自分の目で確かめなきゃ、気が済まなかったんです。
フランスへの日本製品販売のコンサルティングを行う、Jeanさん。 日本への移住を決断したきっかけは、東日本大震災でした。 何を思って日本を訪れ、どんな気持ちで働いているのか、お話を伺いました。
Jean-Marc Boyer
ジャン マルク ボワイエ|商品販売コンサルティング
フランスに日本製品を売る際のコンサルティングに加え、
日本の着物をフランスに広めるためのイベント等の取り仕切りも行っている。
まるで新世界に来た感覚
日本に興味を持ち始めたのは、8歳の時にフランスのテレビで見た、ドラゴンボールでした。
幼い頃から、日本のアニメが大好きでした。
大人になっても変わらずアニメが好きだったのですが、
ある日、アニメを見ていて、よく意味がわからない箇所があったんです。
おそらく、日本の文化だったり、歴史的背景を知らないと理解できないのだと感じました。
大好きな日本のアニメをしっかりと理解したい。
そんな思いから、日本について熱心に調べはじめたんです。
知れば知るほど、日本の文化は興味深くて、もっと日本のことを知りたいと思うようになっていきました。
そんな時に、たまたま私の妹が日本に留学することになり、
私も妹と一緒に滞在することが決まりました。
初めて日本に来たときは、“Wow!”の一言でした。
まるで、新世界に来た感覚とでも言わんばかりで、本当に全てがフランスと違っていました。
日本は盗難の心配もないし、町もきれい。中でも、一番驚いたのはコンビニでした。
朝の2時でも空いている店がある!それに何でも売っている!!
フランスではそんな店があるなど、考えられないことでした。
すぐに日本という地の虜になってしまいました。
5週間の滞在期間が終わり帰国する際は、本当に嫌々でした。(笑)
「東北のリアル」をフランスに伝えなければいけない
フランスに帰国して、いつもの生活に戻ってしばらくたったある日、
東日本大震災が起こりました。
フランスでも毎日大きなニュースとして取り上げられていました。
メディアでは、毎日毎日、日本の原発がいつ爆発するのか?と、
ある種おもしろ半分のように、報道を繰り返していました。
でも、本当にメディアが正しいことを言っているのか、疑問に思ったんですよ。
自分が感動した、新世界のように感じた日本は、今どうなっているんだろうと、すごく気になったんです。
自分の目で、日本がどうなっているのか知りたいと思ったんですよ。
多くの外国人が日本を離れていく中、私は東北に向かいました。
あの時見た東北の光景は、本当に衝撃的でした。
フランスで報道されていたものとはまったく違う東北の姿が、そこにはあったんです。
苦しんでいるばかりだと思っていた被災地の方は、笑顔だったんです。
生きることに、全く諦めていなかったんです。
この現実に直面した時、自分が「東北のリアル」をフランスに伝えなければいけない、そう思いました。
私は、フランス人向けに、東北の動画を作ることにしたんです。
そして、フランスで何度も見ていたあのメディアと同じにならないよう、
東北の「原発」ではなく「人」にフォーカスしました。
ところが、作ると決めたはいいものの、日本語も話せないし右も左もわからない。
いきなり困ってしまいました。
驚いたことに、そんな私に、多くの人が協力してくれたんです。
ビデオのインタビューに快く協力してくれた方、
どこに行けばいいかわからない私に道を教えてくれた方など、
数えきれないほどの人のお世話になりました。
日本人のこころの温かさを感じた瞬間でした。
多くの人の力を借りて、無事動画をとり終える事が出来ました。
でも、私の心は、揺れていました。
このまま日本に移り住むか?フランスに帰国するか?
旅行することとそこで暮らすことは違います。
移住したことで、日本の嫌な部分が見えて、嫌いになったらどうしよう、
という懸念点があったんです。
迷った部分もあったのですが、最終的には、
“just do it. If I fail, then I can do something else”
(とりあえずやってみて、ダメならその時に考えればいいや)
と思い、日本に住む事を決めました。
フランスと日本をつなぐ懸け橋に自分はなりたい。
フランス人が日本に住むためには、ワーキングビザが必要なので、
働く先を探していたところ、今の仕事である、
日本の会社がフランスでものを売る際のコンサルティングにたどり着きました。
日本人がフランスでビジネスをする時、市場調査ができていないために失敗してしまう会社をたくさん見てきたんです。
日本にはいい製品がたくさんある。それなのに売れないのは、
フランス人が魅力を感じるように売るノウハウが、日本の会社にないだけだと思ったんです。
例えば、フランスにJapan EXPOというイベントがあるのですが、そこには若いフランス人が集まります。
でも、日本の会社は高い陶磁器を売ろうとしている。それでは当然売れません。
だから私は、どのイベントにいつ出すのがいいのか、
どんな価格帯であれば、買っていただけるか、
といった知識をコンサルティングを通じて伝えています。
これだったら、自分のフランスでの経験を活かして大好きな日本の手助けができる。
そういう思いで、今の仕事をやっていますね。
この事業を通じて、大好きな日本とフランスをつなぐ懸け橋になること、
それが私の目標なんですよ。
自分の力で大好きな日本に貢献できる今の仕事が私は大好きです。
日本に住む事に決めてよかった、今ではそうやって心から言えるんです。
2014.03.19
Jean-Marc Boyer
ジャン マルク ボワイエ|商品販売コンサルティング
フランスに日本製品を売る際のコンサルティングに加え、
日本の着物をフランスに広めるためのイベント等の取り仕切りも行っている。
編集部おすすめ記事2019.10.11
編集部の伊藤です。秋は悩みの多い季節と言われます。例えば、ファッション。先週真夏日があったと思ったら、今週は台風到来と秋は天気が激しく変わるので、何を着るか悩みますよね。でも、そこで無難なファッションを選ぶと気分が上がらない。ファッションが心理状態に与える影響の大きさは様々な研究が示していますが、実はanother life.にもその実例があるんです。今回は、ファッションをきっかけに自分に自信がついた3名のストーリーをご紹介します。ぜひご覧ください。
寝たきりの17歳と社会を繋いだファッション。恩返しのためにパイオニアとして切り拓く道。
ファッションを通じて自信を取り戻してほしい!コンプレックスをチャームポイントに。
人生にBefore/Afterを!「短髪・体育会・ジャージが私服」だった私だからできること。