相手も自分もクリアでいたい。
僕にとっての幸せは「今を生きる」ことでした。

「色をみる」ことを路上で始め、数々の出会いを経て現在はたこやきBARを経営する小林さん。自分を認めてもらいたいと感じながら過ごしてきた中で気づいた「幸せ」とはどういったものなのか、お伺いしました

小林 俊介

こばやし しゅんすけ|たこやきBAR経営
昼間はたこ焼き屋、夜はBARの「ベジタコ Bar AMO」を経営。

伝えたいことを表現したい


中高大と有名私立の一貫校に通い、大学ではミュージカルに打ち込みました。

ミュージカルを始めたきっかけは、高校3年生の時に文化祭で演劇に出たことでした。

僕は昔から目立つタイプではなく、かといって地味なタイプでもなくて、
いわゆる「中間層」だったんです。
でも小さい頃から目立ちたい願望がすごく強くて、
演劇でステージに立つと、みんなが自分を見てくれるのがすごく嬉しかったですね。

そんな経験から、大学からミュージカルを始めたのですが、最初は上手くいかなかったですね。

僕はとにかく目立ちたかったのでアドリブがやりたいし、自分の伝えたいことを表現したいと思っていたんです。
でも、当たり前なんですけど、もちろんミュージカルには脚本があり、作品としてのメッセージがあって、
いざやってみると自分が目立つための場所ではないと気づいたんです。

最初の1年位は個人と作品の間で葛藤がありながらもミュージカルは続け、10公演ほどの舞台に出演しました。

肩書ではない個人


大学生活も後半になり、就職について考えるようになった時、
「舞台で人間の表情や動きを研究をしているのだから、社会でも何かに使えるのではないか」
とふと思ったんです。

人を演じる技術を社会で活かせるか試すために、営業のインターンをしてみることにしました。
結果としては営業成績はまあまあで、悪くはないけど飛び抜けて良いわけでもなかったですね。

ただこの時に、お金ばかりを追いかけるスタイルの営業に違和感を感じて、
誰かのためにやることが大切ではと思うようになり、次は社会的企業でインターンを始めました。
このインターンでは、人のために何かをすることは素敵だと感じたものの、
やっぱり幸せになるにはお金も大事だと思いましたね。

そのため、就職先はお金を稼ぐ力がつくように、今まで出会った中で圧倒的な資産を持つオーナーがー経営する、
名古屋の会社に入社を決めました。
お金を得るためには大企業に行くという選択肢もありますが、有名ではない会社に入ることへのこだわりがあったんです。

自分はそれまで大きな苦労をしていないことにコンプレックスがありました。
裕福な家庭で育ち、有名私立校だったため、どこに行っても学校名である程度の評価を受けていて。
ただ、自分自身ではなく所属する団体のブランドで評価を受けることが嫌だったし、
もし肩書がなかったらどうなるんだろうという恐怖心もあったんです。

だから、自分自身を見てもらえ、肩書ではなく個人で勝負ができる会社を選び、
特別な採用枠で同期の中でもNo.1として入社することになりました。

未来が怖くなった


しかし、仕事では全然結果を出せなかったんです。

結果が出ないのに努力するわけでもなく、自分には特別な力があると信じるだけで、
できないこと、やらないことを環境のせいにして過ごしていました。
そんな生活だったので心は荒んでいき、幸せになるために会社に入ったのに、
全然幸せじゃないと感じるようになってしまったんです。

それまでは、幸せとは年収1000万円以上もらい、定時で帰り、家族と過ごすといったものだと思っていたのですが、
そのプロセスに至るまでが幸せじゃないという事実を突きつけられ、

「そんな生活を目指すことが本当に幸せなのか、本当にお金って必要なのかな?」

と思うようになり、どのタイミングで辞めるかばかり考えるようになっていましたね。

ただ、会社の人たちは本当によくしてくれたからこそ、
本当に辞めてもいいのか、ここで逃げていいのかとすごく悩みました。
だけど、会社にい続けることでその生活が習慣となり、
自分が堕ちていってしまう未来の方が怖かったんです。

悩んで話し合った結果、押し切る形でしたが約1年ほどで退社しました。

「色をみます」


会社を辞めた後、友達がきっかけで気功に出会いました。
友達に連れて行かれた先生のもとで、
気功によって癌の病状が改善していく人たちを目の当たりにし、興味を持ち始めたんです。

気功を習得していくと、身体面の調子だけではなく、
「この人は今、こういうことで辛いんだな」と心理的な面も分かるようになっていき、
心理的側面にフォーカスを当てて何かできないかと思い、
昨年の4月にグループコーチングの「ここしる会」に参加するようになりました。

このグループコーチングで出会った人が、自分の可能性を信じる気持ちを醸成するために、
「自分の持つスキルで、路上でどうにかお金を稼ぐ」というワークを友人に提案していました。

その友人は「それならお前がやってみろ」とFBで軽く炎上して、
僕はそれに反発して、できるということを証明するため、代々木公園で気功を使って稼いでみることにしたんです。

最初は「あなたのオーラをみます」とやっていたのですが、
「オーラの定義は?」となってしまい、中々お客さんが来てくれなかったのですが、
「あなたの色をみます」と変えてからは、少しずつお客さんができました。
値段はお客さんが払いたい額だけ頂くようにしていたのですが、
中には1万円払ってくれるお客さんなどもいて、喜んでもらえるのがうれしかったですね。

それを場所を新宿に変えて半年間続け、約800人の方の色をみてきました。
路上での商売のため次の日にお客さんが来てくれるか分からないので、
この期間を通じて、毎日とにかくやりきるしかないと一日一日を大切に過ごすようになりましたね。

大切なことをクリアにしたい


ただ、路上では制約も大きく、商売を続けていく限界を感じ、
知り合いの紹介でBARなどで色をみるようになりました。

そうしていくうちに、BARでできるなら、自分で経営して飲食代でお金をもらえば、
色をみること自体にお金をもらわなくて良いと気づきました。

そんなことをいろいろな人に話しているうちに、ちょうど東京でBARを開こうとしている人に出会うことができ、
僕のコンセプトや考え方に共感してもらえ、一緒にお店を開くことができたんです。

BARの運営もしたことがなければ経営もしたことがなく、
何もなかった僕という個人をみて、一緒に開こうと言ってくれたのが嬉しかったですね。

BARって初めての人には入りづらい場所なので、昼間はたこやきを売り顔なじみになり、
夜のBARにも気軽に来てもらえることを目指した「たこやきBAR」のコンセプトでお店を出すことになりました。

また、それまでは夢や目標って、自分1人が頑張ることで実現すると思っていたのですが、
1人だけで無理に頑張るのではなく、いろんな人に頼っても良いんだと思うことができ、気持ちが軽くなりました。

オープンしてから4か月が経ちましたが、
お店を開いた北池袋にて、昔から住んでいる地元の方や友達から支えられて、
毎日たくさんの方に来ていただくことができ、とても幸せです。

昔はお金・家族・自由時間と絵に描いたような幸せ像を得るためにプロセスは犠牲にすることが正しいと思っていましたが、
今は「今を大切にすること」が本当の幸せだと感じています。

だからこそ、日々出会う目の前の人を大切にし、喜んで欲しいと思っています。

目の前の人が大切に思っていることをクリアに見るためには、
自分自身の考えがクリアになっている必要があるので、
余計なものはそぎ落とし、自分が伝えたいこと、自分にとって大切なものが何か考えるようにしています。

そうやって目の前の人、そして自分自身にフォーカスを当てることで、
毎日を幸せに生きたいと思います。

2014.08.02

小林 俊介

こばやし しゅんすけ|たこやきBAR経営
昼間はたこ焼き屋、夜はBARの「ベジタコ Bar AMO」を経営。

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