イメージが良くないからこそ接客にこだわる。
ベンチャー化するタクシー業界で目指すもの。

神奈川県横浜市を拠点に、京浜地区を主たる営業エリアとする三慶交通株式会社でタクシードライバーを務める大城さん。接客にやりがいを見いだし、コンビニのスーパーバイザーとして活躍していた大城さんがタクシードライバーになったキッカケとは?「ベンチャー化しているタクシー業界」で目指す目標についてお話を伺いました。

大城 友樹

おおしろ ともき|タクシードライバー
神奈川県横浜市を拠点に、京浜地区を主たる営業エリアとする三慶交通株式会社でタクシードライバーを務める

三慶交通株式会社

※この記事は、三慶交通株式会社・株式会社船井総合研究所の提供でお届けしました。

コンビニ業界で見いだした「接客」のやりがい


私は神奈川県横浜市に生まれ育ちました。小中学校と地元の学校に通い、高校は家から近いという理由で商業系の学校に進学しました。

最初はなんとなくという感覚でしたが、簿記等の勉強をしていく中で財務諸表が読めるようになっていくと、次第に会社のことが見えるようになり、面白さを感じるようになったんです。将来は、その延長で税理士の道に進むのもありかもしれないなと考えるようになりました。

その後、高校卒業後は大学の商学部に入ろうと考えていたのですが、第一志望の大学の受験には失敗してしまい、浪人もできない状況だったため、通っていた学校の内部進学で大学に進むことに決めました。

そんな経緯もあり、正直勉強のレベルは余裕を持って進学したので、大学に入ってからも勉強で苦労するようなことは無く、比較的やりたいことに時間を費やすことができました。珍しくテニスサークルが無い大学だったこともあり、高校までテニス部だった私は新しくサークルを立ち上げたり、引き続き簿記を受験したり、経営や商業関係の資格の勉強をしたり、幅広く好きなことをしていました。

また、アルバイトではコンビニやイベントの設営・運営に携わりました。特にコンビニでは朝6時から9時のシフトに入ることが多かったのですが、比較的元気に挨拶をしていると、「朝元気よく声をかけてもらえて嬉しい」と言ってもらえることも多く、接客にやりがいを感じるようになっていきました。

結局、テニスサークルは4年間皆勤で、日商簿記でも2級まで合格することができたのですが、税理士等その先を見据えて1級の勉強をしてみると、難易度が高く感じてしまったんです。そこで、資格勉強を続けて士業を目指すのではなく、就職活動を経て企業で働く方向に関心が移っていきました。

そして、アルバイトでの経験から、就職活動では人と接する小売業を中心に見て回るようになりました。特に、コンビニでのアルバイト時代に、店舗の状況の分析を行い、業績向上のための企画提案を行う「スーパーバイザー」の働き方に憧れを感じていたこともあり、小売りの中でもコンビニの業界に注目するようになったんです。

自ら裁量を持って施策を考えて提案し、オーナーの商売を良くしていくという仕事に、やりがいを感じられるんじゃないかと思ったんですよね。全国で画一的に働くのではなく、各地域のために最適化して仕事をしている面にも惹かれました。

そこで、卒業後はコンビニ業界に就職することに決めました。

仕事に追われ、身体を壊して感じた危機感


実際に入社すると、まずは店舗研修として現場で働き始めました。そして、半年ほど経ち一通り業務も覚えた9月からは店長研修が始まりました。通常の業務に加え、人や商品の管理等、店全体を管理・運営していくことに若干パンク気味でしたね。休みの日や夜中にお店に呼ばれることもあり、働き詰めという状況でした。

そして現場での研修を1年終えると、元々携わりたいと考えていたスーパーバイザーの研修を経て、静岡県浜松市の店舗で、実際にスーパーバイザーとして働き始めました。最初は分からないことだらけでしたが、経験して学ぶしかないという思いもあり、少しずつ貢献していこうと仕事に打ち込みました。

1人で7・8店舗を担当したり、各店舗をまとめる営業所の方針と店舗のオーナーさんの考えの間を取り持ったり、実際に働いてみて初めて見える難しさもありましたが、自分の提案した施策でうまく効果が出たり、オーナーさんからやってよかったと感謝してもらえることはすごく嬉しかったですね。接客業で働きたいと描いたイメージに近い環境で仕事をすることができました。

しかし、4年目を迎えた折、組織体制が変わるタイミングがあり、新しい上司の進め方と合わない部分が生じるようになったんです。やることの量がこれまでよりも急激に増え、ほぼ100%に近い精度も求められるような状況で、仕事がどんどん振って来て休めない状況になってしまったんですよね。

がんばっても届かないようなところに最低ラインがあったため、とにかく仕事に追われるようになり、それまでは自分の意志で働いていたのが、「やらなければ怒られる」という考えに変わっていってしまったんです。

ついには身体も壊し始め、「これ以上この働き方を続けたらまずいんじゃないか」と考えるようになり、退職を考えるようになりました。上司からの薦めもあり、1ヶ月休暇をいただき再度判断してみたのですが、やはり会社を辞めようと気持ちは変わりませんでした。

正直、辞めた後に何をするかは決めていませんでしたが、取り返しがつかなくなる前に会社を辞めようという感覚でした。

イメージと待遇の狭間での葛藤、挑戦の決断


退職してからは半年程度は一旦仕事から離れ、趣味だったテニスや読書等をしてゆったりとした生活を過ごしました。ストレスの無い環境に身を置き、まずは体調の回復に務めようという感覚でした。

そして、少しずつ仕事に復帰していこうと考え、大学の時に登録していたイベント設営・運営のアルバイトを再開しました。働き方の自由度が高く、業務自体は既に理解していたこともあり、リハビリのようなイメージで仕事をしていましたね。

そんな生活を半年程過ごす中で、改めて今後何をしていこうか考えると、やはり一番最初に基準となったのは、勤務時間や残業時間等の労働環境でした。そして、それ以外には特別な基準を設けず、事務から営業まで幅広く仕事を見ていくことにしたんです。

すると、調べていく中でタクシードライバーの求人を見つけました。それまで全く考えていなかったものの、よく内容を見てみると、休み方や働き方が自分に合っていることに気づいたんですよね。隔日勤務という1日働いて1日休んでという形態で月13日働くのに加え、2週間ごとのシフト制で日程の調整もしやすい環境だったんです。

ただ、そんな魅力を感じる一方で、業界自体のイメージは正直あまり良いものではありませんでした。直接の知り合いはいないものの、年収が低いんじゃないかとか、ドライバーの接客レベルが低いことでお客さんと揉めてしまうこと等、色々な噂を耳にすることもありました。また、個人的にタバコが苦手だったこともあり、駅前で集まってタバコを吸っていることへのネガティブなイメージもありました。

それでも、情報収集を行う中で、神奈川県横浜市を拠点とする三慶交通株式会社は、家から近く、最初の1年は仕事に慣れるために完全歩合制でなく月給25万円の最低保証もあり、本格的にタクシードライバーになることを考え始めました。何より、業界として接客のレベルが高くないからこそ、しっかり丁寧な接客をすればその中でプラスの価値を提供できるんじゃないかという思いもあったんです。

退職してから1年程経った27歳のタイミングで、私はタクシードライバーになることを決めました。

ベンチャー化するタクシー業界で目指すもの


実際に働き始めると、1日40人から50人、一番多い時には80人ものお客様を乗せる機会もあり、イメージより乗客数が多いことに驚きました。また、営業エリアとなる京浜地区でも、各施設のイベント状況を事前に確認してから流しで回ったり、朝は住宅街夜は飲屋街と、工夫をすることで成果も上がっていきました。

また、勤務時間は明確に決まっていることもあり、以前のように主体的に働き、時間が限られているから頑張れるような感覚があります。2週間前であれば予定も調整できるため、知り合いと予定を合わせて出かけたりすることも増え、働き方の点ではすごく満足していますね。

しかし、一方で接客にはついては実際にふたを開けてみてもイメージが悪い部分も多く、自分自身は乗っている方を出来る限り心地よく送り届けようと、以前より一層意識をしています。だからこそ、お子様がいるお客様に「ゆっくり走ってくれてありがとう」と言っていただいたり、ご年配の方の荷物を運ぶことを手伝って喜んでいただいたりするのはすごく嬉しいですね。

時には「名刺をください」と言われ、次回以降もリピートしていただける方もいらっしゃり、こだわっている接客が成果にもつながるのは、非常にやりがいを感じます。

もちろん酔っぱらいの方の対応で最終的には警察にお届けしたり、知らない場所に行く際に恐る恐る道を選んだり、仕事の中で大変なこともありますが、私は今後もタクシードライバーを続けていきたいという思いがあります。

というのも、タクシー業界自体、今はベンチャー的になってきているんじゃないかと思うんです。私自身、浜松の時代に車は買ったものの、地元の土地勘は無い状態で仕事を始めたので、特別スキル的に向いていたわけでもありません。しかし、ドライバーの平均年齢が上がり、数も減った現在は、新しい人でもやる気があればチャレンジできる環境だと思うんです。

だからこそ、長期的な将来は個人タクシーで仕事をしていくことも一つの目標としています。景気の影響を受けやすい業界なので、今はまだイメージという段階ですが、今は休みを利用して、他の場所の地理を勉強したり、外国人の方を乗せるために英語を勉強したりもしています。

そんな風に、自分にあった働き方であるタクシードライバーとして、挑戦の幅を広げていければと思います。

2015.04.26

大城 友樹

おおしろ ともき|タクシードライバー
神奈川県横浜市を拠点に、京浜地区を主たる営業エリアとする三慶交通株式会社でタクシードライバーを務める

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※この記事は、三慶交通株式会社・株式会社船井総合研究所の提供でお届けしました。

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