自転車撤去、さようなら
『自転車の「まっすぐ」と「寄り道」をインターネットでもっと楽しく』というビジョンで、駐輪場の検索・申込サービスを運営する中島さん。「文化」につながるビジネスを創る背景には、どんなストーリーがあるのでしょうか?
中島 大
なかじま まさる|駐輪場の検索・申込サービス運営
駐輪場の検索・申込サービス「PEDALRest(ペダレスト)」を運営する株式会社自転車創業、
ソーシャルメディアマーケティング事業を行う株式会社スゴログの代表取締役を務める。
PEDALRest(ペダレスト)
株式会社スゴログ
レコード・裏原・ラッパー
中学生の頃から、サブカルチャーに目覚め始めました。
最初は音楽から始まって、ある時から、オリコンのランキングで流れる邦楽が、
つまらなく感じるようになったんですよね。
理由はよく覚えていないですが、洋楽のヒットチャートBillboard(ビルボード)を聴くようになりました。
高校生になってからは、よくレコードを買っていましたね。
高校時代はファッションにも関心が強かったです。
ちょうど「裏原系」の全盛期で、古着が流行っていたこともあり、
よくフリーマーケットで出店したりしていましたね。
自分で作ったステッカーを売ったり、他のフリマで買った服を転売したり、
不要品を処分するというよりは、自分で商売をする感覚が楽しかったですね。
「値段はものの価値なんだ」と感じたのが印象に残っています。
大学時代はクラブにハマり、通い詰めていました。
最初は、自分が普段聞いている音楽が、どのようにかかっているのか興味があったんですよね。
それが、通ううちにどんどん好きになっていき、
店員として働いたり、DJを始めたり、最終的には自分でラップをしてステージに立つこともありました。
遊びとしての面白さももちろんなのですが、
自分の考えている事をリリック(歌詞)にのせてラップで伝えたり、
社会的な側面があるのが、面白かったんですよね。
よくわからないけど、ここじゃない
自分が納得していないことはやらない性格だったので、
大学の教養的な授業や、就職活動にもあまり積極的ではありませんでした。
親が士業の事務所を開業していたせいか、ずっとサラリーマンを続けることはないだろう、
という気持ちはありましたが、特に何をしたいというものはありませんでした。
いわゆる「自己分析」はしていなかったんですよね。
結局、社会に出るなら音楽だろうという感覚で、DJ機材のメーカーに就職しました。
就職してみて初めて、自分が好きだったクラブミュージックのニッチさに気付いたんですよ。
当時営業担当だった家電量販店でのDJ機材の扱いをみて、世間に与えるインパクトが小さいことを痛感したんですよね。
そのとき、「よくわからないけど、ここじゃない」って感じたんですよ。
明確ではなかったものの、自分がなりたいものと一致しない感覚があったんですよね。
この時初めて自分の将来について、人生について真剣に考えた気がします。
やっぱり自分で何かしたいという気持ちがあったんですよね。
それに、成長性がある方が良い。
そんな気持ちから、コンサルやITなど、伸びている業界を見て回り、人材系の会社に転職しました。
そこで営業系のキャリアを積んだ後は、web周りでのマーケテイングや新規事業立ち上げの経験がしたく、
新規事業の立案に積極的な企業に入社しました。
この頃には自ら起業することは決めていましたね。
三社目に入社して一年になろうとしていた頃、
当時少しずつ使われ始めていたTwitterで、前職の同僚がこんなビジネスをしたいというつぶやきをしているのを、
たまたま見つけたんですよ。
タイムラインに流れてきたそのプランに関心を持ち、直接話そうと声をかけました。
本当に久しぶりに会ったのですが、その場で意気投合し、それから三ヶ月後には一緒に会社を起こしていました。
当時、「ソーシャルメディア」の分野は、間違いなく一つの波だと思い、
ソーシャルメディアを軸足とした事業を行う、株式会社スゴログを設立しました。
こんなに不便なのはおかしい
設立以来、受託事業であるソーシャルメディアマーケティング事業は堅調に伸びていったのですが、
反対に、自社サービスが思うように立ち上がらなかったんです。
そこで改めて、何をすべきか考え直す機会に直面したんですよね。
どうしても、自分たちができることベースで考えると、新しいと思えるものが生まれないという事もあり、
色々な枠を取り払って考え始めました。
その時にたどり着いたのが「自転車」でした。
独立したてってお金がないじゃないですか?
だから、会社設立当初、行けるところは自転車で移動していたんですよ。
ちょうどその頃、ノーブレーキの「ピストバイク」が流行っており、
文化としての「自転車」にもすごく関心があったんですよね。
ところが、節約のために自転車に乗っているのに、どこに行ってもことごとく撤去されたんですよ。
駐輪場だってそう多くあるわけじゃないのに、こんなに不便なのはおかしいと思ったんです。
そもそも自転車って、すごく普遍的なプロダクトだと思うんですよ。
電車だと何度も乗り換えなければ行けないところも、自転車なら最短ルートをたどれる。
「寄り道」だって、自転車ならではだと思うんです。
でも、そんな自転車が楽しめない環境がある、それを変えたいと思ったんですよ。
特に、わずかばかり点在しているだけの駐輪場を、網羅的に作る事で、
その利便性が格段に変わるんじゃないかと思ったんです。
ビジネスとしても、文化としても意味のあるサービス
その後、スゴログと並行して、株式会社自転車創業という会社を設立しました。
そして、「自転車のまっすぐと寄り道をインターネットでより楽しく」というビジョンのもと、
駐輪場の検索・申込サービス「PEDALRest(ペダレスト)」というサービスを作り始めました。
今僕たちが、目指しているのは、都内であれば、目的地から一分以内に駐輪場があるような世界観なんです。
今はまだ四カ所しか設置できていないのですが、着実に数を増やしていこうと思っています。
僕たちのビジネスは、他のwebサービスみたいに、
短期間で爆発的に伸びるタイプのサービスではありません。
長期的な取り組みになりますし、超えなければいけない壁もあります。
でも、ビジネス的にも、文化的にもすごく意味があるサービスだと思うんです。
少しずつではありますが、不便さが解消されていき、僕の好きな自転車の文化が広まっていく事が、すごく楽しみですね。
2014.03.16
中島 大
なかじま まさる|駐輪場の検索・申込サービス運営
駐輪場の検索・申込サービス「PEDALRest(ペダレスト)」を運営する株式会社自転車創業、
ソーシャルメディアマーケティング事業を行う株式会社スゴログの代表取締役を務める。
PEDALRest(ペダレスト)
株式会社スゴログ
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