大人になってからでも変わることはできる。
「美しく生きる」人がたくさんいる世界へ。
自信形成という新しい切り口で、女性のキャリア支援を行っている池原さん。「一人ひとりがいる意味はある、特別なことやすごいことじゃなくていい」と語り、決意をしようとする人の気持ちを一緒に整理し、寄り添う活動を行う背景にある思いとは?
池原 真佐子
いけはら まさこ|女性のキャリア・ライフサポート
自信形成という新しい人材開発の分野を開拓し、女性に寄り添う株式会社MANABICIAの代表取締役を務める。
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小学校時代に経験した他人と違うこと、みんな違うこと
私は、福岡県に生まれました。小中高は地元にあった私立校に通っていたのですが、キリスト教系の学校だったこともあり、ストイックな校風の中で思春期を送りました。
小学校から早速勉強につまずき落ちこぼれて、父に「全く授業が分からない」と泣きついたり、外見が外国人っぽいという理由から周囲にからかわれたり、小さい時にかなりの挫折を経験しました。外見なんて変えることは出来ないのに、異なるものに対して排除しようとする集団の論理に出会ったことは自分にとって大きなショックでした。
しかしそんな時でも、小学校の頃から学校外のコミュティに所属していたことは自分にとって大きな意味を持っていました。バレーボールチームや子供会、ボランティアや習い事、色々なコミュニティに所属していたからこそ、様々な人がいることに気付くことができました。外国人の方もいれば、自分とは異なった家庭環境を持っている人もいて、異文化交流に興味を持つようになりました。
また、両親が教育者だったこともあり、小さい頃から漠然と自分は教師になるのだろうなと思っていました。ただ、厳しいルールの中で思春期を送った経験から学校教育・詰め込み教育はあまり好きではないという感覚がありました。そんな時、母が「生涯教育」について教えてくれたんです。大人になってからも学ぶということに対してとても興味がわきました。その後、大学では関心を持っていた生涯教育を学ぶために、早稲田大学の教育学部に進学しました。
逆算せず、目の前のものに向き合った大学生活
大学に進学してからは、日本の地域の移民や外国人の教育支援をしているNPOのボランティアに関るようになりました。身近にある支援団体が具体的にどんなことをしているのか、自分自身も体験しつつ学ぶ日々でした。
その中でも、印象的だったことは夜間中学にいるお年寄の学ぶ姿でした。戦時中に学ぶことができなかった人々にとって、大人になって学ぶことは幸せで、漢字などを学び知ることを喜んでいる姿に感銘を受けました。
また、多文化政策にも関心を持つようになり、教授にオーストラリアに留学したらどうかと勧められ3年生の時に留学することに決めました。 多文化主義のオーストラリアでは、肌の色や人種の違う人が当たり前のように一緒に暮しており、私にとっては大きな衝撃となりました。国外に出てみて初めて自分の小ささに気付けましたね。
帰国してからは、もっと自分の興味あることをはっきりさせたいという気持ちが強くなり、そのまま早稲田大学の大学院に進学することに決めました。そして、多文化社会のオーストラリアを対象に、大人の移民がどうしたら地域に溶け込めるか、どのような教育サポートと文化交流事業が必要かについて研究をする日々を送りました。
そんな中、国際交流の機関に直談判し、広報のインターンシップする機会をいただきました。NPOについて研究している時から、良いことしていても外部に発信せず、自己満足になってしまっている団体を見てもったいないと感じていたんです。そのインターンシップをきっかけに、やっている取り組みを外部にどう広報するのかに一層興味を持つようになっていきました。
そのため、就職活動では広報に絞って企業を見て回り、PR会社への入社を決めました。入社後は、業界業種問わず幅広く企業広報の仕事をしました。いいものでも伝え方次第で印象が変わってしまうため、物事のいい面を見出して、時代に合わせて切り取るかと考えることはとても楽しかったです。全員女性のチームで、素敵な方にたくさん出会えたことも面白かったですね。
少しずつ関心が移っていく中で見つけたもの
その後、たまたま出ていた国際交流、教育関連のNPOの求人に運命を感じて、転職を決めました。周囲には猛反対されたものの、もう一度国際交流や教育の現場に行ってみたいという思いがあったんです。
実際に転職してからは、国内外に異文化教育のプロモーションを行う仕事をするようになりました。日本人に海外の文化を伝えたり、海外の人に日本文化を伝えたり。広報と教育両方ができる職場でしたね。情熱がある方がたくさんいる環境でした。
ただ、一方で、もう少し社内教育を充実できればより新しい視点が学べるのにと思うこともありました。そこから従業員教育や人材育成に関心が向いていくようになりました。これこそまさに、私が学んできた生涯教育の分野でもありましたから。
「もっと視野を広げていきたい」という気持ちから、人材育成を行う会社を探していると、人材育成の専門職を募集していたコンサル会社を見つけ転職を決めました。2度目の転職にためらいはありませんでしたね。大企業だと色んな部署を移動したり転勤したりすることで自分のスキルをアップさせますが、組織がそんなに大きくないとそのチャンスはありません。なので、転職とは自分にとって部署を移動する感覚でした。
働き始めてからの日々は、すごく楽しかったです。国内や海外のコンサルタントの育成プログラムに携わる中で、社内でもトップクラスのコンサルタントと仕事をする機会にも恵まれ、そういった人の人間性や魅力に触れることができ、非常に充実していました。
また、働くうちに、もっと人材育成やリーダーシップについて極めたいと考えるようになっていきました。そこで、勉強できる環境を探してみると、INSEAD(インシアード)を見つけたんです。フランス、シンガポール、アブダビに校舎があって世界中から多様な人が集まる場所でした。もともと MBA(経営学修士)で有名な学校ですが、それ以外に、組織心理学やコーチング、リーダーシップについて学べるパートタイムの修士コースがあったので、コンサル会社で働く傍らシンガポールへ通うことに決めました。
魅力的な人々に出会い気づいたこと
私が入学したコースは、全36人中日本人は2人だけで、世界中から優秀な方が集まっていました。しかも頭がいいだけでなく人格も素晴らしい。思い遣り深く魅力的な方がたくさんいました。
ただ、仕事と家庭とインシアードの並立は大変で、仕事が終わってから自宅で家族の食事を作り置きし、そこから羽田へ。飛行機で睡眠をとって早朝にシンガポールへ到着、そこから数日間の集中授業を受けた後、またシンガポールから羽田空港、そしてそのままオフィスへ直行、という生活が続きました。日本にいる時は課題をしたり、電話でグループミーティングに参加したりと、土日遊ぶことはほとんどありませんでした。
インシアードには思慮深い人魅力的な女性もたくさんいました。女性として抱えている問題にそんなに大差はないのに、決定的に自信の有無が違うように感じられました。そして、彼女たちは自分を内省していてその気持ちをきちんと他人に伝えること、人の心をつかむこと、また相手の気持ちを見ることがうまいのだと気づいたのです。
また、本コースを通して徹底的に自分と向き合うことで、自分の人生はどうあるべきか考えるようになりました。そして、一度きりの人生、自分が思い描いた理想の世界や社会を実現するためにはどうすればよいのかと考えた時、インシアードにいる魅力的な女性たちのことが思い浮かびました。
私自身あまり自分に自信がありませんでした。また、私に限らず、多くの日本女性は自信を失いがちではないかと思うようになり、それに対して何かできないか模索し始めました。そこで、自分にできることを考えた時、私は女性の自信形成という意識の面をサポートすることにしました。女性が活躍するためには、制度の拡充や法の整備も大切ですが、女性の自信形成も同じ位重要です。それなのに、日本には気持ちの面でのサポートがあまりないと感じていました。もっと社会に貢献できる方法を考えた結果、会社内では実現させることが難しいと思い、起業をすることに決めました。
「美しく生きるため」に伴走する
起業してからは、社会人が抱える「変わりたい」「自信を持って進みたい」という気持ちの後押しするような仕事をしたいと考え、インシアード時代に学んだ理論と実践経験をもとに、何か新しいことに向かうために心を整え、自信を付けていく「メンタルレディネス(心理的準備)」というサービスを始めました。
サービスを始めてからは気づいたのは、個人クライアントのほとんどが女性だということでした。そこで、インシアードで見つけた自分の課題としての「女性の自信」というテーマも重なり、それからは女性をターゲットとするようになっていきました。現在は、気持ちの整理を個人でサポートするだけでなく、法人に対して、女性社員のサポート、企業向けのトレーニングなども行い、会社の中で自己実現できることを一緒に探すサービスをしています。また、より多くの女性がもっと自分に自信を持って進んでいけるように、コミュニティを形成しながら相互支援していけるような、新しいサービスも現在準備しています。
私が大事にしていることは「美しく生きる」ということです。美しく生きるとは、何もドラマチックな、すごい人生を生きることではなく、一人一人が自分の決断に納得しながら前に進むことだと思っています。そのためには、自分の選択、行動に対して自信を持つことが欠かせません。実は、多くの人が無意識に人の基準で行動している部分を持っているんです。私は、様々な方法を使いながら、クライアントの気持ちを明確にして、自分の望みは何なのか、自分の生きたい方向はなんなのかを確認していく手助けします。それによって、クライアントは、自信を持って自分自身で決断を下すことができるのです。
仕事をしていく中で、男性から「女性は仕事よりも子供を産んで育児に専念すべきだ」「女性は自信が無い位が可愛げがある」等のお声をいただくこともあります。様々な考え方がありますが、私は、男性も、女性も、両者が自分に自信を持ち、両者の声を平等に反映できるような新しい社会を創っていきたいと思います。女性は謙虚であれ、大人しくあれ、自己主張すべきでない、という暗黙のメッセージが強い社会の中で、経験も才能もあるのに、徐々に無気力になってしまっている女性も多いと思います。そういった人たちが心折れてしまわぬように、私にできることがあればいいと思っています。
女性の活用、と叫ばれている現在、自信を持って人生を切り拓いていけるために、そしてより多くの人が「美しい生き方」を送れるために、私が出来ることを全てやりつくし、社会に貢献していきたいと思っています。
インタビュー:高瀬 杏
2015.11.24
池原 真佐子
いけはら まさこ|女性のキャリア・ライフサポート
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編集部の伊藤です。秋は悩みの多い季節と言われます。例えば、ファッション。先週真夏日があったと思ったら、今週は台風到来と秋は天気が激しく変わるので、何を着るか悩みますよね。でも、そこで無難なファッションを選ぶと気分が上がらない。ファッションが心理状態に与える影響の大きさは様々な研究が示していますが、実はanother life.にもその実例があるんです。今回は、ファッションをきっかけに自分に自信がついた3名のストーリーをご紹介します。ぜひご覧ください。
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