立ち止まる事で、前に進めました

忙しい日常を離れ、自然の中でゆっくりと内省する機会を提供する「リトリート」を推進する生田さん。人生の岐路に立つ人が、自分の軸を見つけて次の一歩を踏み出すためのキッカケ作りを行っています。それを始めようと思った、生田さん自身の「軸」についてお聞きしました。

生田 早智江

いくた さちえ|キックオフ・プロデューサー
One&Onlyの代表として、学生・社会人向けのセミナー・ワークショップ開催や、
人生の岐路に立つ人に、忙しい日常を離れ、自然の中で自分と向き合う機会を提供する「リトリート」の運営を行う。

One&Only

「自分は何者なのか?」アイデンティティー喪失時代の到来


小学生の頃から正義感が強かったです。
生意気だった事もあり、いじめられたり、クラス全員を敵に回した事もありました。
でも、相手にしてなかったこともあり、全く堪えなかったんですよね。

中学生になった頃、親の転勤で引っ越しが決まりました。
当時愛知に住んでいたのですが、引っ越し先はハワイでした。
当時は状況がよくわからず、「ところでハワイってどこ?」という感じでしたね。(笑)

引っ越してから、現地の学校に通い始めたのですが、
全然言葉が通じないんですよね。
話せないだけでバカにされることに屈辱をうけました。

なんというか、自分の居場所がなくなるような感覚で、
そもそも私は誰?なんでここにいるの?
という質問を自分に繰り返しました。

なにより、「あなたはどう考えているの?」「あなたの夢は?」と、
日本では問われた事のない質問がどんどん飛んでくるんです。
初めて考える事ばかりでした。

当時はとにかく負けたくないという一心でした。
英語が出来ればバカにされないと思い、人生で一番勉強しましたね。
あとは、たまたまピアノが弾けた事もあり、先生に勧められ吹奏楽のバンドに入り、
音楽を通じて周りと馴染んでいく事が出来ました。

「出来ること」を突破口に、自分も自信をもっていられる居場所が出来た気がしました。

「自分は何が出来る?何がしたい?」がスタート地点


努力した甲斐もあり、高校卒業が近づく頃には、これまでの成績や音楽への取り組みが評価を受け、
アメリカ本土の有名大学からオファーをもらう事が出来ました。
でもそこで、ふと立ち止まってみたんです。
そのままアメリカにいても良かったし、日本に戻る選択肢もある。
自分は何をしたいのか、考えたんですよね。

すごく明確にやりたいことがあった訳ではなかったのですが、
唯一出てきたのは、「自分は日本人だ」ということでした。
当時はバブル後だったこともあり、日本のために何か出来ないか、
なんとなく考えるようになったんですよね。

結果、たどりついたのは日本で英語の先生になろうということでした。
自分自身の経験からも、英語を通じて触れる情報が増え、
可能性を広げることが出来るような気がしたんですよ。
教職を学ぶため、日本の大学に進学しました。

英語の教師になるべく、教職課程をとり、教育実習に進んだ頃、
ある女性のベテラン教師に出会いました。
会社で働いて、結婚・子育てを経てから教師をしている方で、
お話を伺っているうちに、教師になるのは、社会を見てからでもいいんじゃないか、
と思うようになったんですよね。

その出会いをキッカケに方向転換し、就職活動を始める事に決めました。

自分の人生を自分の足で歩むという感覚を大切にする


裁量や意見が通る環境を求めて就職活動を行い、紳士服のアパレル企業に入社しました。
そこは若くてもやる気があれば色々とまかせてくれる風土で、とても相性が良かったです。

本当に何でもやらせてくれるような感じでした。

ところが、何でも出来る分、「自分は何が出来る」と言えない感覚がありました。
そんな迷いを抱え、改めて自分のことを考えると、
高校時代に掲げた、「日本を教育で元気にする」という想いがもう一度沸き上がってきたんですよ。
教育への気持ちが再燃しました。

ちょうどそんな時に、次世代リーダー育成を掲げるNPOからスカウトメールをいただき、
それを機に転職する事に決めました。

NPOでは、経済界のトップを巻き込み、ビジネスリーダーの育成に本気で取り組みました。
スケールの大きなプログラムの運営を行う中で、尊敬できる先輩方の姿に感銘をうけましたね。

ところが、大きなプログラムを動かしている反面、自分自身は、
実は何も出来ていないんじゃないかという危機感に襲われました。
すごいことが行われているのだけれども、自分とは遠い感覚があったんです。

再び、「私は何が出来るんだ?」という問いが生まれました。

日本を教育を通じて元気にしたい、という思いに対して、
もっと等身大に行動を起こしたかったんですよ。
自分が、目の前の人に対して価値を提供できる感覚が欲しかったんです。

それから、コーチングやキャリアカウンセリングを学び始め、
商業施設など接客現場で働く人たちを抱える企業の人材教育コンサルに転職しました。
研修の講師などを務めながら、営業や採用の支援を行い、
やっと、自分の力で地に足をつけて、人に価値を与える実感が持てたんです。

本当に、「やっと」という感覚でした。

立ち止まる時間をつくることで見えてくる「自分軸」


自分の力で価値を提供しているという感覚が持ててからは、
提供価値を広げていくためには、会社という組織に制限があると感じ始めました。

また、色々な仕事に携わる事で、広く「教育」から、自分の人生の選択に関わるような、
いわゆる「キャリア教育」に、関心がフォーカスされていったんですよね。

そんな背景もあり、フリーランスとして独立することに決めました。

今は、自分の人生を自分で切り拓く日本人を増やすために、
「自分軸」を作るためのサポートを行っています。

その中でも特に、人生の岐路にいる人たちが一歩踏み出すところに価値を提供したいという思いから、
日常を離れ、海や山など、自然の中で自分を考える時間をつくる、「リトリート」という活動に力を入れています。

人間って、一度レールに乗ると走り続けてしまい、走り切った後に問題に気付くことが多いと思うんです。
だからこそ、走り出す前や走っている途中で、立ち止まる時間を意図的につくることが大事だと思います。
自分のために時間を作ってあげる事で、心が豊かになると思うんですよね。

立ち止まり、自分のことを考え直すのは、私自身繰り返し行ってきた事なので、
痛みも分かるし、寄り添うことも出来ると思うんです。

私も、何がしたいのか、何が出来るのかを考え続け、何度も立ち止まり、
やっと今、やりたいことの「核」を掴んだ気がします。

これまではその核の周りをぐるぐる回っていたような感覚です。
でも、全部意味があったと思えるんですよね。

だから、まさにこれからなんです。

2014.03.22

生田 早智江

いくた さちえ|キックオフ・プロデューサー
One&Onlyの代表として、学生・社会人向けのセミナー・ワークショップ開催や、
人生の岐路に立つ人に、忙しい日常を離れ、自然の中で自分と向き合う機会を提供する「リトリート」の運営を行う。

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