究極の目標は自分の職業が無くなること。
ベンチャー出身カウンセラーが切り拓く選択肢。
メンタルヘルスコンサルタントとして、悩みを抱える社会人・学生のカウンセリングを行う青田さん。学生時代から心理学に関心を抱きながら、あえてベンチャー企業に就職し、複数の転職内定を断る形で独立した背景には、どんな思いがあったのでしょうか?お話を伺いました。
青田 忠矩
あおた ただのり|メンタルヘルスコンサルタント
メンタルヘルスコンサルタントとして、社会人・学生に向けて、
心が弱っている人のカウンセリングである「メンテナンス」、
コーチングやトレーニングを含めた、「プランニング」を行う。
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心理学に魅せられた学生時代
私は、福島県双葉郡に生まれ育ちました。
小学生からはサッカーに打ち込み、どちらかというと外で遊ぶのが好きなタイプでしたが、
ある日テレビ番組を見て、心理学に興味を持つようになったんです。
いわゆる心理テストを扱うテレビ番組だったのですが、単純にその内容をとても面白く感じたんですよね。
その後、中学生になると、プロファイリングを題材にした漫画を読み、
心理捜査官が事件を解いていく姿を見て、人間を分析する仕事にかっこよさを感じるとともに、
道具等を使わず自分のスキルだけで解決していくこともあり、
「これだったら頑張れば自分でもなれるんじゃないか?」
と思うようになったんです。
正直、小学校からやっていたサッカーでは自分の才能の無さを感じていたのですが、
この仕事はきっと違うと感じたんですよね。
高校になっても心理学への関心は変わらず、犯罪心理学への関心から、
神戸連続児童殺傷事件の書記等を読み、カウンセリングにも興味を持つようになりました。
それまでは漫画くらいしか読まないタイプだったのですが、
それ以来、カウンセリングに関わる本も読むようになりました。
その後、進路について考える時期になると、心理学を大学で学ぼうという気持ちは固まっており、
逆にそれが勉強できればどこでもよかったこともあり、
たまたま、自分がよく読んでいた本の著者がいる大学のページを開いたのをキッカケに、
東京の私大に進学することに決めました。
大学時代は、バイトや遊びをしつつ、心理学の勉強に打ち込みました。
特に、考え方と行動の変化について扱う、認知行動療法を専門に勉強するようになりました。
また、元々あまり他人に感情移入をせず、意見等も言わない性格だったため、
友人からよく相談を受けるようになったんです。
自分自身、人の相談を受けることには嬉しく感じていましたね。
そんな背景もあり、大学を卒業した後は院に進学し、カウンセラーになりたいと考えました。
しかし、仮にカウンセラーになった場合、どう考えても対象者は自分が経験していない社会人が中心だったし、
何より、業界の倫理規定で、自分と親しい人をカウンセリングしてはいけないというルールがあったんです。
そして、私はそのルールに疑問があったんですよね。
実際に、私自身が価値を提供したいと考えるようになったのも、自分の身近な人のためでした。
だからこそ、考えた結果、院には進学せず、一度社会人を経験することに決めたんです。
就職先の選択基準は、純粋に、楽しそうなところと決め、たくさんの説明会に足を運ぶ中で、
ある携帯電話業界のベンチャー企業を見つけました。
その会社は人事の方がとても面白く、まるで哲学者のような熱い考えを持った社長にも魅力を感じ、
そのまま入社をすることに決めたんです。
「辞めないでくれ」と言われるまで意地でも働く
実際に働き始めると、ベンチャーでの仕事はとても大変でしたね。
扱う商品である携帯電話の機種は半年ですぐに変わり、通信業界の法律もちょくちょく変わるため、
覚えることが異常に多く、もの覚えの悪い私にとっては、とても苦労する日々でした。
あまりに仕事ができず、クビになりかけたこともありました。(笑)
それでも、人一倍覚える努力をし、意地で働きましたね。
元々社会人経験を積んで心理学の業界に戻る気ではいたものの、
すぐに辞めて、逃げたと思われるのが嫌だったので、
「辞めないでくれ」と言われるようになってから辞めようと決めていたんです。
また、チーム一体となって働き、お客さんにありがとうと言われた時はやりがいを感じましたし、
大変でしたが、仕事自体は楽しい日々を送ることができました。
そうして、同じ店舗で働くこと4年、店長を務めることになりました。
とにかく目の前の仕事を一生懸命にやり、モチベーションが上がったり下がったりすることはありませんでしたね。
そして、店長として1年働いた後に振り返ってみると、目標はすべて達成でき、
結果も出すことができました。
しかし、この先のことを考えたとき、店長を続けるというビジョンは無かったんですよね。
今辞めても、誰も逃げたと言わないし、
例えば、退職後2年間専門学校等に通ったとしても、
27歳の今始めれば、その後まだ転職できるという感覚もありました。
そんな考えのもと、5年目にして会社を退職することに決めました。
2度目の違和感と独立の決断
そんな風にやりたいことをやろうと心理学に戻ることに決め、
具体的にどんな形で関わろうか考えた結果たどり着いたのは、
会社で産業カウンセラーとして人に関わることでした。
自分自身、現場で社会人として働いたからこそ、「社会人は病む」というイメージが明確に持てたんですよね。
実際に周りの友人を見ていて、「何かしたい」と思ったこともあったのですが、
学生時代に身に着けた知識はありながらも、実践には隔たりがあったんですよね。
だからこそ、それならスキルを身に着けようという考えを抱くようになり、
EAP(Employee Assistance Program)という、
職場の複雑な人間関係などによってかかるうつ病などを回避させるために、
企業が外部団体と契約して社員の心の健康をサポートする従業員支援プログラムのスクールに通うことに決めました。
実際に心理学の現場に戻ってみると、働く側の視点が持てた分、
現実的な施策の可否等も考えることができ、
「よかった、社会人やっていて」
と感じましたね。
それからは実際に仕事につなげていくため、
資格を取ったり、色々な人に会ってカウンセリングの練習をしたりするようになりました。
その後、転職活動を行い、人事コンサル等を中心に、産業カウンセラーに携わる複数の会社に内定をいただくことができたのですが、
いざ就職を考えると、やはり昔と同じく、ある種「お客さんを選ぶ」ような感覚に違和感を感じてしまいました。
そして、それなら自分で選びたいという思いを抱くようになったんです。
それまでは独立等を考えたことは無かったのですが、
もし失敗しても後戻りできると感じていたこともあり、
「とりあえずやってみよう」
と、28歳の2月、独立することを決めました。
究極的には自分の職業を無くしたい
実際に独立をしてみて感じたのは、
病んでいる人の数が、予想していたよりも更に多いということでした。
ニーズの調査等も兼ねて、4月の開業以降、まずは会社でなく個人で活動していたのですが、
暇だと想定していた4月・5月から普通に依頼が入ってきたんです。
需給のバランスが合っていなく、カウンセラーが足りていないなと感じましたね。
現在は、メンタルヘルスコンサルタントとして、
心が弱っている人のカウンセリングである「メンテナンス」に加え、
コーチングやトレーニングを含めた、「プランニング」も行っており、
基本的には紹介をベースに、社会人も学生も男女問わず個人を対象にカウンセリングを行っています。
いただく相談の中でも、内容によっては、現実的に解決が不可能なこともあります。
例えば、人間関係の場合、第三者が介入しているので、その人を変えることは無理なんです。
だからこそ、私は、カウンセリングの最終的な目的は「解決」ではないと考えています。
「なぜイライラしているのか?」
「なぜうまくいかないのか?」
という原因に気づいてもらうことで、
事象が変わらなくても、気持は変わると思うんですよね。
実際に、お客さんが自身の悩みの原因に納得し、
表情があからさまに変わる瞬間を見れたときは、とてもやりがいを感じますね。
やっぱり、やっててよかったな、と思います。
今後は人事コンサルとして法人化して活動を展開していきたいと考えています。
現在、多い日は1日4人に会うこともあるのですが、そろそろ1人での活動に体力的な限界も感じていますし、
1対1のカウンセリングも大事ですが、それを予防するには環境調整がより重要だと思うんです。
そんな風に多くの人の悩みと向き合っていき、
究極的には自分の職業を無くしたい、というのが目標ですね。
2014.12.08
青田 忠矩
あおた ただのり|メンタルヘルスコンサルタント
メンタルヘルスコンサルタントとして、社会人・学生に向けて、
心が弱っている人のカウンセリングである「メンテナンス」、
コーチングやトレーニングを含めた、「プランニング」を行う。
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