まだ、世の中に無い体験を生み出したい。
弁理士・連続起業家の両輪で作る未来。
弁理士としてスタートアップ企業の知財を軸とした事業戦略の構築に携わる傍ら、自身でも、オンラインでマッサージやネイル等の美容・健康のプロを呼べるサービスを運営する渡邉さん。新卒で弁理士としてキャリアをスタートし、メーカーの法務・コンサルを経て28歳で独立。弁理士という特徴を生かしながら、新たな事業に連続して取り組む背景とは?
渡邉 大介
わたなべ だいすけ|弁理士・連続起業家
オンラインでマッサージや、ネイル、ヘアメイクなどの美容・健康のプロを出張で呼べるサービス、careL(ケアエル)を運営する株式会社MOSO mafiaの代表取締役を勤める傍ら、アイザック国際特許商標事務所にて所長 弁理士としても活動する。
2年の休学で自らの進路を摸索、卒業後は弁理士に
私は大阪府堺市に生まれました。小さい頃から本を読むのが好きで、中学・高校と進学してからは哲学や心理学の本を好んで読むようになりました。概念をしっかりとした言葉にして操作するのが非常に面白く、人の心の構造に関心があったこともあり、将来はカウンセラーになろうかと考えるようになりました。
そんな背景もあり、ユング心理学を学ぼうと大学からは教育学部に進学しました。実際に入学してからは、認知心理や臨床心理について勉強を始め、自閉症の子どものデイケアのサークル等にも所属しました。
しかし、正直、途中から人に対しての関心を失ってしまった面がありました。周りで学生ベンチャーを筆頭に何か社会に働きかける人が多く、どちらかというと社会に関心を持つようになったんです。お金儲けというよりは、何か社会にインパクトを与えたいという気持ちが大きくありました。
そこで、大学3年生からはより大きなことがしたいという思いから、自らイベント等を運営するようになっていきました。周りでは就職活動を始める人もいるものの、あまり気乗りがしませんでしたね。親が自営業ということもあり、あまりサラリーマンとして働くイメージが持てずにいました。ぼんやりとですが、何か自分でビジネスをしたいと考えていたんです。
そんな背景もあり、自ら関心があったアート系のイベント等を行ったり、大阪の元遊園地の空きテナントを活用したアート系NPOの運営に携わったり、行政の仕事を個人で請け負ったりするようになっていきました。元々、現代アートへの関心が強く、世の中の変革手段としてのアートに面白さを感じていたので、それを仕事にできることは楽しかったですね。結局、大学4年生になってからもしばらく仕事をしてみようと思い、休学をすることに決めました。
それからは、アートの分野の受託仕事で文化行政系の企画を行いつつ、学生ベンチャーの立ち上げも手伝うようになりました。しかし、実際に仕事をする中で、新卒の給与水準ではお金をもらえていたものの、この分野にはお金が回りにくいなという思いもありましたね。
そんな中、プログラミングの勉強をしていく中で本を読むうちに、次第に知的財産権の分野に関心を抱くようになっていきました。知財は世の中のシステムであるからこそ、それを変えられるとインパクトが大きいなと感じたんです。他の活動に並行して弁理士の勉強も始めていきました。
その後、2年間の休学の後、私は弁理士の資格を取り、新卒で特許事務所に勤めることに決めました。アートやベンチャーも選択肢にありつつ、知財への関心が一番強くあったんです。中々新卒で弁理士というキャリアは少ないのですが、色々探した結果、岐阜県にある事務所で働くことに決めました。
転職を重ね独立するも、試行錯誤が続く
弁理士として働き始めてからは、大手自動車メーカーをクライアントに年間数百件の特許の処理を行いました。しかし、業務は作業ベースで広がりを感じられず、2年程働くうちに退屈に感じるようになっていきました。もっと全体観を掴みたいという思いもあり、クライアント側の立場で、知財に力を入れて戦略の部分まで携わるような働き方ができないかと考えるようになったんです。
そこで、2年働いた後、大手消費財メーカーの法務部に転職を決めました。実際に働き始めると、仕事の幅がぐっと広がり、全く環境が変わりましたね。それまでは特許の出願以降の段階から行っていたのが、開発側との調整や長期戦略まで関わるようになっていき、非常にやりがいを感じました。
それでも、期間を区切って再び転職をしようということも同時に決めていました。やはりゆくゆくは事業会社を独立してやりたいと考えており、まだビジネスのことがわからないため、より事業寄りの環境に進みたいと考えていたんです。そこで、2年働いた後、新規事業系のコンサルに転職しました。
その会社ではメーカー系の技術シードを事業化することがメインだったのですが、実際に仕組みを作ってファーストクライアントを見つけてと、実務に近い働き方でしたね。泥臭いものの、面白い仕事でした。その後、1年ほど働き、自分がやりたいと思える事業が固まり退職を決めました。
そして、28歳のタイミングで独立して立ち上げたのは、アートのシェアリングの事業でした。社会人になってもやはりアートをなんとかしたいという思いがあった中、シェアリングというスキームに注目し、事業として挑戦しようと決めたんです。アートが抱える高価格というネックを、シェアの仕組みなら解決できる、と。
具体的には、アート作品を法人に営業し、シェアで利用するというものだったのですが、始めてからは試行錯誤の日々でした。ゴリゴリの営業の結果、法人のクライアントは着くものの、伸びしろがあまり感じられず、ちょうどプライベートで子どもが生まれたばかりのタイミングも重なり、とても大変でした。結局、ボロボロになってしまい、3年で事業を売却することになりました。
美容サロン経営で見えた課題感
それからは、法律の事務所に戻り、弁理士として働きながらもう一度事業を考え直すことに決めました。とはいえ、面白いと思うものに迷わず取り組むという気持ちは変わらず、再度挑戦を行うことに対して迷いはありませんでしたね。
そして、30歳を過ぎて2回目の挑戦に選んだのは、美容サロンの経営でした。私自身、年齢を重ねて少し太ってきたので、痩せようと思い色々探していくと、男性向けのサービスが少ないことを感じたんです。加えて、価格が不透明であることにも課題感があり、一通り競合調査を行ってからは六本木でメンズ向けのエステサロンを開業しました。
実際に経営を始めてみると、男性美用の注目度が高まってきたこともあり、順調に軌道に乗っていきました。しかし、店舗ビジネスは人依存だというのも正直な感想でした。たまたまいい人に恵まれたから伸びているものの、店長を誰が務めるかで売上が変わるのは自明でした。さらに、低価格で良いものを提供できれば伸びる手応えは掴めたので、その仕組みを作る方向に関心が強まっていきました。
また、サロン側は毎月売上や利益の変動が大きく、人件費が上げづらい構造があり、従業員側は、10年働いても給与が上がりにくいという課題がありました。皆技術やプロ意識はあるものの、営業は苦手なため、独立の道を選んでも集客に苦しむ状況。そんな課題を解決できるような仕組みができないかと考え、美容・健康のプロを、オンラインを通じて出張で呼べるマッチングサービスを立ち上げることに決めたんです。
弁理士・連続起業家として生み出す、世の中に無い体験
現在は、careL(ケアエル)という、オンラインでマッサージや、ネイル、ヘアメイクなどの美容・健康のプロを出張で呼べるサービスを運営しています。実際に店舗経営を通じて、雇用の構造的な問題を感じる中、タクシーの配車サービス「UBER」のように、個人が価値を提供するプラットフォームができると変わってくる可能性を感じていました。
そこで、フリーランスで活動するマッサージや、ネイリスト、ヘアメイクのプロをオンラインでマッチングし、個人単位で活動しているプロへの集客の支援を行おうとしています。サービスは同一価格で、大体時給3000円水準を目安としています。それができれば独立してもやっていけるため、スキルはあるけど、お金がないという潜在層の掘り起こしを行い、もっと個人で活躍する人が増えていけばという思いもあります。
利用者側としては、今いる場所と時間でプランを選ぶことができ、それまでの口コミ等も踏まえて決めることができます。特に、出張でのサービス提供の場合に、料金が高くなってしまうのは、移動による時間のロスがあるからという部分もあるので、近い場所からマッチさせてコストを下げることで、例えば、仕事の終わり時間や飲み会前等、気軽に足を運んでもらえる立ち位置になれればと考えています。また、初期は法人利用も注力しており、例えば制作系の人が多い会社向けにマッサージを提供する等も考えています。
また、その事業と並行して、知人の弁理士とともに特許業務法人アイザック国際特許商標事務所を立ち上げ、弁理士としてスタートアップの特許や商標のサポートも並行して行っています。
一般的な事務所では「こういう特許を出したい」という話が多いのですが、スタートアップの場合何が特許なのか分からないこともあり、ビジネスやテクノロジーまで理解した上で、「こういう機能が特許化あれると、こんなことができる」という提案をしています。特に、これまでの経験からも、事業戦略上の特許の活用については力を入れており、創業期から初期の資金調達後の会社を中心にコンサルティングを行っています。
全く分野は違うものの、両方の根底にあるのは、世の中にない体験を作っていきたいという思いです。知財を頭に入れるとそれを軸にしたサービスの作り方があることに気付き、非常に相乗効果は大きいですね。
やはり色々な人に会い、動いていると課題を感じて解決したいと考えるキッカケになることが多いです。これからは、今のサービスの拡大に力を入れつつ、リアルビジネス分野で知財を生かして連続起業家として事業を立ち上げていきたいですね。
2015.11.03
渡邉 大介
わたなべ だいすけ|弁理士・連続起業家
オンラインでマッサージや、ネイル、ヘアメイクなどの美容・健康のプロを出張で呼べるサービス、careL(ケアエル)を運営する株式会社MOSO mafiaの代表取締役を勤める傍ら、アイザック国際特許商標事務所にて所長 弁理士としても活動する。
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