仕事も子育てもどっちも楽しんでやりたい。
やりたいことを、諦めなくていい社会を!
子育てと仕事を両立できる社会を目指し、キッズスペース付きのシェアオフィスのコミュニティマネージャーを務める篠山さん。「やりたいことを諦めてほしくない」と語る背景には、どんな経験があったのか。お話を伺いました。
篠山 美季
ささやま みき|シェアオフィスのコミュニティマネージャー
キッズスペース付きのシェアオフィス「Hatch Cowork+KIDs」のコミュニティマネージャーとして、
シェアオフィスの管理やイベントの運営を行う。
Hatch Cowork+KIDs
個人Facebook
結婚式場を経営したい
私は大阪で4人兄弟の末っ子として生まれました。
小さい頃から好奇心旺盛で、何でもすぐにやりたがる子どもでしたね。
ただ、母は小学校の先生、父は大学の職員と教育一家で末っ子だったこともあり、
やりたいと言ったことを否定はされることはなく、「どうしてそれをやりたいと思うの?」といつも聞かれていました。
母は問題解決型学習なんて呼んでいて、このおかげで自分でものごとを考える癖がついていきました。
そんな感じでやりたいと思ったことをどんどんやっていき、
ピアノ、水泳、習字、塾、体操ダンスなど、本当に様々な習いごとをさせてもらっていました。
兄や姉は個性的で自分には敵わないことがたくさんあったので、どの部分だったら認めてもらえるかを探していたような気もします。
そして中学3年生の頃、2番目の兄が結婚した時に、将来は結婚式場を経営したいと思うようになりました。
以前から将来はブライダル関係の仕事がしたいと思っていたのですが、結婚式に参加した時に自分で経営したいという気持ちが大きくなりました。
その理由は2つあって、1つ目は1番上の兄が結婚した当時、時間的にも金銭的にも厳しく、結婚式を挙げていなかったからです。
結婚式を挙げたいと思った人が諦めずに、誰でも開催できるような結婚式場をつくりたいと考えました。
もう1つは、ただ単純に人の幸せをプロデュースする仕事は、きっと幸せに違いないと思ったんです。
できないことなんてなかったんだ
高校生になると、経営者になるために実学が学べる大学に進学したいと考えていました。
そして、3年生の夏、アントレプレナー養成講座のある大阪経済大学のオープンキャンパスに行き模擬講座を受講しました。
その時、担当の教授が「この中で社長になりたい人はいる?」と聞き、私は手を挙げました。
すると「今手を挙げる勇気のある人は社長になれますよ」と言って授業が始まったんです。
この一言に痺れてしまい、この大学に入ることを決めました。
そして大学に入ってからは結婚式場でアルバイトも始めました。
結婚式場での仕事は華やかそうに見える反面、本当に忙しく大変なものでした。
自分が幸せでないと、心から人の幸せをサポートすることはできないと考えていたのですが、
自分の心が疲弊していると感じる瞬間もありました。
ずっと夢見ていたものに対して挫折を感じ、その後の大学生活は、ダンスサークルの練習にのめり込み、授業にはあまり出ませんでしたね。
しかし昔から悩んだ時には、ひすいこたろうさんの『3秒でハッピーになる 名言セラピー』という本を読んで元気を取り戻していました。
この時、こんな心を動かす本をかける著者はどんな人なのだろうと、思い切って「感想はこちらまで」と書いてあったメールアドレスに「是非お会いしたいです」とメールを送ってみたんです。
すると、1時間も経たないうちに本人からメールが来て、東京である講演会と懇親会のことを教えてくれたんです。
今までは何かしたいと思っても「できない」と決めつけて足踏みしていましたが、
「行動すれば会いたい人にだって会える!できないことなんてないんだ!」と実感できた瞬間でした。
仲間と一緒に働くのが好き
また、私の通っていた大学は、本当に色々なことを教えてくれた場でした。
その東京での講演会がテストの日とかぶっていたので大学の事務局に相談に行った時、
「職員としてはテストを受けてと言うけれど、個人としては講演会に行ったほうが良いと思うよ」と背中を押してもらえたんです。
この学期の所得単位はゼロでしたが。(笑)
いろんな教授や職員さんのおかげで自分の学びたいことを思いっきりやらせてもらえ、もう一度学ぶことが楽しいと思うようになりました。
そういう気持ちにさせてくれたことに、心から感謝しましたね。
また、ダンスサークルの練習場所が工事の関係でなくなってしまった時も、
最初は「1つのサークルだけを優遇できない」と言って学内で練習する許可が降りなかったものの、
何度も提案と相談を繰り返していくうちに、条件付きで練習を認めてもらえました。
結果を出すまでとことん考えて提案していく経験をさせてもらったんです。
一方で、ホテルでアルバイトもしていて、そこでは自分の仕事観を知ることができました。
ホテルでは会員獲得のために営業する仕事もあり、私と同い年の子ですごく成績が良い子がいました。
私は負けず嫌いだったので、追いつくためにどうしたら会員になってもらえるか考え、工夫を続けました。
また社員の人も私の競争心を煽るかのように、それまで出していなかった個人成績を可視化してくれたんです。
すると、私はどんどん仕事にのめり込んでいきました。
最終的にはその子の成績に追いつき、ホテルもグループの中で一番良い会員獲得数を収めることができました。
この時、私は競争することや本気で仕事に打ち込むのが好きで、
何よりも「頑張りたい」と思える仲間と一緒に働くことが仕事への最大のモチベーションなんだと気づいたんです。
仕事と子育てが両立できる社会
就職活動の時期を迎えると、自分の通っていた大学の職員になりたいと考えるようになりました。
私自身が大学で色々なきっかけをもらって変われたように、学生に影響を与える仕事をしたいと思ったんです。
この大学で働けないなら就職はせずに留学に行こうと考えるほどで、
ホテルやブライダル業界など他のお話をお断りし、一本勝負で採用試験を受けることにしました。
しかし、結果は不採用でした。
「これは世界を見に行くべきというメッセージだ!」とポジティブに考え、予定通り大学を休学してカナダのトロントに留学することにしました。
お金がなかったのでワーキングホリデーのビザで入国し、イタリアングロサリーショップや日本食居酒屋で働きながら、
語学学校に行ったり、ダンスサークルの仲間に入れてもらって踊ったりして過ごしていました。
最初の1ヶ月はホームステイをしていて、ホストマザーは自宅でカイロプラテックのビジネスをしていました。
そこでホストマザーに聞いたママ友だちの働き方は、私にとって衝撃的でした。
仕事中に「子どもの参観日だから」とか「子どもが熱を出したから」と言って帰るのが普通で、職場はそれを受け入れるのがあたりまえといった空気だったんです。
日本だったらバツの悪いことも、カナダでは「子育てしながら働くってそんなもんでしょ?」と普通だったんです。
また、公園では子連れパパの集会が度々あるそうです。
奥さんが起業家だったり、士業の人だったりするパパが子育てに専念して、昼間に公園で「僕の奥さん素敵でしょ?」と自慢しているのです。
純粋に、キュンとするほどいいなーと感じました。
そして、それと同時に日本だったらこういうマインドの人は、まだ受け入れられない空気だろうなぁと。
私自身も将来、子供が出来ても働き続けたいと思っていました。
というのも、10歳の頃に一番上の兄の子どもの面倒を毎日見ている時期があり、育児ノイローゼになったことがあったんです。
自分も子どもだったので不思議なんですが(笑)、育児だけに向き合いすぎて、結果的に自分自身も大好きな甥っ子も追い詰めてしまいました。
この時の経験から、自分は母のように仕事と育児と両方する方が合っているのだと確信したんです。
ただ、カナダでは働き方の多様性があるけど、日本社会では実現できるのか、
モヤモヤした気持ちを持ったまま10ヶ月の留学から帰国することになりました。
ワクワクが止まらない
帰国してからは就職活動を再開しました。
そんな時、東京に住んでいた先輩から、起業家と投資家がピッチ(プレゼン)をするイベントに誘われ、
その先輩がもうすぐ海外駐在になることが決まっていたので、会いに行きがてら参加させて頂くことにしました。
すると、キッズスペース付きのシェアオフィスをしている人がいて、
「子どもがいるから仕事を諦める」「仕事があるから子育てを諦める」ということを無くし、どちらも両立できるというロールモデルを提示したいという話をしていました。
私がまさに問題意識を感じていたことだったので衝撃を受け、その場で名刺交換をして、後日そのシェアオフィスを見せてもらいました。
すると、そこにはママ起業家、独身の人、男性、外国人ビジネスマン、子どもなど、様々な人がいて、皆が隔たり無くフェアに働いていました。
「この空間なら日本を変えることができる」とワクワクが止まらなくなってしまいました。
そして、社長に頼み込んでそのシェアオフィスのコミュニティマネージャーとして働かせてもらうことにしました。
新卒で何もスキルがなく、しかも起業をするために5年間という期限までつけていたのに、
受け入れてくれた社長やスタッフ、シェアオフィスの会員さんには本当に感謝しました。
やりたいと思うことを諦めない社会
そして今はその「Hatch Cowork+KIDs」という赤坂にあるキッズスペース付きのシェアオフィスのコミュニティマネージャーとして働いています。
この場所は、子育てと働くことを両立させることができる場所として存在していて、
入居している人は子どもを連れてくることができます。
Hatchの会員さんはキッズスペースで子どもの側で仕事をしたり、ミーティングをしたり、
時にはベビーシッターさんを連れてきて自分は仕事に打ち込んだりと、自分らしいスタイルで子育てと仕事をされています。
またうちのスタッフも子連れできているので、他の子と一緒に遊んでくれています。
この場所からロールモデルを排出していくことで、「こういう働き方もありなんだよ」と示すことができると思っています。
これを今後子育てもキャリアもあきらめないパパ・ママの1つの選択肢として当たり前にしていきたいと思っています。
また、会員さんは起業家が多いのですが、入居者同士が交流していくことで新しいビジネスが生まれる場所になると考えているので、交流イベントも色々と企画しています。
まだまだ未熟者ですが、コミュニティマネージャーとしてもっと良い空間を創っていけたらと思います。
そして将来はやはり自分でチームをつくり、スタイルに因われず仕事がしたいと思っています。
普通に生きていると、何かをしたいけどできなくて不便だと感じる瞬間、
これが当たり前になっているけど、この方がみんなハッピーだよねっていうことがたくさんあると思います。
そのちっちゃな常識を覆し解決していく仕事を、好きなメンバーと一緒にしていきたいです。
昔はそれが結婚式というジャンルだったし、今は子育てと仕事の両立というのがテーマ。
そして将来は何が見つかるかはまだ分かりませんが、「人が何かをやりたい」と思った時に、
それを阻害して諦めざるを得ない状況にしているものを解消していきたいです。
2014.12.02
篠山 美季
ささやま みき|シェアオフィスのコミュニティマネージャー
キッズスペース付きのシェアオフィス「Hatch Cowork+KIDs」のコミュニティマネージャーとして、
シェアオフィスの管理やイベントの運営を行う。
Hatch Cowork+KIDs
個人Facebook
編集部おすすめ記事2019.10.11
編集部の伊藤です。秋は悩みの多い季節と言われます。例えば、ファッション。先週真夏日があったと思ったら、今週は台風到来と秋は天気が激しく変わるので、何を着るか悩みますよね。でも、そこで無難なファッションを選ぶと気分が上がらない。ファッションが心理状態に与える影響の大きさは様々な研究が示していますが、実はanother life.にもその実例があるんです。今回は、ファッションをきっかけに自分に自信がついた3名のストーリーをご紹介します。ぜひご覧ください。
寝たきりの17歳と社会を繋いだファッション。恩返しのためにパイオニアとして切り拓く道。
ファッションを通じて自信を取り戻してほしい!コンプレックスをチャームポイントに。
人生にBefore/Afterを!「短髪・体育会・ジャージが私服」だった私だからできること。