音楽業界に新たなビジネスモデルを。
僕が選んだ英雄への道。
4人組バンドのドラマーとしてメジャーデビューを果たし、現在は音楽活動プラットフォームの運営会社を立ち上げ、起業家としても活躍されている海保さん。 「これから先も何をするかはあえて定めない」と話す背景には、小さい頃から一貫した、ある思いがありました。
海保 けんたろー
かいほ けんたろー|バンドマン兼音楽活動プラットフォーム運営
4人組のバンド、「SONALIO」のドラマー。
また、中間業者などを通さずに、リスナーとミュージシャンを直接つなぐ「Frekul」(フリクル)を運営している。
Frekul(フリクル)
SONALIO
目立ちたがりな優等生がドラムと出会う
小学校の頃からとても目立ちたがりな性格でした。
クラスの中でも率先して手を挙げて、先生に当ててもらおうとするような子供で、
その目立ちたいという思いからか、気づけば有名人になりたいと思うようになっていたんです。
またそんな明るい性格の一方で、ある時から突然、自分も含め人はいつか死ぬということを考えるようになり、
恐怖感を覚えて、月に1回くらいは死ぬのが怖くて寝れない日があるというようなこともありましたね。
中学に入学してからも、目立ちたがりな性格は変わらず、
それなりに勉強もできていたので、どちらかと言えば優等生寄りなタイプで、
生徒会にも所属するようになりました。
加えて卓球部に入って活動したり、放課後に友達とサッカーをしたり、幼稚園から続けていたピアノをやったりと、いろいろなことをしていました。
そんなある時、同じ中学で好きな女の子ができたんですね。
その子がドラムをやっていて、興味を持つようになったんですよ。
それで、自分も高校生になったらドラムをやろう、と思うようになりました。
実際に高校に入学してからは予定通り吹奏楽部に入部し、ドラムを始めました。
すると、そのかっこよさや面白みにすぐに魅了されてしまいました。
打楽器に限らず、他にもギターやベースなど様々な楽器をやってみましたが、
実際に演奏をしてみて、ドラムが一番心地よかったんですよね。
また、楽曲全体のベースとなる土台の部分を担っていることも、とても魅力的に感じました。
ドラムで生きていくことを決め、最速のルートを選ぶ
それからはどんどんドラムの練習にのめり込んでいき、
勉強よりもドラムが優先で、授業に行っても寝ていることが増えていきました。(笑)
そして、高校2年生の時に、自分は音楽でやっていこうと決めたんです。
周りの人より自分が少しドラムが上手いということは感じていたので、
なんとなく、将来は音楽で食べていけるかもしれないと感じていたんです。
また、有名人になるという夢を叶えるためには、
音楽の道で成功することがその近道になると思いました。
それからは、音楽をやっていくための進路を模索し始めました。
専門や大学に行くことや、海外に出る方法などいろいろと考えましたが、
有名になるという目標に天井はないし、その達成の難しさを考えると、
できるだけ早く、今からできることを始める必要があると思ったんです。
そこで、高校3年生の途中から、自分が憧れているプロのドラマーの方にお願いして、
ドラムを習いながら、付き人をさせてもらうようになりました。
実際にドラムを教わり始めると、それまではある程度自分のドラムに自信があったのですが、
まだまだ足りないと感じることばかりで、とても悔しい思いをしました。
でもその反面、まだ向上できるという喜びや好奇心も生まれ、ドラムに対する思いが更に強くなりましたね。
しかし、2年程経ったある日、そのドラマーの方に、
「もう付き人はやらなくていい」
と言われてしまったんです。
自分の遅刻などといった怠慢が原因でした。
プロになる夢が少しずつ近づいていると感じていたこともあり、
明らかに夢が遠ざかったと感じ、大きな挫折感を味わいました。
それでもドラマーとしてやっていこうという気持ちがなくなることはなく、
その方の元を離れてドラムを続けることに決めました。
バンド活動が花開く
その後、バイトをしながらバンドをいくつか掛け持ちして活動する日々がしばらく続きました。
しかし、ドラマーとして有名になるという目標を達成するためには、
やはりドラムだけで食べれるようになる必要があるという思いがありました。
そこで、当時割と有名だったバンドメンバー募集サイトに、
「掛け持ちで良ければドラムやります」という書き込みをして、ドラマーを探している人を募ってみたんです。
すると、意外と多くの応募があり、
ドラムができる人がいなくて困っているという人たちのバンドに加わって、ドラムの代行をするようになりました。
そんな経緯から、徐々にお金ももらえるようになり、バイトをしなくてもなんとか生活できるくらいには稼ぐことができたんです。
しかし、自分のメインのバンドの活動も行いながら代行の仕事もしており、
1日11時間くらいドラムを叩き続けなければならない日が出てくるほど、
とにかく忙しくなってしまいました。
そしてついには、自分のメインのバンド活動の時間が減ってしまったんです。
そこで、マンツーマンでドラムを教える仕事に切り替えることで、時間に融通を利かせることができるようにし、
自分がメインでやっていたメリディアンローグ(現・SONALIO(ソナリオ))というバンドに、特に時間をかけるようにしたんです。
そんな風に集中して活動を行うようになり、路上ライブやライブハウスでの活動を続けていたある時、
お世話になっていたライブハウスの店長さんが、ある事務所のプロデューサーの方に、
「最近いいバンドはいないか?」と聞かれた際に、自分たちのバンドのCDを渡して紹介してくれたんです。
そして、それがプロデューサーの目に留まり、そのまま事務所への所属が決まりました。
絶対に売れたいという、自分とメンバーの強い思いが届いた結果、
2008年にメジャーデビューを果たすことができたんです。
所属していた事務所には、ある番組のエンディングテーマに採用してもらうなど、宣伝に力を入れてもらい、
メジャーのアーティストとして活動のスタートを切りました。
ビジネスモデルの限界
しかし、思ったようには上手くいきませんでした。
メジャーデビューをしたにもかかわらず、デビュー前後のCDの売上にそこまで大きな変化がなかったんです。
もちろん自分たちに入ってくるお金も多くはありませんでした。
そしてそれは、会社が収益を不当に多く持っていってしまうというようなことではなく、
会社もバンドも両方ともお金がないという状態が、自分たちのバンド以外でも多く存在していることに気づいたんですよね。
そんな課題感を感じながら活動を続け、デビューから2年程経った頃、これからどうしようかとメンバーと話し合う機会を設けました。
すると、音源がデータ化できるこの時代に、CDの売上で収益を得ることに限界があるという課題感を、
他のメンバーも皆感じているということがわかったんです。
自分自身の音楽の足りなさはもちろん感じていましたが、
それ以上に、今のビジネスモデルのままでは、どんなに音楽が素晴らしくても売れることは難しいと思ったんですよね。
なりたいのは「英雄」
そんな風に話し合う中でたどり着いたのは、やはり現状の音楽業界自体に課題があり、それを変えていかなければならないということでした。
このままでは、ミュージシャンが音楽活動を続けていくことは難しく、
たとえ自分たちが売れたとしても、人々がCDを買うこと自体は減少していき、業界自体が回らなくなってしまう、という危機感があったんです。
そこで、CDだけの収益に頼るのではなく、ライブやグッズといった、
コピーできない「体験」と「モノ」であれば、金銭的価値を出し続けることができると考え、
そこから得られる収益を活かしたプラットフォームを作ろうと考えるようになったんです。
そうやって出来上がったサービスが、『Frekul(フリクル)』でした。
『Frekul』では、メールアドレスを登録することで、定期的にアーティストから情報が発信されたり、
サイト内に設置されたファンクラブに入会すると、ページ内のチャットルームで、アーティスト本人とやりとりできたり、というように、
可能な限り中間業者を入れずに、アーティストとリスナーがより多く接点を持つことができるようにしたんです。
そして、サービスの運営のために、バンドの活動と並行して、メンバーの一部と会社を立ち上げることに決めました。
最初は何もわからない状態でとても苦労しましたが、今では優秀なエンジニアにジョインしてもらうなど、
様々な人に助けられて、少しずつですが音楽業界に変革を起こすことに近づいていっていると感じています。
これからは自分がドラマーとしてもっと有名になることに加えて、
起業家としても、成功したいという思いがありますね。
昔から有名になりたいという思いがありましたが、
最近になってそれが、「英雄」になりたいということだとわかったんです。
というのも、英雄は波乱万丈な人生をたどるイメージがあり、そうやって必死に生きることで、
自分が小さいころから持っていた死への恐怖を忘れることができると思ったんですよね。
今後も自分が更に成長し、英雄と呼ばれるのにふさわしいくらいに、多くの人々に変化をもたらすことができたらと思っています。
ただ、その手段はバンドや会社だけでなく、何でもあり得ると考えているんですよ。
対象はあえて決めずに、これからも英雄になるために何でもやっていきたいですね。
2014.08.06
海保 けんたろー
かいほ けんたろー|バンドマン兼音楽活動プラットフォーム運営
4人組のバンド、「SONALIO」のドラマー。
また、中間業者などを通さずに、リスナーとミュージシャンを直接つなぐ「Frekul」(フリクル)を運営している。
Frekul(フリクル)
SONALIO
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