“レペゼン・コスプレカルチャー”
元ミュージシャンが飛び込んだ新しい世界。
コスプレのロケーションコーディネートやイベント事業を運営されている柴田さん。 ミュージシャンとしての活動から一転、コスプレの世界に飛び込んだのには、どのような理由があったのでしょうか。コスプレとの出会い、コスプレに対する思いについてお話を伺いました。
柴田 昭
しばた あきら|コスプレのロケーションコーディネート、イベント事業運営
コスプレのイベント開催、ロケーションコーディネートなどを行う、株式会社ミネルバの代表を務める。
株式会社ミネルバHP
1枚のCDが決めたミュージシャンとしての道
私は東京都の豊島区で生まれ育ち、地元の小中学校に通いました。
物心ついた時からアニメや漫画が好きなオタク気質で、
中学2年生のある時、アメリカの“Public Enemy”というラップグループのCDを聴いて以来、
音楽に関心を持つようになったんです。
そのCDとの出会いのおかげで、音楽の力、歌詞の力にすっかり夢中になってしまい、
「将来は音楽で食べていきたい」
と考えるようになりました。
しかし、身近にはそういった音楽を好きな友人がいなかったため、
他の中学の人とも仲良くし、一緒にラップグループを組むようになったんです。
そして、高校受験の時期が近づくと、高校へ行ってもこのメンバーで活動したいという思いから、
示し合わせて同じ高校に進学することに決めました。
そんな背景もあり、高校では完全に音楽活動がメインの生活を過ごしました。
歌詞を書いて音楽を作り、有名なグループの付き人のようなこともさせてもらっていましたね。
その後、卒業を迎えても、どんな形でも音楽を続けたいという思いは変わらず、
就職して働きながらミュージシャンを目指すことに決めました。
それからは、建設業で働きながら、HIPHOPやミクスチャーと言われるジャンルで音楽活動を行う日々を2年ほど続けました。
しかし、活動をする中で、音楽に関する技術や知識が全然足りていないことに危機感を覚え、
しっかりと理論を学びたいと思い、20歳のタイミングで会社を辞めて専門学校に入ることに決めました。
専門では、音楽理論はもちろん、ギターやヴォーカルを学び、
ただ好きだったものが、感覚から理論に変わっていくような気がしました。
また、活動の場も増えていき、卒業後はライブに交通費やギャラが発生するようになり、
インディーズで、自分たちのCDや、他のミュージシャンのCDにも参加させてもらえるようになったんです。
アマチュアから下積みに上がったような感覚で、
漠然とですが、27歳までには、人に雇われない働き方をするという目標を掲げるようになりました。
コスプレとの衝撃的な出会い
そんな風にミュージシャンの下積み活動をしていた25歳のある時、
たまたま深夜番組を見ていたら、コスプレの特集をしていたんです。
その番組の内容が、コスプレをしてクラブに遊びに行くといったものだったのですが、
衝撃を受けたんですよね。凄く面白いなと思って。
ただ、”interesting”というより”funny”という感じでしたね。
「こういう人たちに会ってみたいな」
という冷やかし半分で、友達を誘って、実際にコスプレイベントに参加してみることにしたんです。
バイト先の仲間を10人ほど集め、渋谷の専門店で買った少年漫画のキャラクターのコスプレをして、
ゴールデンウィークに開かれたイベントに参加してみました。
初めてのイベントは、圧倒されることばかりでしたね。
男性の少なさに、最初は居場所がないんじゃないかとも焦りましたが、
同じ漫画のコスプレをしている人に話しかけて、
イベントでのマナーや礼儀などを、教えていただいたり、一緒に撮影をしたり等、
新鮮な体験の連続ですごく楽しかったですね。
本気でプロのミュージシャンを目指しているからこそ、
純粋な息抜きの趣味としても心地よく感じ、
それからは毎週色々なイベントに参加するようになっていきました。
とにかく、自分の知らない新しい事を発見することがとても楽しく、
どんどんコスプレの世界に身を投じていくようになりました。
コスプレ界の第一人者になる為に
そんな風に毎週イベントに参加して、たくさんの方とお会いするなかで、
次第に自分の興味の対象はコスプレからコスプレをしている人たちに移っていきました。
また、数多くのイベントに参加する中で、
自分たち自身、ミュージシャンとしてのライブの企画運営を行っていた経験があったので、
自分だったら、もっと面白いイベントが開けるんじゃないかと考えるようになっていきました。
そこで実際に仲間とイベントを開催してみると、クラブやライブハウスでのイベントのように、やっぱりすごく楽しかったですね。
それに、最初だから収支は合わないものの、音楽のイベントを開くよりも、黒字になりそうな感覚があり驚きました。
ちょうど、音楽活動がお金に繋がらず苦しんでいたからこそ、非常に手応えを感じましたね。
それを機にコスプレへの関心をより強めていき、定期的にイベントを開き、
ブラッシュアップしていくことにしたんです。
気づけば、10年以上追いかけていた音楽よりも、コスプレにもっと強い情熱を持っている自分がいました。
そして、ついに、イベント運営の基盤を作るため、音楽を辞めて、バイト先に正社員として就職することにしたんです。
既にそのタイミングで収支的には合うようになってきており、
一緒に運営する友人と、なんとかなる目処が立ったら独立しようと決め、
平日は会社で働いて、休日はイベントを開催する生活を過ごしました。
そんな週末起業的な生活をしばらくすると、
いよいよイベントの収益が自分の給料を上回るようになったんです。
また、コスプレはまだ誰もが知っているものではないこともあり、
「今この分野を押さえたら第一人者になれる」
と思い、27歳で退職し、28歳で会社を設立することに決めました。
レペゼン・コスプレカルチャー
創業後しばらくは赤字でしたが、とにかく毎日が楽しかったですね。
好きな人たちと好きなことをやる楽しさを体感していましたし、やりがいも感じていました。
また、仕事をしていく中で、コスプレというカルチャーに所属しているという意識が生まれてきて、
自分がコミットしていく使命だと考えるようになりましたし、
誰もしたことがないことをできることが、モチベーションになりました。
HIPHOPの用語で言えば、レペゼン(represent)・コスプレカルチャーという感じです。
現在はコスプレの普及を目標に、
コスプレのイベントの開催や、街でコスプレの撮影ができるためのロケーションのコーディネートを行っています。
他にも、コスプレを通じた行政へのコンサルティング業務や、コスプレの世界大会の日本予選の運営を行ったりもしています。
将来的には、今行っている事をもっと広げていき、
47都道府県どこにいっても同じルールで楽しめる環境を作りたいですね。
というのも、私はコスプレはコミュニケーションツールだと思っているんです。
同じイベントの会場で、同じ作品のキャラクターのコスプレをしている人に出会うと、そこで会話が始まるんです。
そして、同じ作品を好きな人同士で集い合う。
そんな、一目で分かるような表現手法としてのコスプレの文化を広めたいんですよね。
コスプレを通じて、表現、主張することの楽しさを知ってもらいたいですね。
また、個人的な目標としては、自分の経験を元に、特に夢を持っていないような若い方と行動していきたいと考えています。
というのも、私自身ずっと音楽をしていたのに、コスプレと出会ったことで今の自分があり、
行政や大学での講演の機会もいただいています。
正直、こんなことが自分の人生に降り掛かるとは思っていなかったんですよね。
だからこそ、誰でもこういった機会を掴めるということを伝えていきたいなと思います。
そして、好きな人たちと好きな仕事ができている今の状態を、これからも続けていきたいですね。
2014.12.24
柴田 昭
しばた あきら|コスプレのロケーションコーディネート、イベント事業運営
コスプレのイベント開催、ロケーションコーディネートなどを行う、株式会社ミネルバの代表を務める。
株式会社ミネルバHP
編集部おすすめ記事2019.10.11
編集部の伊藤です。秋は悩みの多い季節と言われます。例えば、ファッション。先週真夏日があったと思ったら、今週は台風到来と秋は天気が激しく変わるので、何を着るか悩みますよね。でも、そこで無難なファッションを選ぶと気分が上がらない。ファッションが心理状態に与える影響の大きさは様々な研究が示していますが、実はanother life.にもその実例があるんです。今回は、ファッションをきっかけに自分に自信がついた3名のストーリーをご紹介します。ぜひご覧ください。
寝たきりの17歳と社会を繋いだファッション。恩返しのためにパイオニアとして切り拓く道。
ファッションを通じて自信を取り戻してほしい!コンプレックスをチャームポイントに。
人生にBefore/Afterを!「短髪・体育会・ジャージが私服」だった私だからできること。