子どもの笑顔を増やしたい。理想の保育を目指して移住。

【広島県提供:「広島移住で始まった、新しい人生」特集】広島県広島市で保育園・ベビーシッター事業を運営する堀江さん。幼い頃に弟を亡くしたことで、子どもの笑顔を作ることが人生のテーマになった、といいます。東京で仕事や子育てをしていた堀江さんが、38歳で広島に移住し、起業することを決めた背景とは。

堀江 美由紀

ほりえ みゆき|保育園・ベビーシッター事業運営
広島県広島市を拠点に保育園やベビーシッター事業を運営する株式会社くうねあに勤める。

※本特集は、広島県の提供でお届けしました。

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場所:認定NPO法人ふるさと回帰支援センター内
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子どもの笑顔を作りたい


東京都北区に生まれ、埼玉で育ちました。5人姉妹の長女で、末っ子とは10歳離れています。小さい頃から、ずっと妹の面倒を見ていましたね。遊びの相手をしたり、授業参観へ行きました。親の代わりに参加するのは、全く抵抗がありませんでしたね。妹たちから頼りにされていました。クラスでは学級委員になるタイプでした。昔から世話好きで、人のためになることが好きでした。

3歳の時、生まれてまだ半年経たない弟が亡くなりました。あまりはっきりとは覚えていませんが、弟が入院していた病院のロビーの風景が記憶にあります。母について病院に行くと、弟は、新生児が入るプラスチックケースの中で、たくさんの管につながれていたのをおぼろげに覚えています。

それから大人になっていく中で、「生きたくても生きられない子がいるのだから、せめて生きている子は幸せになってほしい」と思うようになりましたね。弟のことが影響しているんだと思います。「子どもの笑顔」が私のテーマになりました。

高校で将来のことを考えていた時、父の仕事だったタイル職人に興味を持ちました。父の仕事現場によく連れて行ってもらいまして馴染みがありましたし、住まいと子どもの笑顔はつながっていると思ったんですね。例えば、コンクリートの壁の家に住む夫婦は、離婚率が相対的に高いという調査もあるんです。

ただ、タイル職人は体力勝負です。私は、住宅全体を作る建築士を目指すことにしました。笑顔で暮らせて、家族が仲良くなる住宅を作りたいと思いましたね。資格を取るべく、高校卒業後は建築の専門学校に進みました。

学校の授業はどれも楽しかったですね。クラスメイトは図面を速く描くのですが、私は丁寧にゆっくりでした。そのため宿題は毎日徹夜でしたね。丁寧に進めることが大切だと思っていました。

専門学校卒業後、大手ハウスメーカーに就職しました。有名企業で安定していること、大きな会社には新卒の今しか行けないとその時は思ったので、迷わず決めました。

子どもの意志を尊重する保育がしたい


入社後は、2級建築士の資格を取得し、設計のセクションで図面修正の仕事をしました。完成した家を見る時は、いつも感動しましたね。完成した家に住んでいる方を訪問したり、そこで生活することをイメージしながら仕事ができて、やりがいがあり、充実していました。入社3年で、社内結婚しました。

7年ほど働いたところで、転職を考え始めました。残業が多く、体調を崩しはじめていました。仕事が充実していたので、身体への負担に気づかないふりをしていましたが、将来は子どもが欲しいと思っていたので、ここで身体を大事にしようと考え直しました。

子どもの笑顔にもっと直接関われる仕事をしようと、27歳の時に、建築士の求人があった大手の保育園グループに転職しました。保育園の企画・設計・建築に携わる仕事でした。期待と同時に緊張感もありました。前職よりも幅広い業務を少人数で担当することになり気が引き締まりましたね。

新しい環境では、仕事がダイレクトに子どもの笑顔につながる手応えがあり、嬉しかったです。ただ、転職の時に考えていた「身体をいたわる環境に」と言っていられない状況でした。会社が新規展開を急速に進めていたので、毎日とにかく忙しかったです。

また、働く中で会社の保育方針について違和感を感じるようになりました。子どもの数が多い大規模保育園で、クラスの人数も多く、一斉に行動させることになります。私は子どもの様子をみながら意思を尊重しながら保育をしたい。どちらが善い悪いではありません。ただ、私の中でどうしても受け入れられない部分がありました。

私は、子どもには子どもの意思があり、その尊重が必要な存在と思うのですよね。大人と対等どころか、子どもってすごく能力が高いじゃないですか。自分で表現できないのと、人生経験がないだけで、子どもは大人よりも能力的には高いと思います。本来は、大人は子どもを従わせるのではなく、手助けをする関係がいいのではないかと思うんですよね。

そんな方向性の違いもあり4ヶ月で退職しました。崩していた体調が回復しなかったのも理由の一つでしたね。

退職後は、少しゆるやかに働きました。ホテルのフロントから労働組合の事務員まで、派遣社員として色々な環境で働きました。働きながらも、子どもの笑顔のためにできることはなんだろう、と勉強する日々でした。

体調を戻すことが最優先でした。気づけば30歳を過ぎて焦りもありました。仕事の時間を減らして、身体を休めました。

震災を機に決めた起業と移住


35歳で子どもを授かりました。子どもができて、ほっとしました。1年間は子育てに専念し、その後、自宅でできる仕事を始めました。お母さんが自分のしたい仕事を持ち、元気でいれば 子どもも元気でいられる、そう思っていましたね。

子どもが2歳の時に、東日本大震災が起きました。私は新宿のビルの15階にいました。「生きて家に帰れないかもしれない。人間、いつか何がどうなるかわからない。」という感覚を持ちました。幼い時に弟が亡くなったとはいえ、それまで自分の死は思いもしませんでした。生きているってすごいなと思いました。

震災後、子育ての環境に悩むようになりました。原発の影響など、環境に不安を感じない場所で育児がしたいと思ったんです。これまでの経験から大規模園の保育に抵抗がありました。子どもを預けたいと思えるような、近くに自然環境がある小規模保育園が足りないと実感しました。

夫も保育に関心が高く、勤めていたハウスメーカーの新規事業担当として保育や介護を考えたまちづくりを提案していましたが、実現に至らず。その後、他メーカーが同じ事業を始め、悶々としているように見えました。私も夫も、「安心して預けられる保育園」を増やしたいと思いました。

震災を機に、夫は会社から独立して、子育て支援事業を立ち上げることに決めました。「やりたいことをやらないと後悔する」と考えたんだと思います。私も一緒に、保育園やベビーシッター事業の運営を手伝うことにしました。

夫の実家がある広島県広島市で、会社を立ち上げました。近くに海や山がある。待機児童が多く、大都市でニーズもある。保育の環境としても、事業の条件としても、やりたいことが実現できる環境でした。

「がんばるぞ」という思いで、あまり不安に思っていませんでしたね。事業を始める上で、8割の会社が3年未満でなくなることは知っていました。もしかしたら、3年後に、路頭に迷っているかもしれません。でも、だから不安かというと、そうでもないんです。うまくいくような気がしていました。

38歳で東京から広島に移住しました。

理想の保育ができている感覚


現在、広島県広島市に「株式会社くうねあ」を立ち上げ、保育園とベビーシッター事業を運営しています。

最初は忙しくて日々が飛んでいくような感覚でした。てんてこ舞いとはこういうことかと思いましたね。時間管理が成り立たないほど分刻みで仕事があり、焦りました。残業が多いとかいう度合いじゃないんです。自営業でプライベートも仕事も線引きがありません。こんなことは初めてでした。

でも、やりたいことができている感覚がありましたね。自然の近くで、安心した環境で、少人数で。自分が本当に提供したい保育ができたんです。自分がしたことが園児さんの日々を作ることにダイレクトにつながって。ありがたい毎日でした。全員自分の子どものような気持ち、理想の保育を注ぎ込む感覚で、ひとりひとりのお子さんに接しています。

私は、ベビーシッターとして、ご自宅に伺ってお子さんの世話をしたり、お母さんが世話をする間の家事をしたりしています。お子さんと1対1なので、究極の少人数保育という感じですね。0歳から小学生まで幅広い年齢で、お子さんの病気や用事で預けなければいけない時に、1日から受け入れています。

お子さんが良く笑って楽しそうに時間を過ごしてくれると、幸せな気持ちになりますね。仕事をしていて、小さいお子さんが私に何かくれる事があるんです。その瞬間は、お子さんがすごくいいお顔をしているんですね。そのようなやりとりができるようになった時、すごく幸せを感じます。お子さんがいいお顔をしてましたと保護者の方に報告した時に、喜んでもらえるのも嬉しいですね。

これからは、里親・養護施設・虐待防止など、誰にも気づかれずに辛い思いをしている子どもたちを助けることもしていきたいです。より幅広い形で、子どもの笑顔を増やすことに関わっていければと思います。

2016.02.19

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