今こそお坊さんが立ち上がるとき!
笑顔の数珠つながりで世の中を変えたい。
山梨県笛吹市の福光園寺で、こころとからだを整えるために整体とカウンセリングを行っている鈴木さん。福祉関係の事務の仕事を辞めて理学療法士を目指し、実家のお寺で整体院を開業するまでには、どのような背景があったのでしょうか?
鈴木 秀彰
すずき ひであき|こころとからだを笑顔にする整体師、お坊さん
山梨県笛吹市の福光園寺で、2014年4月より整体とカウンセリングを行う「わげんせ」を運営している。
わげんせ〜こころとからだを笑顔に〜
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医療の道に憧れるも挫折
僕は、山梨県笛吹市で生まれました。
1人っ子で人見知りだったので、基本的に1人でいることが好きで、自由でマイペースな子どもでした。
部活はスポーツが好きだったので、サッカー、テニス、バドミントンと色々やりましたが、根性がなく、すぐに辞めていました。
実家はお寺でしたが、父にはお坊さんになれと言われたことは一度もなく、父への反発心もあり、絶対になりたくない職業でしたね。
その後、高校生になると、文系科目が苦手だったので理系に進みました。
白衣がかっこいいと思っていたし、周りの友達の親に医療関係の人が多かったので、医療の仕事に憧れていたことも一つの理由でした。
しかし、大学受験では、理系の大学を受験するも上手くいかなかったんです。
加えて、浪人は1年を無駄にするように思えたし、かっこ悪いからしたくなかったので、
医療の道は諦めることにしました。
そして、どうしようか考えると、3月に受験できる大学は仏教系の学部が残っていました。
そこで、残された道はお坊さんになることしかないと思い、進学を決断したんです。
大学入学後は寮に入ったのですが、4人部屋でカルチャーショックを受けました。
今まで1人っ子だったので、常に誰かがいる環境は苦痛でしたし、
人間関係を構築するのも苦手で、人が好きではなかったんですよね。
母親に、「家に帰りたい、辞めたい」などと、よく愚痴をこぼす生活をしていました。
すると、母からは、「高校時代に憧れていた医療の道に進めばいいじゃない」と言われましたが、
そんな勇気はありませんでしたね。
一人前になるために、早く仕事をしよう
しかし、大学生活では彼女ができて、人のことを深く知りたいと思うようになり、
自分のことを話す経験をするうちに、今まで人に対して無関心だった自分が、
彼女のおかげで、色んな人に目を向けるようになったんです。
そんな大学生活を経て卒業を控えると、大学院の推薦をいただき、仏教の勉強を進めようと考えました。
しかし、そんな風に考えていたある時、大学の寮の副寮長に、「男は家族を持ってから1人前だ」と言われたことを思い出しました。
それを聞いて、僕は早く認められたい、1人前になりたいと強く思いました。
彼女と結婚したかったし、結婚するためには仕事をしないといけないと感じたんですよね。
そこで、大学卒業後はお坊さんである父の手伝いをしながら、
親に勧められた役所に就職して、福祉関係の事務の仕事をすることにしました。
ところが、いざ就職して働いてみると、周りは医療の資格を持っている人たちばかりで、
僕はお坊さんの資格しか持っていなかったこともあり、無力さを感じてしまったんです。
ただ電話を受けて、パソコンに向かうという事務の仕事をする日々を通して、
次第に、自分にしかできない仕事をしたいと思うようになりました。
さらに、そんなタイミングで、結婚すると思っていた彼女に突然振られてしまい、
これからどうしようか、途方に暮れてしまいました。
安定した環境を捨て、理学療法士を目指すことに
そこで、今後のことを色々と考えると、昔から医療関係や病院で働くことに憧れていたことを思い出しました。
また、もともとスポーツが好きだったので、医療関係でかつスポーツに関われる仕事を探すようになり、
理学療法士を目指すことにしたんです。
周りの人には誰に聞いても、今の仕事がせっかく安定しているのに、と反対されました。
しかし、今の年齢で安定に入って、「これで人生終わっていいのかな?」と思ってしまったんですよね。
そんなチャレンジの気持ちから理学療法士の学校に入学し、4年間通いました。
そして卒業後は病院に就職しましたが、スポーツに関わりたいと思ったので、スポーツ業界で働くことにとチャレンジしました。
しかし家族ができて、どこか仕事中心の生活になってしまい、今後について悩んでいる時に
ちょうど東日本大震災が起こったんです。
その時に家族を大事にしたいという思いが強くことなり、
スポーツは見るだけにしようと決め、また病院に勤めることにしました。
実際に働き始めると、人との関わりを1番に大事にしながら働いたこともあり、
患者さんとの間で楽しい雰囲気を作ったり、興味を持って接したり、自分のことを開示することで、
患者さんとの信頼関係を築くことができました。
そうすると患者さんが僕との時間を楽しみにしていてくれたり、誰にも話していないことを話してくれたりするようになって嬉しかったですね。
また、そういう患者さんはリハビリの効果も良かったんです。
段々と仕事も楽しくなってきて、人との関係や楽しい雰囲気が大事なんだということを実感しました。
しかし、現在の医療は、病院に行っても薬や注射だけだったり、リハビリも構造的なことしか見ていなかったり、
テクニックや技術に走っているので、それだけでは良い結果はでないんですよね。
僕はこのような代替医療に疑問を持つようになって、
人との関わりを学んだ中で、大切なのは心ではないかと思うようになりました。
また、並行してお坊さんである父の仕事の手伝っているうちに、お坊さんの仕事にも疑問を持つようになったんです。
お坊さんは、お葬式や法事など、人が死んでからの関わりばかりだったので、
それよりも生きている時に関わることが大事なのではないか、お坊さんの仕事は現代に即していないのではないか、
とも考えるようになりました。
こころとからだを笑顔に
そこで、この2つの疑問を解決するために医療とお坊さんが交わる点がないか探すことにしました。
すると、医療の現場で理学療法士とは違った視点で患者さんと接している方のお話を聞いたり、本を読んだりしていくうちに、
整体が体だけでなく、心も整えるものだと知ったんです。
そして、これこそ自分がやるべきことじゃないかと思いました。
そこで、医療とお坊さんへの疑問、役所の頃に感じた自分の名前で、自分にしかできない仕事をしたいという思いも重なり、
2014年4月に実家のお寺である山梨県笛吹市の福光園寺でこころとからだを整えるための整体院を開業しました。
現在は、からだだけでなくこころを整えるためにお寺で整体とカウンセリングを行っています。
落ち着いた場所も提供できるし、お坊さんのイメージも変化すると思い、お寺で施術を行うことにしました。
僕は、治療院の屋号を仏教用語である、わげんせにしました。
わげんせは漢字で和顔施で、その意味は笑顔の施しのことです。
あなたの笑顔を見せることで、その相手が幸せになることをいいます。
僕は、このわげんせで世の中を変えたいと思っているんです。
自分の施術と話で体と心が笑顔になって、それを見た人が笑顔になって、数珠繋がりでどんどん笑顔を増やしたいんですよね。
今の世の中は、物は豊かですが、心はそれに比例していないのではないかと思います。
心から笑えないけどどうしたら良いのか、家族や友人にも言えなかったり、一人で溜め込んでしまうと体に症状が出てくるので、
気づいてもらいたいんです。
かつ、お寺なので、現在駆け込み寺のように、そういう場所を提供できるのは意義があるのではないかと思っています。
施術では泣くお客様が多いのですが、そのあとの笑顔がとても素敵で、やりがいを感じる瞬間ですね。
「○○ができました」とお客様がメールをくれると自分のことのように嬉しいですし、この道を選んで良かったなと思います。
僕は昔は人が嫌いでしたが、人との出会いで自分が変われたように、
誰かが変われるきっかけになる存在になりたいです。
また、将来は、首都圏でも活動もしていきたいと思っています。
子どもを連れて首都圏に遊びに行ったりすると、時間に追われ、どこか心が寂しそうな人が大都市には多いように感じるんです。
そういう人たちのために、こころとからだを笑顔にする場所があることを知ってほしいですね。
理想は山梨のお寺で施術をすることですが、それにはハードルがあると思うので、
今は地元の山梨で出店したり、イベント、講演会を行ったり、ネットやSNSで情報を発信しています。
こんな人もいることを知ってもらう機会をもっと増やして、
今後は首都圏でもこういう駆け込み寺のような場所を作っていきたいです。
2015.03.21
鈴木 秀彰
すずき ひであき|こころとからだを笑顔にする整体師、お坊さん
山梨県笛吹市の福光園寺で、2014年4月より整体とカウンセリングを行う「わげんせ」を運営している。
わげんせ〜こころとからだを笑顔に〜
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