きっかけは自分自身が受けたショックでした。
脇役から主役へ、目指せ50代大移動。
長年勤めた会社の定年間際に、今まで経験したことが無い新規事業立案を行うことになった斧さん。考えては落ち込むという暗闇を走り続けた先に見出した、これからの目標についてお話しを伺いました。
斧 靖彦
おの やすひこ|働く50代のサポーター
システムサービスを提供する企業で勤める傍ら、50代のビジネスマンに向けてのキャリア事業を企画中。
ゼロからのスタート
学生時代から、特別に「これをやりたい!」という志を持っている若者ではありませんでした。
そんな中でも英語だけは何故か魅かれるものがあり、高校卒業後は英語の専門学校に進みました。そして就職の時期を迎えても「これをやりたい!」ではなく、軽い気持ちでふと目に留まった求人広告へ応募し、社会人となりました。
もともとの募集は経理課でしたが、システム部に欠員があるという理由でそちらに配属となりました。私自身プログラミング等の経験もなく、コンピュータ自体も世に出始めた頃だったので、全く新しいことを学びながら仕事をする日々を送っていたのですが、入社後1年も経たないある日の夕方、頼りにしていた上司の異動を会社から突然伝えられ、まさに青天の霹靂でした。
更には「これから、システム全体の面倒をみてほしい」とも言われ、余りの衝撃の大きさとその期待に対する不安から、「会社を辞めよう」と考えその思いを伝えたのですが、最終的に会社がフォローするということで仕事を継続することになったんです。
それからは、一日一日を無事に何とかやり繰りすることで精一杯、毎日夜遅くまで頑張りましたね。
お陰様で初めは到底無理と思えたことも、毎日の経験の積み重ねで乗り越え、少しずつ成長を感じ、仕事の理解も深まるようになっていきました。
苦労した甲斐があった
それから20年近くその会社でお世話になり、40歳を迎えるころ、知り合いから転職の声がかり、年齢的にも「ラストチャンスだなぁ」と感じ転職を決めました。
転職して初めての仕事は、会計システム案件でした。実はこの会計の仕組みが中々覚えられなくて、前職の先輩から何度も指導してもらい、苦労して覚えたシステムだったんです。
不安だった転職直後にその案件を担当することで、前職で辛い思いをしながらも習得したことが時を経て活かせたことがとても嬉しかったですね。それからは、数社の会計システムを支援する機会に恵まれました。
50歳になってからは営業の仕事が増えるようになったのですが、営業専任とはいかず、開発の仕事も行うという、二刀流でお客さまに接していきました。状況によってお客さまへ常駐することも行うようになっていきました。
定年間際、会社からの思わぬひとこと
60歳を超え、ちょうど1年間の常駐契約期間が終わったころ、突然会社からの招集がありました。いつもと違う雰囲気の中、突然、「戻ってから何をやりますか。また、何か新しい事業を考えてくれませんか?」と言われたんです。
突然の問いかけに驚き、そして「う~ん」と唸ってしまいました。
思えば、社内を見渡して60歳以上は、私ともう1人だけだったんです。会社としても、初めての60代社員を抱えるということもあり、どうやって扱ってよいやら、大いに考えての問いかけだったんだと思います。
初めはショックを受けましたが、いつまでも止まっていられないと考え、会社から叱咤激励を受け、とにかく新規事業を考えるべく始動することにしました。
そこで、最初は、何でもいいから事業を100個出すことから始めたんです。思ったより選出するのに苦労しましたが、関心を持てて自分にできそうかなと感じた事業を検討しようと考え、自転車屋さん、掃除屋さん、通販という3つの事業を選びました。
そしてその業界や現場の人に聞き込みなどを行い、それを基に構想を練り、ある程度できた段階で、構想を会社へ報告しました。
実際に報告を終えると、最後に経営陣から「この事業は自分が投資をしてまでやりたいと感じますか?」と問われました。
そして私は、「やりたい」と即答することができなかったんですね。自分の中に迷いがあり「どうしてもやりたい!」までの気持ちにはなれないことに気が付きました。
それからは、もう一度気持ちをフラットにしてゼロから企画を考え直すことにしたのですが、「60歳超えてから何かをやるってきついよな、もうあと10年若かったらなぁ。」と、つくづく思いましたね。
しかし、この想いが新規企画のきっかけになったんです。「60歳ではきつくても、50代の早いうちならもっと柔軟な考えを生み、もっと前向きな行動がとれるのではないか」という考えが生まれました。
自分の回りの50代を思い浮べつつ、彼らに私の想いを送ることができないかと考えるようになっていったんです。
将来の60歳へ、自分ができることとは
漠然と、「50代の方々に想いを伝えたい」と考えつつ、企画の中身が中々埋まりませんでした。
そんな試行錯誤を繰り返す最中、全社員に向けて発表する機会があり、この企画の想いを伝えることができました。発表後には50代社員へ感想(アンケート)を聞いたのですが、ほとんどの人が将来への悩みを抱えているということがわかったんです。
何か新しいことを覚えることの必要性は感じていても、新たに一歩踏み出すことのためらいなども強く伝わってきました。
また、企画を通じて、ハローワークにも足を向けて、シニア層の仕事についていろいろと関心を持つようになりました。ただ調べれば調べるほどに、60歳を過ぎてからの就業が極めて困難という現実を突きつけられました。改めて、50代のみなさんに伝えるべきことがある、と強く感じましたね。
脇役から主役へ、50代大移動に向けて
現在50代のみなさんには、早いうちから、これからの会社人生をどう過ごすのか、自分で気づき、自分で考え、自分の意志で行動をしてもらいたいと思っています。
その結果として、ひとりでも多くの50代60代が、これからも企業に貢献できる目標を立てて実行し、「脇役ではなく主役として活躍すること」を実現していってほしいです。
これからの社会は70歳まで働くことが当たり前になるかもしれません。そうした社会的背景も踏まえて、50代で考え行動したことで60代をいきいきと働き、会社や社会、そして個人にとってもプラスなればいいなぁと考えています。
私はこれまで「これだっ!」と強い意志を持って進めたことは殆どありませんでしたが、今後はこの思いの実現に向かって、機会の場の提供やサポートなど、自分ができることから動くつもりです。
私自身、「何か、新しい事業を考えてくれないか?」と会社から問いかけを受けたからこそ、目標を持つことができ、充実した今に至っています。
まだまだ駆け出しではありますが、自分と同年代そして50代のひとりでも多くが、目的・目標を掲げて新たな一歩を踏み出しこれから70歳まで活き活きと仕事ができるような世の中にしたいですね。
2014.10.29
斧 靖彦
おの やすひこ|働く50代のサポーター
システムサービスを提供する企業で勤める傍ら、50代のビジネスマンに向けてのキャリア事業を企画中。
編集部おすすめ記事2019.10.11
編集部の伊藤です。秋は悩みの多い季節と言われます。例えば、ファッション。先週真夏日があったと思ったら、今週は台風到来と秋は天気が激しく変わるので、何を着るか悩みますよね。でも、そこで無難なファッションを選ぶと気分が上がらない。ファッションが心理状態に与える影響の大きさは様々な研究が示していますが、実はanother life.にもその実例があるんです。今回は、ファッションをきっかけに自分に自信がついた3名のストーリーをご紹介します。ぜひご覧ください。
寝たきりの17歳と社会を繋いだファッション。恩返しのためにパイオニアとして切り拓く道。
ファッションを通じて自信を取り戻してほしい!コンプレックスをチャームポイントに。
人生にBefore/Afterを!「短髪・体育会・ジャージが私服」だった私だからできること。