「写真嫌い」を減らしたい!
内定辞退から歩み始めた、カメラマンへの道。
音楽のアーティストや子どもの撮影を中心としたフリーランスのカメラマンの浅野さん。大学後半まで写真など撮ったことがなかったのにも関わらず、現在カメラマンとして活躍されている背景には、人との関わりの中で見いだした「自分らしさ」がありました。
浅野 里美
あさの さとみ|カメラマン
フリーランスのカメラマンとして、アーティストや子どもの撮影を中心に活動。
オフィシャルサイト
自分を変えなければいけない
小さい頃から大人しく、よく人見知りをする子どもでした。長女で、親の期待も感じており、「お利口にしていなければ」という気持ちがあったんです。なんだか、飛び抜けたことはしちゃいけないと思っていましたね。
何かやりたいと言うごとに親に反対され、高校生になると毎日のように喧嘩をしました。でも、ただの反抗期だと流されてしまう節もあり、「相手を変えたいなら、自分を変えなければいけないな」とぼんやり考えるようになりました。
高校3年生になっても、明確にやりたいことはありませんでした。でも、コンプレックスである人見知りを直したいなという気持ちがあったし、実家の圏内から出て、自分の世界をもっと広げたいと思ったんです。
幸いにも、高校の成績がよく、推薦がもらえたので、悩んだ結果、都内の私大から新規募集があった、環境関係の学部で勉強をすることに決めました。その学部には夜間があり、社会人の生徒もいて、色々な人と出会えるんじゃないかと思ったんです。
いざ大学に入学してみると、思った以上に色々な人と触れ合うことができました。親と過ごす時間が減って喧嘩も減って、性格も以前よりおおらかになっていきました。
大学生活は友達に誘われて入ったバンドのサークルが中心でした。ギターやヴォーカル、キーボードを務め、文化祭やイベントでは、実際に舞台に立つ経験もでき、楽しかったですね。
内定、違和感、自分らしく働くとは
就職活動の時期になり、改めて自分は何がしたいんだろう?と考えると、「人に対して何かを選んだり、見つけてあげること」が自分の中でしっくり来たんです。
男女ともによく相談をうけるようなタイプでしたし、普段から買い物に行っても、「あの子にこれを買ってあげたい」と考えるようなタイプでした。自分のことよりも、人のことの方がよく分かっているんじゃないかとすら思いましたね。
そんな経緯から会社を受けていく中でいくつか内定をいただき、最終的には不動産系の会社に就職することに決めました。入社前に必要な宅建の資格も取り、内定者期間のバイトにも携わるようになりました。
ところが、バイトで内定先の企業に携わるうちに、雰囲気に違和感を持つようになりました。面接で感じたものと、実際に働いて感じたものが違ったんです。
そんなモヤモヤを抱えた私は、卒業を控えた年末、内定を辞退することに決めました。次の選択肢が決まっている訳でもなかったのですが、違うんじゃないかという感覚を持ったまま居続けることはできなかったんです。
一度、ゼロに戻って、自分らしく働くにはどうしたらいいだろうと考え始めました。
他人をプロデュースする「写真」
内定辞退をした頃、Canonで働いていた叔父にコンパクトデジカメをもらいました。当時はデジカメがすごく流行っていたので、嬉しくてたくさん撮っていましたね。
ちょうどバンドサークルのステージもあったので、舞台に出る仲間の写真を撮ってあげたんです。たまたま写真嫌いの友人だったので、最初は「恥ずかしいからいいよ」と言っていたのが、撮った写真を見せたら、「これすごくいいよ!」とか「ホームページに使いたい!」と言ってくれたんです。
「写真てこんなに人に喜ばれるものなんだ」と感じたと同時に、写真を撮る前後の変化に驚き、もしかしたら誰かが成長したり、輝いたりする手助けになる手段なんじゃないかと感じたんです。
「もしかしたら、これを仕事にしたら面白いんじゃないかな」そんな風に感じたんです。他人をプロデュースする手段としてのカメラマンは、自分らしく働ける仕事に思えたんですよ。
とはいえ、突然の決断だったこともあり、周りは驚き、親はもちろん反対でした。専門学校に入り直す選択肢も考えたのですが、経済的な部分も考え、写真屋さんで働きながら学ぶことに決めました。いきなりカメラマンになるのは無理でも、業界のことから勉強していこうと考えたんです。
自分らしい写真
それからは、写真屋さんの営業で色々な現場に触れながら、プライベートでは音楽関係を中心に、とにかく暇さえあれば写真を撮りました。ちょっとしたコンテストで優勝して、少しずつ自信もついていきましたね。
その後、フリーペーパーのカメラマンとして、本格的に仕事を始め、交通費の謝礼から少しずつお金をもらえるようになっていきました。1円でももらえるのはすごく嬉しかったものの、これで食べていけるかという不安は常に抱えていました。
そして、色々な写真を撮るうちに、自分は何を撮りたいんだろう?と考えるようになったんです。「自分らしい写真」とはなんだろう、と。
そんな自問を繰り返した結果辿り着いたのは、やっぱり人でした。
ずっと撮り続けた音楽のライブで、あるときから私が撮った写真はすぐ分かる、と言ってもらえるようになったんです。私に撮ってもらうことを喜んでくれる人ができたんですよ。
作品として捉える「写真家」と違い、相手がどう撮ってほしいかを考える「カメラマン」は、被写体との関係性ができていくに連れて写真が全然変わります。
写真を通して人の成長や輝きに貢献したいと考えていた私にとって、自分らしい写真は、そんな「人の写真」でした。
そんな決心ができたこともあり、私はフリーランスとして独立することに決めました。不安が無かったと言えば嘘になりますが、自分のやりたいことのための決断でした。
この人に撮ってもらったら一生の宝物になる
フリーランスとして独立したものの、やはり一番やりたいと思っていた音楽の仕事だけでは、食べていけないような状態でした。ただ、写真以外のバイト等はしたくないと思い悩んでいたところ、子どもを撮る仕事に辿り着きました。
もともと保育士を目指そうか考えるほど子どもが好きだったのですが、東日本大震災のボランティアでイベントの写真を撮る機会があり、カメラマンとして子どもと関わるうちに、どんどんいいな思うようになっていったんです。いくつか安定的に仕事をもらえる契約も見つかり、少しずつ不安は無くなっていきました。
最近は周囲で結婚する友人も多いため、結婚式にカメラマンとして携わらせてもらうことも増えました。知り合いの結婚式にただ出席するだけでなく、人生の節目に関わることができるのは、カメラマンをやっていてよかったなと感じる瞬間ですね。
将来は、アーティストだけでなく一般の人にとっても、「この人に撮ってもらったら一生の宝物になる」というようなカメラマンになりたいです。
自分のこと嫌いだな、とか写真が嫌いだなという人が少しでも減って、自分らしさに気付いていく手伝いができたらと思うんですよね。
2014.05.22
浅野 里美
あさの さとみ|カメラマン
フリーランスのカメラマンとして、アーティストや子どもの撮影を中心に活動。
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