプなんですよね。意味のある仕事だと思う反面、毎日同じように診療を繰り返すのは自分に合わないなぁと感じたんです。

「ここにエキサイトはない」そんな感覚を持ったのを覚えています。

もっぱら関心を持っていたのは、人が価値だと思ってないことを見つけることでした。小学生の頃、空き瓶が幾らかで売れることを知ってから、周りの子供たちを集め、見つけて来た瓶の数を競わせ、一番の子に安いお菓子をあげるというゲームを作って、差額をもらっていました。いわゆるブローカーですね。見つけて来たものに自分で工夫とルールを加えて、鞘を取るようなことを繰り返していました。

大学生になる頃には、中古車販売や家庭教師の斡旋などで、学生ながら年収は数百万に上っていました。

多くの人を喜ばせるプラットフォーム創り


そんな学生生活を過ごしていた頃、ちょうど大学院一年の時に阪神淡路大震災が起きました。高校時代の友人と麻雀をしようと集まっていた明け方、強い揺れが来たんですよ。神戸の高校に通っていたこともあり、知人が大丈夫か確認するため、皆で現場に向かいました。

現場に行ってみると、地震の被害は大きく、やらなければいけないことはたくさんありました。最初はご遺体の処理作業や、バイクを使った物資の輸送作業を行っていたのですが、らちが明かないんですよ。

なんとかできないものかと家に帰ってTVを見てみると、ある避難所では、思ったより物が充実していたんです。なぜだろうと思い、もとをたどってみると、区役所に情報が集まっていることが分かりました。しかも、避難所各所の要望をビラで張って管理していたんです。効率は悪いし、情報がうまく伝達されていない。だったらみんなでなんとかしようと思い、区役所の横で、ボランティアグループのマネジメントをすることに決めました。

どこに人を送るかを決め、新しく作ったヒアリングシートを持たせ、各所の状況をもとにディレクションを行ったんです。途中からは、ボランティア保険なども整え、仕組みをきれいにしていきました。始めてから気付いたのですが、やっていることの大枠はこれまでと変わらないのに、周りの人がすごく喜んでくれるんですよね。

これはいい、と思いました。プラットフォームとして、過度に手をかけずに、多くの人を笑顔にできることに気付いたんです。自分が得意な頭の使い方で、レバレッジを効かせて多くの人を喜ばせることが出来る、大きな発見でした。

声高々に「やばい!」と謳うんです


その体験から、プラットフォーム創りのノウハウを学べる会社に入ろうと、マッキンゼーに入社しました。プロジェクトとして、iモードの立ち上げから、400万人程に立ち上がるまでの時期に携わる機会をもらい、貴重な経験をしました。

その後は「時代を創る」というビジョンに惹かれリクルートに入社したのを皮切りに、国内外の事業会社、ベンチャーを社長室や役員として渡り歩きました。どこも共通して持っていた軸は、エンパワメントにつながるプラットフォームという点でした。

人が気付いてない価値を見つけ、声高々に「やばい!」と謳うんです。それが段々現実になって来て、いつのまにかあたりまえに変わっていく。そんなものを見つけること、成り立たせていくことこそ自分の強みだと思いますし、そこに「ゾクゾク」した快感を覚えるんですよ。

逆に、その後は僕じゃなくても出来るじゃないですか?だからフィールドを変えていくんです。今の時代、変わらないものはないという前提のほうがいい。だからこそ、自分が社会に一番貢献できることを軸にしようと思うんです。

「物」ではなく「物語」を売っている


これから先3年間は、インターネットの副作用が起こると思うんです。中抜きと効率化というメリットを享受した反面、その弊害は確実にあると思います。アメリカで起きている、Amazonの普及による街の本屋の衰退などが良い例です。そういった側面が存在するからこそ、効率化だけでない「+α」の何かを創っていかなきゃいけないんです。

それを日本でやっているのが楽天だと思っています。転職を繰り返す中で、海外でも戦えるためにマッキンゼーやGoogleなど、外資系企業でも働きました。でも、途中で、なんで日本の凄さを海外に売り渡しているんだろうと感じてしまったんですよ。だからこそ、日本らしい企業で世界に通用する企業、ということで楽天を選びました。

インターネットショッピングも、中抜き・効率化だけじゃないんです。私たちは「物」を売っているんじゃなくて、「物語」を売っているんです。楽天のあの長い商品ページやレビューに書かれているのは、インターネットがあるからこそ広く伝えられる「物語」なんですよ。ただ安いかどうかだけじゃない、その「物語」にお金が払われているんです。

そういった「+α」を大きくしていくことに力を注いでいきたいですね。これからも変わらず、「やばい!」と思うものを見つけ、広めることで人を笑顔にしていこうと思っています。

2014.04.09

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