手を差し伸べ、キッカケを創る仕事を。
周りと比べず、自分を突き詰めると決めた理由。

NPOの支援を行う中間支援組織で、何かやろうと思っている人のキッカケを創る仕事に携わる田邊さん。学生時代から抱いていた社会問題への関心をもとに外食産業を経てNPOに転職するも、自らの仕事への社会的理解の無さに悔しさを感じたこともあったとか。そんな田邊さんが吹っ切れたキッカケについて伺いました。

田邊 健史

たなべ けんじ|NPOの中間支援
NPOによる新しい社会システムの構築を目指すNPOの支援組織、NPOサポートセンターに勤務する傍ら、
中央区内での協働をスムーズに進めるために、社会貢献活動団体からの事業構築の相談から提案に向けた総合的なサポートを行う、
「協働ステーション中央」にも従事・兼務している。

協働ステーション中央
特定非営利活動法人NPOサポートセンター
Work Design Lab
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社会問題に関心を抱いた学生時代


私は、神奈川県の大和市に生まれ育ちました。

中学生の頃、テレビで温暖化の話をニュースで見て、
ぼんやりと環境問題への関心を持つと同時に、

「何故みんな課題に思っているのに動かないのだろう?」

と疑問に思うようになりました。
だったらこうすれば良いというような考えを持ちながらも、
それを言わないような雰囲気に、

「わかっているならば、やればいいじゃん」

と感じたんです。

その後、中学を卒業してからは、そのまま社会に出たいと考えたものの、
周囲からの反対を受け、高校に進学することになりました。
正直、高校で何かに打ち込めることはありませんでしたが、
大学に行けば、同じテーマで取り組む仲間ができるんじゃないか、という考えもあり、
ちょうど関心のあった、環境系の学科を新設した大学に進学しようと考えたんです。

ただ、進学にはお金がかかり、浪人もすることになったので、
新聞奨学生の制度を利用し、働きながら勉強をして、無事大学受験に合格することができました。
新聞配達、特に配属された新聞販売店はものすごく過酷な環境で、
厳しい縦社会の中、非常に荒い新入社員研修を受けたような感覚でした。

そんな苦労を経て進学したものの、大学に入ってみると、皆かなり遊んで過ごしていたんです。
先の経験もあり、貴重な4年間だと感じていたからこそ、そんな周りをどこか冷めた目で見ていましたね。

そこで、何か社会と関わりたいという思いから、個人で動いてみようと、
様々なイベントに足を運んだり、友人の誘いから環境系のインカレサークルにも所属しました。

そのサークルは、すごく盛り上がっており、
環境を軸に、同じテーマで活動する仲間に出会うこともでき、
こういう繋がり方もあるんだ、と刺激を受けましたね。
しかし、その活動で社会が変わるか?というという部分には疑問が残りました。

そんな背景もあり、就職活動の時期を迎えると、
環境のことを、環境から遠いところで考えたいという思いから、
外食産業を受けて回り、人間味あふれる社長に魅力を感じた、ある企業に就職を決めました。

NPOインターンで感じた衝撃


内定を3年の3月にいただき、大学4年生になってからは、
大学の先生から、NPOのインターンへの参加を薦めてもらったんです。
最初はNPOの存在自体知らなかったのですが、
何か得るものがあれば、と思い参加を決めました。

私が参加したのは、アースウォッチ・ジャパンという、
環境問題について実証的な研究活動を行っている研究者の野外調査の現場に、
一般市民を環境ボランティアとして派遣する活動をする団体でした。
そして、事務局業務を中心とした業務でしたが、携わってみると活動自体がすごく面白かったんですよね。
ただ、一方で、一つの団体としてできることへの限界も感じるようになり、
仕組みや制度自体を変えるような、NPOの中間支援の領域にも関心を持つようになりました。

また、活動内容ももちろんですが、その団体で関わった方に大きな衝撃を受けました。
本当に素敵な方に囲まれ、経験・経歴を伺ってもすごい人ばかり。
ある種、スーパーマンのような人たちに感動をしながらも、

「こんなすごい人に、卒業してすぐにはなれないな」

という感覚も抱くようになりました。
そして、このインターンを通じて、NPOや中間支援の領域に関心はもちながらも、
今すぐ飛び込まなくてもよいかな、という感覚もあり、
予定通り、まずは外食産業で修行をしようと決めたんです。
なんとなくの目安でしたが、まずは3年務めようという気持ちで入社をしました。

26歳、環境を変えるタイミングはここかな


実際に就職してからは、外食チェーン店の店舗で働き始めました。

そして、勤務1日目で天職だと感じましたね。
お客さんと接するのが楽しくてしょうがなく、充実した気持ちで仕事に望むことができました。

しかし、業務がハードだったこともあり、
ずっとこの仕事ができるだろうか?という疑問を抱くようになりました。
特に、30歳・40歳までその仕事を続けているイメージが持てなかったんですよね。

そんなことに悩んでいた社会人2年目のタイミングで、
たまたま、あるNPOの方から、フリーターの前で若手社会人が話をする会に呼んでいただいたんです。
平日の昼間のイベントだったので、たまたま都合がつき登壇することになりました。

その会では自分のキャリアについても語り、
将来はいつかNPOに入りたいと考えてることも話しました。
すると、イベント終了後、主催者の方に、

「じゃあ来てみない?」

と、軽い気持ちだったかもしれませんが、たまたま言っていただいたんです。
正直、自分が働いた2年間で大きく変わったような実感はなかったものの、
3年経ってやめるのとも、違いは無いように感じました。
周りに相談をしてみるも、反対する人もおらず、

「環境を変えるタイミングはここかな」

と感じ、飛び込んでみることに決めたんです。
26歳のことでした。

そして、NPOのインターンの経験から、社会を変えるのに近いのは、
企業・自治体・NPO・ボランティア団体が地域に何かする際に、コーディネートする「中間支援」だという感覚があり、
その中で特定のやりたいことが見つかったら、より現場よりに行くのも良いのではないかと考え、
NPOを支援する、NPOサポートセンターという組織に転職を決めました。

悩んだ先の転職紹介で吹っ切れる


実際に、誘っていただいたNPOサポートセンターに入職してみると、
毎日が驚きの連続でした。
中間支援組織では自分で動く分だけ色々な団体と出会うことができ、
思ったよりもハードながら、様々な刺激を得ることが出来ました。

しかし、年齢を重ねるに連れて、
段々と同世代のNPOの方々が世間で取り上げられるようになり、

「このままで、この人たちと同じようになれるのか?」
「自分が身につけたいと思っていたものは身に付くのか?」
「そもそも、人に誇れるものは身に付くのか?」

と、自らのキャリアに悩むようになりました。
そこで、試しに転職エージェントに登録し、転職先の候補を出してもらうと、
紹介されたのは、サービス業ばかりだったんです。
つまり、職歴としてみなされたのは、前職の飲食時代だけだったんですよね。

NPOの中間支援という、自らの仕事の理解が進んでいないことに対して、

「なんなのこれ?」

と思いましたね。

しかし、その経験でどこか吹っ切れた部分もありました。
エージェントで紹介されるような画一的な働き方ではなく、
自分なりに今の仕事を突き詰めるのもありだな、と感じたんです。

周囲と比較するのを止め、自分なりに進むことに関心が向いていきました。

何かやろうと思っている人のキッカケに


現在は、NPOを支援するNPOサポートセンターに所属しながら、
中央区に対して取り組みを行う組織と自治体の中間支援を行う、
協働ステーション中央という施設の企画運営をしています。

震災以降、いざという時のために地域と繋がりを持とうという人も増え、
活動の種類も多岐にわたっています。
そんな中で、協働ステーション中央にも、年間200件以上の相談が来て、
年30件以上の事業構築も行っています。
また、区の施設であるという点を活かし、自治体への橋渡しをしたり、
主に、何かしようと思ったときのキッカケになるような事業を行っています。

正直、NPOの仕事は、何が強みなのか言い辛いという側面があると思います。
でも、人と比較してもしょうがないし、
自分でこういうものになりたいから、こんなことをしているんだと考えられると、
気が楽になるんですよね。

仕事を通じて、何かやろうとおもっている人に手を差し伸べ、
キッカケになるようなことが自分にあっている感覚もあるし、
やっていて一番やりがいも感じます。
だからこそ、その点を軸に今後も取り組んでいきたいですね。

また、将来的には、自分の子どもが、

「何か良く分からないけど、親の仕事はすごい」

というような仕事をしたいですね。
この活動だけになるかは分かりませんが、
生き生きとしている大人を見せて選択肢を増やすような取り組みをしていければと思います。

2015.02.21

田邊 健史

たなべ けんじ|NPOの中間支援
NPOによる新しい社会システムの構築を目指すNPOの支援組織、NPOサポートセンターに勤務する傍ら、
中央区内での協働をスムーズに進めるために、社会貢献活動団体からの事業構築の相談から提案に向けた総合的なサポートを行う、
「協働ステーション中央」にも従事・兼務している。

協働ステーション中央
特定非営利活動法人NPOサポートセンター
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