町民全員で育む花が、震災復興の希望の象徴に。
「ダリアの町」に込めた未来への願い。

【株式会社パークコーポレーション・福島県塙町提供:another life. × 地域 町民全員で花を咲かせる「ダリアの町」福島県塙町特集】福島県塙町役場の総務課長として、塙町のまちづくりに取り組む天沼さん。子どもが誇れる町にしたいという思いから、地域のブランド化に力を入れ、町民全員がダリアを育てる「ダリアの町」としてのイメージを確立し、震災後の希望の象徴に。どんな思いが天沼さんを突き動かすのか、お話を伺いました。

天沼 恵子

あまぬま けいこ|福島県塙町役場勤務
福島県塙町役場の総務課長として、ダリアの町としてのまちづくり等を行っている。

※この特集は、株式会社パークコーポレーション・福島県塙町の提供でお届けしました。

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全国一の広報誌作りと後に残った寂しさ


私は福島県塙町に生まれ育ちました。小さい頃から、漠然と公の役に立つ仕事ができたらという思いがあり、中学・高校と進学するに連れ、将来は皆のために働く公務員になりたいと考えるようになりました。

高校を卒業後は、東京の公務員試験と地元の町役場の試験に両方合格することが出来、地元に残って働こうという思いから、塙町役場への就職を決めました。とはいえ、地元の町に対して強い思い入れがあった訳でもありませんでしたね。

働き始めてからは、町の経理業務に携わったり補助金を申請したりと、いわゆる公務員的な業務に就きました。ただ、途中からは結婚をして子育ても並立するようになり、かなり忙しくなっていきました。あまり周りに目を向ける余裕も無く、忙殺されて毎年同じ業務を淡々とこなすような感覚でした。

ところが、子育ても一段落着き30歳になると、少しずつ気持ちに変化が現れるようになったんです。子ども達が暮らすのであれば、「塙町はこんな町だ」と語れる町にしたいと感じたんですよね。正直、あまり明確に語れるものが無いからこそ、何か町の人が誇りに思うものを作って発信したいと考えるようになり、スイッチが入った感覚がありました。

そして、たまたま町の広報担当になったことも重なり、町で発行していた広報誌の制作に力を入れるようになりました。町のPRはもちろん、町民に対する問題提起を誌面にすることで、町の方向性を作っていくことが出切るんじゃないかと感じたんです。また、自治体の広報誌のコンクールがあることも知り、全国で一番の広報誌を目指し、取材活動を始めました。

具体的には、高齢化や地域おこし・まちづくりに農業の後継者問題など、町が直面する課題を扱いつつ、特定の人に24時間密着するコンテンツ等、伝え方にも力を入れて、それまで以上に仕事に注力していきました。

すると、担当になって4年目で目標だった広報誌の全国1位(自治大臣賞受賞)を受賞することが出来たんです。周りでも広報誌を楽しみにしてくれる方が増え、小さな町でも何かできるというテーマへの反響で、全国から視察団が押し寄せるようにもなりました。

しかし、そんな目標への達成感とは裏腹に、どこか私の中には寂しさがありました。評価はしていただけたものの、「いい広報誌だったね」で終わってしまい、その後の行動に続いていないという課題があったんです。文字通りの問題提起のみで終わってしまい、本当に町のためになるのは、これではないなという感覚がありました。

最終的に目指すのは、町民が同じ思いで街全体が豊かになること。そのために、発信だけでなく、実際に人が動くような運動に力を入れることに決めたんです。

全世帯が球根から育てる「ダリアの町」


広報の仕事を終えた後は、観光課の配属となり、町の魅力を伝える観光資源作りや、都市交流に携わるようになりました。

中でも、1998年に「湯遊ランドはなわ」という宿泊・飲食・キャンプ施設を併設した公営の温泉浴施設のオープンが決まってからは、新たに多くの人に来てもらうための施策として、ダリアという花を用いた町づくりを始めることに決めました。花の町として明るいイメージを持ってもらい、町民の心にも華やかなイメージを植え付けたいと考えたんです。

しかし、そんな構想を掲げたのは良いものの、具体的にどうまちづくりをするのかは当てが全く無い状況。途方に暮れて考える日々が続きました。

そこで、まずは町全体の3300世帯にダリアの球根を配り、皆でダリアを育て、花を咲かせようという試みを始めることにしたんです。ちょうど2001年に福島で「うつくしま未来博」という地方展覧会があり、そのテーマが「県民総参加」だったため、それならば塙町も町民総参加で臨もうと、皆で育てたダリアの花で会場を飾ることにしたんです。展覧会の半年前から土作り等の準備を始め、老人会や婦人会等、様々な団体で毎日ローテーションを組んでダリアの手入れを行いました。

正直、途中までこの企画は失敗したかなという不安もあったのですが、時間が経つに連れてダリア名人とも呼べる人が生まれていき、最終的に全世帯から持ち寄ったダリアを見事に咲かせることが出来たんです。

結果的には、その展覧会のタイアッププログラム大賞をいただくことができ、県からも評価をいただくことができました。また、ダリアの町というPRができたことで、翌年には正式に「町の花」に加わることもできました。

それからも、全国の生産農家を集めたダリアサミットを開催したり、ダリアの懐石料理を作ってみたり、より一層力を入れていきました。

東日本大震災と、希望の象徴としてのダリア


ダリアの町づくりの施策と並行して、都市交流の分野にも力を入れていました。この町が外に誇れる町になるには、都会の力も貸してもらわないと、という思いがあり、東京都の練馬区・葛飾区と交流を始めたんです。

とはいえ、最初はこちらから新鮮な野菜等を持っていき販売をする程度。正直、「これでいいのかな?」と思う部分もありました。そのため、東京から来てもらうことにも力を入れようと、温泉施設の利用を促してもらったり、道の駅等での物販のアピールも積極的に行うようになりました。

ところが、そんな風に徐々に都市交流が進んでいった中、2011年3月11日、東日本大震災が起こりました。塙町は福島県でも南に位置しており、海からも遠いため、建物の倒壊等は全く無く津波の被害もありませんでした。

しかし、そんな状況でもセシウム濃度の風評被害から、町に来る人が減ってしまい、農家の生産者にも大きな影響を与えるようになってしまいました。「どうしよう…」と途方にくれてしまいました。

すると、震災翌月の4月に、交流都市だった練馬区・葛飾区から、「困っているだろうから塙町の産物をこっちに持って来てくれ」という話をいただいたんです。他の町村は全く買ってくれない状況の中、2つの町は何でも買うからと言ってくれたんですよね。それまでは、これからものが売れるのか分からない状況だったため、本当に救われたような気持ちでした。「続けてきたのは嘘じゃなかった、今までの苦労が報われた」と感じましたね。

それからは東京に毎週通うようになり、一時期は震災前の3割まで減少した売上が少しずつ回復していきました。また、何より、早い段階からダリアが売れるようになっていったんです。食べ物でない分、取引の回復も早く、きちんと高値で扱ってもらうことができました。

私たちにとって、「福島の花」が売れたことは、未来への希望でした。ダリアは、希望・復興の象徴の花だったんです。もしかしたら、このために町民全体に球根を配ったのかもしれないとすら感じ、「このために生まれて来た」というような感覚でした。

それ以降、練馬区・葛飾区とは住民同士の交流も増えていき、お互いが行ったり来たりすることで結びつきが強くなっていきました。葛飾区には、塙町のアンテナショップをオープンすることも出来ました。

自らの集大成となる町づくりを


2015年4月からは塙町役場の総務課長として、より多角的な町のブランド化に携わっています。県内でも女性の課長というのは相当珍しいと思いますが、男女にこだわらず、何が出来るかを考えて進めています。

具体的には、全国的な地方創生の動きをキッカケに、塙町としても長期的にどのようにまちづくりを行うかの計画を立て、施策を行っています。その中でも、若い方が沢山訪れて定住することは非常に重要なため、都市交流や道の駅の活性化等、これまでの集大成のようなつもりで臨んでいます。今までは何も無いところに種を撒いてきたイメージですが、これからはその種を育てていく段階ですね。

特に、まちづくりは産業と結びつかないと続かないため、力を入れてきたダリアについても、産地としての仕組みづくりにより注力していく予定です。来て見て楽しむ、という一歩先を踏み出していきたいですね。

これからも、塙町の良さを多くの人に分かってもらうためにできることを続けていきたいです。ダリアを筆頭に、「made in 塙」ブランドを作っていくために、行政や町民だけでなく、民間企業も巻き込んで町を育てていきたいとも考えています。

そうしなければ町はいずれ衰退してしまう、という危機感を持ちつつ、これまでの集大成としての町づくりを行っていくつもりです。

2015.09.16

天沼 恵子

あまぬま けいこ|福島県塙町役場勤務
福島県塙町役場の総務課長として、ダリアの町としてのまちづくり等を行っている。

※この特集は、株式会社パークコーポレーション・福島県塙町の提供でお届けしました。

青山フラワーマーケットと姉妹ブランドでは9月22 日~ 10月25日(順次展開)まで「ダリアフェアを開催中」
詳細は青山フラワーマーケットホームページより

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