やりたいことを追いかけて、社会貢献を。
起業に踏み出した、私の生き方。

心理学に関心を持ち、昔から人の行動に興味があった、という山浦さん。大学で起業に対する憧れを持つようになった彼女が、25歳で起業する時に選んだビジネスとは?お話を伺いました。

山浦 真由子

やまうら まゆこ|画像解析を通じたソーシャルリスニング
Brand Pitにて共同代表を務める。

人間の心理に対する興味


山梨県甲府市で生まれ、高校までずっと甲府で育ちました。甲府は、山に周りを囲まれた盆地で、自然が多くて良いところでした。小学生の時に、交換留学生が来たことがあり、その頃から海外に対する興味を持ち始めました。留学生は日本語を話せる人だったので、英語でコミュニケーションをとるという訳ではなかったのですが、甲府は外国人の方と出会うこと自体が珍しいという環境だったので、貴重な経験でしたね。

中学ではバスケ部、高校は吹奏楽部に所属しました。『スラムダンク』が好きだった兄の影響で中学ではバスケ部に入り、高校では、運動ではなく音楽がやりたくなって、吹奏楽部に入りました。学校以外の市や県の吹奏楽団にも入っていました。

勉強は、数学と生物が得意でしたね。数学は、問題を解く中で、シンプルできれいな式を導きだすことが好きでした。生物を好きになったのは、体や心に興味があったからですね。人間観察など、人の心理を分析することに興味を持っていました。

一人暮らしをしたくて、山梨県外の大学を受験し、横浜市立大学に進学しました。田舎で育ち、東京や横浜という都会に対する憧れがあったことも、横浜の大学を受験した理由の一つでしたね。いざ入学してみると、横浜の中でも市街地から離れた場所に大学があり、周りはタヌキが出る様な自然いっぱいの環境でしたけど(笑)。一人暮らしで自由を満喫し、友人に恵まれて楽しい大学生活でした。

起業への憧れ


小学校の頃から抱いていた海外への興味から、大学2年の時に留学することにしました。リーマンショック後の円高で、日本から留学しやすい環境でもありましたね。大学の英語の先生から薦められ、西海岸のオレゴン州ポートランドに留学。1年間の留学の予定でしたが、外部の企業のコンサルをする授業があるなど、よりビジネスに近い実践的な内容を学べる環境だったので、そのまま編入することにしました。ポートランドは木が多くて自然がいっぱいで、甲府に通じるところもあり、いい環境でしたね。

専攻はマーケティングでした。消費者心理を分析する学問という点で人の心理を研究できることが、専攻した理由の一つですね。

大学では、他の国から来た学生との文化や習慣の違いに、随分戸惑いました。授業で出される課題にグループで取り組むのですが、期日までに割り振ったタスクを終わらせてくれないメンバーがいたり、他のメンバーに何も伝えずに授業を辞めるメンバーがいたり。日本じゃ考えられませんよね。大変でしたが、サバイバルの感覚が身につきました(笑)。

大学に入るまでは、起業という生き方を考えたことはありませんでした。友人に誘われてスタートアップ関連のイベントに行くことがあり、起業家のアクティブで情熱的な生き方を知りました。ゼロから作り出すっていいな、やりがいもあって面白そうだ、と感じました。いつかは自分でやりたい。そう思っていました。

大学卒業後は、就職を選びました。アイディアとスキルとお金がなければ、起業できない。一度社会に出て、働いてお金を貯めてスキルを身につけてからにしよう。そんな考えからです。日本には帰らず、ポートランドの会社に就職しました。

就職先は20名あまりの小さなIT系の会社でした。フロントエンドのエンジニアをやりつつ、消費財のマーケティングとしてのソーシャルリスニングを担当。ソーシャルリスニングでは、リスニングの対象とするコミュニティの選択が重要で、的確にコミュニティを選択する為にはユーザーの行動心理を知らなければいけません。心理学的なアプローチが役に立ちましたね。

自由な雰囲気で素晴らしい環境の会社でしたが、1年弱働いて辞めました。起業したいという気持ちが強くなったことに加えて、一度日本で働いておきたいという考えからですね。

海外にいると日本が好きになるもので、その頃には日本でもビジネスがしたいと思うようになっていました。日本を離れてアメリカで5年ほど過ごした時期で、これ以上アメリカにいると日本のビジネススタイルに順応できないかもしれない、そう感じました。会社を辞めて日本に戻り、日本にオフィスを構える外資系のリサーチ会社に就職しました。

パートナーとの出会い


リサーチ会社での仕事は、面白かったですね。経験豊かなメンバーと一緒に働くことができて、環境としても素晴らしいものでした。

ただ、「アイディアさえあれば起業したいな」と考えていたので、ずっと心の中にもやもやがありましたね。いい環境だけに、この会社で長く働くうちに、会社に染まってしまうかもしれない。長くいればいるほど責任ある仕事を任されることになり、辞めづらくなってしまう。もしこの仕事を長く続けることになったとしたら、続けた先に何があるのだろうか。もやもやしていました。必ずしも面白いものでなくともいいから、やりがいのあることをやりたい。リサーチ会社で働き始めてから、そう思うようになりました。

そんな時、日本に帰国した直後に出会った友人から、画像解析を基にしたソーシャルリスニングのビジネスのアイディアを聞き、これだ!と瞬間的に感じました。

アメリカでソーシャルリスニングの仕事をしていた時、担当の商品が写った画像がSNSにアップされているのを見て、テキストでは捕捉できないものだったので、歯がゆく思ったことがありました。「テキストだけでユーザーの行動を解析するのには限界がある、次は画像解析だ」と感じていました。その時は、画像解析そのものができるかどうかも分からず、そのままになっていたんですよね。

少しお金も貯めてからと、それまでは考えていましたが、今しかない、そう感じました。この機会を逃したら他の人がやってしまう、という感覚もありました。

アイディアを語ってくれた彼とは、プロジェクトを一緒にやったり、その前から接点がありました。踏み出すかどうか、最後のところで少し迷いましたが、「もし自分が本当にやりたいことをしていないのであれば、他の人がやりたいことのために自分の時間を消費していることになる。人生一回しかないのに、他人のやりたいことのために時間を使うのはもったいない。」という彼の一言に背中を押され、2人でサービスを立ち上げることに決めました。

自分のやりたいことが社会貢献につながる


現在は、2013年の夏に設立された、Brand Pitと名づけた会社で、私は共同代表をしています。サービスの開発に時間がかかりましたが、2014年11月にβ版をローンチしました。

サービスの内容は、画像解析を基にした市場分析ですね。ソーシャルメディアに投稿された画像を解析して、いつ、誰が、どこで、製品を消費しているのかを分析して、広告会社や製品のメーカー向けに、分析結果の提供や分析を基にした提案を行なっています。

テキストを基にした既存のソーシャルリスニングでは、ハッシュタグやキーワードといったテキストしか分析できず、ニックネームやミスタイプによっては捕捉しきれない、といった問題があります。

画像分析では、そういった問題をクリアでき、また商品と一緒に写っているユーザーのデモグラフィックや、どういった時間・場所で使われているかというシチュエーションも解析できます。室内か屋外か、室内であればオフィスかバーか家か、という所まで分かるんです。使用シーンを解析することで、使用シーンに適したマーケティング戦略を打つことができます。

サービスローンチ後、チームのメンバーも増え、少人数ながらもそれなりの規模で運営しています。香港に開発チームがいて、1月から新たにパリにオフィスを開設する予定です。

国内外の多くの広告会社から興味を持っていただいていますし、アジアではまだ同じサービスを提供する会社はありません。今年の3月には、SXSW (サウス・バイ・サウスウエスト)という、アメリカのクリエイティブのメッカのような展示会で出展し、ピッチをする予定で、世界的にも認知度をさせて、顧客開拓をしていけたらと思っています。

独自のサービスで価値を提供できているのでは、と思います。起業したことによって、自分のやりたいことをやることが社会貢献につながる、ということを実感しています。

とはいえ、新しい分析手法なので、興味を持って頂いたお客さまに画像分析の結果をどういう形で最大限活用していただくか、お客さまの従来のKPIにどういう形で組み込むか、という難しさはあります。まだまだこれからですが、チャレンジですね。

2016.01.22

山浦 真由子

やまうら まゆこ|画像解析を通じたソーシャルリスニング
Brand Pitにて共同代表を務める。

記事一覧を見る