【イベントレポート・40代からのキャリア自分らしく描く#1】複業を通して「自分らしさ」や「天職」を見つけよう

100年あるともいわれる人生を、自ら描き、行動するにはどうしたらいいのか。そんな問いを、掲げ企画したワークショップ「『40代からのキャリア』自分らしく描く」。第1回目は6月18日に「地域と関わることは、複業の第一歩?」をテーマに行いました。

ゲストは、一般社団法人Work Design Lab代表理事で複業家の石川貴志さんと、IT企業×地域創生のパラレルキャリアを経験された藤井篤大さん。そしてモデレーターに株式会社INTO THE FABRIC代表取締役の高嶋大介さんをお招きしました。本イベントの様子をレポートします。

一歩外に出てみたらいつの間にか「複業」になっていた



高嶋:今回のテーマは「複業」です。石川さんが複業を始めたきっかけはなんでしたか?

石川:実はあまりハッピーな理由ではなくて。2011年頃会社で進めていた新規事業を凍結することになりました。取引先も動いていた矢先の出来事だったので、そこからはお詫び行脚の日々。でも時間的な余裕が少しできて、次の事業の種を探すことになりました。

じゃあ何をやろうかと考えたときに思いついたのが、以前から関心のあったソーシャルビジネス。妻がNPOに関わっていたので、その繋がりを起点にいろいろなNPOに顔を出すようになったのが始まりです。

振り返ると、時間のあるときや危機に直面したときは、変化のチャンスだと思いますね。

高嶋:本業とか複業とかよりも、まず自分が興味があったから一歩目を踏み出したという感じでしょうか。ちなみにソーシャルビジネスに目を向けたのはなぜですか?

石川:子どもが生まれたことが大きく影響していると思います。私は17歳のときに父親と生き別れているんですが、子どもを見ていると不思議と自分の親のことが思い出されて。今までは自分一人で生きてるような気がしていたけど、自分が生まれたとき父親もこんな気持ちだったのかなと、親・自分・子どもという時間の繋がりを感じたというか。そうすると自分の死後も続く子どもや孫が生きるだろう社会につながることにも関わりたいなと思ったんです。価値観が大きく変わりましたね。


石川 貴志さん|一般社団法人Work Design Lab代表理事/複業家
リクルートエージェント(現リクルート)の事業開発部門のマネージャーを経て現在、都内の大手事業会社にて勤務。2013年にWork Design Labを設立し「働き方をリデザインする」をテーマにした対話の場づくりや、イントレプレナーコミュニティの運営、また企業や行政等と連携したプロジェクトを複数手掛ける。2017年に経済産業省「兼業・副業を通じた創業・新事業創出事例集」選出。2018年にAERA「生きづらさを仕事に変えた社会起業家54人」選出。2020年には経済同友会の政策提言の中で「望ましい兼業・副業のあり方」として紹介される。総務省 地域力創造アドバイザー、中小機構 TIP*Sアンバサダー、関西大学 イノベーション人材育成プログラム メンターなども務める。1978年生まれ、三児の父。


高嶋:ありがとうございます。藤井さんにも、社外の活動をはじめたきっかけを伺ってもいいですか?

藤井:IT企業でプロジェクトマネジメントを任されていたんですが、20年くらい同じ環境にいたので新しい物事に出会う機会が減ってしまい、モヤモヤしていました。そんなときに職場近くで開催されている「青山ファーマーズマーケット」に行ったら、農家さんの楽しそうに働く姿が目に入ってきて。なんでそんなに楽しそうなのか教えてくれないかな、と思い始めたのがきっかけです。

そこから、マーケットで出会った農家さんの農場に行ってみたりどこかで農業を学べないかと調べてみたり。そんな日々を続けていたある日、有楽町の交通会館内にある「ふるさと回帰センター」で長野県の駒ヶ根市の農業研修を教えてもらったんです。すぐに申し込み、月に1度駒ケ根市で農業を学ぶことにしました。

農業研修を初めてしばらくすると、駒ケ根市の地域おこし協力隊に参加してみないかと誘われて。ちょうど関わっていたシステム開発プロジェクトも落ち着くタイミングでしたし、新しい知識や出会いを求めて、休職し、単身で駒ヶ根に移住しました。いろいろなタイミングが、偶然ぴったりと合った感じですね。


自らの意志で活動するから自分のことがよくわかる



高嶋:複数の場所で活動を始めて起きた変化はありますか?

藤井:自分が何をしたいか、自分がどんな人間なのか改めて気づけましたね。

東京でプロジェクトマネージャーをやっていたときは、とにかく真面目だったんです。でも、駒ケ根ではただ真面目にやっていても目立たないし、誰も一緒に何かやりたいと思ってくれないんですよね。だから駒ケ根のみんなの心をいかに掴むか、面白いと思ってもらえるかをとことん考えるようになりました。

そんな日々を過ごすうちに「ああ、自分は笑顔で仕事したいんだ」と気づいて。地域おこし協力隊の任期を終えて復職した後も、たとえば提案書にくすっと笑えるようなポイントを必ず入れてみるとか、仕事のスタンスが変わりましたね。ありたい姿に気づき、少しずつ個性として出せるようになったのは自分にとって良い変化でした。


藤井篤大さん|IT企業×地域創生のパラレルキャリアを経験
金融機関のシステム開発を約20年、直近10年はプロジェクトマネジャーとして従事。
2017年4月から長野県駒ヶ根市の初心者向け農業研修に参加。同年9月から、会社を休職し同市地域おこし協力隊に着任。駒ヶ根市の中心市街地を元気にする「こまがねテラスプロジェクト」のマネジメント部会に所属し、活性化を模索。2019年11月に任期を終え、12月に復職。復職後は社内で「地域創生プログラム」を立ち上げ、公私で駒ヶ根市との関わり、地域活性を模索中。


石川:まさに、自分のことがよくわかるのは複業のメリットだと思います。会社と違って、複業は誰にも指示されない、自分自身の意思が起点になる活動なんです。「これ石川さん、興味ありそうだから」と誘われた活動にふらっと参加して、「あ、これ意外と好きかも」と気づいたり。自分のことを知る手段としておすすめです。

あとは、複業をすることで、会社をやめてもお金が稼げるという感覚を身に着けるというのもよいと思います。

高嶋:というと?

石川:本業以外に働く場所の選択肢があるということ。別に今、複業でお金を稼げていなくてもいいんですよ。万が一会社から自分の意志とは反することを強要されたときに、「じゃあ辞めます、別のところでも働けるんで」と思えることが会社員にとって健全な状態だと思っています。

高嶋:なるほど。会社と対等な関係でいられる、会社に依存しなくなるというのは大切なことですね。


不確定要素に飛び込むことが世界を広げる



高嶋:では、キャリアを広げるためにどうしたらいいのか。はじめの一歩について、アドバイスをいただけますか?

石川:まずは、巻き込まれてみるのがおすすめです。自分が「この人いいな」と思う人からお誘いを受けたら、よくわからなくてもとりあえず行ってみてください。すると予想もしていない面白いことが生まれるので。私自身、巻き込まれ力を発揮することで、いろいろな機会が舞い込むのを実感しています。実は、巻き込む力より巻き込まれる力の方が重要なんじゃないかなと。

もう一つ、難しいかもしれませんが、不確定要素に飛び込んでみてほしいです。何も決まっていない、何が起こるかわからない、そんな環境に飛び込むんです。怖いし、不安かもしれませんが、そのぶん新しい可能性がたくさん舞い込みます。複業で挑戦して失敗しても、経済的に大きなダメージを受けることもないでしょう。まずは複業で飛び込む練習をして、本業での挑戦につなげるのがおすすめです。

高嶋:複業で不確定要素に飛び込む、いいですね。つづいて、藤井さんからもはじめの一歩、アドバイスいただけますか?

藤井:現実的なところですが、まずは貯金をするのがおすすめです。たとえば仕事を1か月休んで新しい活動に取り組みたい、と思ったときに貯金があると安心なので。

もう一つは、地域と関わりたいなら有楽町にある「NPO法人・ふるさと回帰支援センター」に相談に行ってみてほしいです。関心テーマやキーワードに合わせて地域選びの相談に乗ってくれたり、その土地のキーマンを紹介してくれたりします。

高嶋:キーマンを知っていれば、その地域にも飛び込みやすくなりますね。


高嶋大介さん|株式会社 INTO THE FABRIC 代表取締役 / けもの道クリエーター、100人カイギ founder / 見届け人
自律的に働く人が増える社会をつくりたいと考え、INTO THE FABRICを設立する。「けもの道をつくりながら企業の可能性を探す」ことを得意とし、組織/戦略デザイン、コミュニティデザイン、イベント/マーケティングを行う。ゆるいつながりがこれからの社会を変えると信じ「100人カイギ」をはじめ、広義な人をつなぐ場をつくる活動を行う。サウナと散歩好き。




複業を通して自分の「天職」と出会える?



高嶋:ここからは参加者のみなさんからの質問に答えていきたいと思います。まずは「オンラインでの一歩の踏み出し方、地域との関わり方を教えてください」という質問から。

藤井:最近はセミナーのほとんどがオンラインで参加できるので、気になる地域のセミナーに手当たり次第に参加してみてはどうでしょうか。もしそのなかで「この地域、面白そうだな」と思うものがあれば、現地に行ってみるといいんじゃないかなと思います。

石川:Work Design Labではさまざまな地域とプロジェクトを行っているんですが、最近はオンラインでの打ち合わせがほとんど。それを活かして最近始めたのが「学習者枠」です。学生や社会人が会議に同席して、プロジェクトの進め方や複業ワーカーの動きなどを学べるようにしました。そんなふうに、オンラインで気軽にオブザーバーとして参加し、複業を学び、だんだんと実践に移っていくのもありかなと思います。


Work Design Labが考えるプロジェクトの構成メンバーについて資料を用いて説明をしてくれた。一番右が「学習者枠」。

高嶋:オンラインだと参加のハードルが下がりますよね。では、つづいて石川さんに「複業するにあたり、持っていた方がいい知識・資格はありますか」という質問です。

石川:知識や資格ではないですが、相手に信頼感を与える肩書があるといいですね。個人の名前で複業を始めるとわかるのですが、最初から信用してもらえることってなかなかないんですね。だから、自分の信頼性を担保してくれる肩書を持っておく必要があります。

私でいうと「広島県の創業サポーター」「総務省のアドバイザー」「関西大学 イノベーションプログラムのメンター」など。省庁や地方自治体、大学関連の肩書は信頼性を担保してくれるなと感じています。

高嶋:会社の看板がないですからね、個人の場合。ちなみに私は複業するのに知識や資格は必須ではないと思っています。私自身複業で会社を立ち上げましたが、経営したことなんてありませんでした。新しいことに挑戦する複業もあるんだよとお伝えしたいですね。

では、最後にお二人から「60歳以降も長く続けられる、天職と出会う方法」についてお聞かせいただけますか?

藤井:天職かは置いておいて、教える仕事は60歳を過ぎてもできるのかなと思っています。だから人に教えられるまで何か一つを極められるといいですね。あとは農業。私が農業をやっていたとき周りにいたのは全員70歳〜80歳代でしたし、40代なんて若手ですよ。身体が元気でさえあれば、長く続けられると思います。

石川:質問を聞いて感じたのは、そもそも天職ってなんなのかと。私の中では「やっていて楽しくて、疲れない活動」「ゴールがなくても、モチベーションが下がらない活動」だと思っています。そんな自分にとっての「遊びみたいな活動」が何かをまずは考えてみてほしいです。

加えて、時を経ても変わらない「天職」があるのではなく、その時々によって自分にあった仕事があると思うんです。20代のときに好きになる人と、40代になって好きになる人が変わるように、人は常に変化し続けているわけです。だから、積極的に不確定要素に飛び込み、環境を変えて、新しい気づきや学びを得る。そうすると、自分にぴったりな「天職」と出会い続けられるのかなと思います。

高嶋:一つの天職を勤め上げる以外に、細かく楽しい仕事を複数並行でやる「点職」という考え方もあるようですね。まだ聞き足りない気もしますが、話が尽きないので、この辺で終わりたいと思います。石川さん、藤井さんありがとうございました。

2021.07.06