「本当に大切なもの」を見つけるお手伝い。 思い込みや世間の枠を、取っ払って生きる。

コーチングで、仕事もプライベートも理想の人生を歩むためのお手伝いをする小林さん。幼い頃からしっかり者で、わがままを口にすることはありませんでしたが、ずっと自分を押し込めていたことに気がつきます。小林さんが自分にとって、本当に大切なものを見つけたきっかけとは?お話を伺いました。

小林 舞依

こばやし まい|H&S coaching代表・キャリアアップコーチ
宮城県亘理町生まれ。11年間、営業や接客業に従事したのち、大手通信企業の営業コンサルタントとして、顧客の売上目標達成に貢献。2018年に独立し、HappinessとSuccessの両方を支援するH&S coachingを立ち上げ。前向きに頑張る女性を応援する「東京営業女子会」主宰。BOSS力アップ講座主宰、1000MissionJapan発起人。日経xwoman、一ノ蔵公認すず音のアンバサダーも務める。

私が家族を守らなきゃ


宮城県亘理町で生まれました。母方の祖父母と両親、弟の6人暮らしです。祖父が大工の棟梁で、父はそこに弟子入りしていました。

祖父の元には多くのお客さんが訪れるので、家の中には常に大人が出入りしていました。そのせいか、小さい頃から大人びていて、周囲の空気を読んで振る舞う子どもでしたね。例えば祖父の機嫌が悪くて祖母も怒っているような時は、家の空気がピリピリします。祖父母は初孫である私を可愛がってくれていたので、そういう時は「このお菓子美味しいね」とニコニコして話しかけて、場を盛り上げに行っていました。なんとなく、家族のためには私が笑顔でいた方がいいんじゃないかと感じていたんです。

小学校に入学してすぐ、父と母が離婚して、父が家を出て行ってしまいました。そのころは祖父母の家を出て団地に住んでおり、父がいなくなると家計が苦しくなりました。光熱費を払えず、夜になるとうちだけ真っ暗に。私は、弟も母も守らなきゃという気持ちがあり、父のことは一切口にせず、泣きもしませんでした。でも、ある日母が「パパの話していいんだよ、泣いてもいいんだよ」と言ってくれたんです。それを聞いて、何かが溶けて。わんわん泣いてしまいました。

家で家族を守らなきゃ、と思っていたのと同じように、学校でも弱い立場の人を守ったり、グループに入れなかった子と一緒に遊んだりと、正義感の強い子どもでした。2年生になるときは後輩ができるからと、早朝6時に登校したくらい責任感も強かったです。黒板消しや掃除など、誰もやりたがらない仕事も率先してやっていました。自分の欲望を口に出すことはありませんでしたね。

夢は最初から諦めた


小、中学校に通ううち、先生に憧れるようになりました。担任の先生に、どうやってなるのか聞きに行ったら、「大学に行って免許をとるんだよ」と言われたんです。その頃は祖父母の家に戻って一緒に住んでいて、母にお金がないとか生活が苦しいとか言われたことはありませんでしたが、確認する前から「うちは大学にいけない、無理だ」と諦めました。

じゃあ何になりたいか考えて、授業で卵焼きを焼いたら家族に褒められたのを思い出し、料理ができて華やかなイメージの、カフェの店員に憧れを持つようになりました。高校は調理師の専門コースがある学校に通いたいと思いましたが、お金のかかる私立しかなかったので断念。部活でバスケットボールをやっていたので、強い学校に進みたかったのと、卒業後は働けるというので、仙台市の商業高校に進学を決めました。

入ってみると、周りはみんなギャルばかり。怖くてなかなか馴染めませんでしたが、バスケ部に入って厳しい練習についていく中で、少しずつ友達ができましたね。

高校を卒業したら、就職することは迷わず決めていました。だから部活をする傍ら、就職に有利な資格は一通り取得。カフェへの憧れがあったので、飲食や食品系の就職先を探していました。すると、先生に「お前はここにいけ」と生活用品の製造・販売を行う会社を紹介されたんです。地元では有名な会社で、バスケ部の先輩も多く就職していました。今年の入社枠は一人分。もし私が行かなければ、今後就職したい後輩の道を閉ざすことになってしまいます。責任感が顔を出し、部活の朝練の合間をぬって必死で面接の練習をして、なんとか採用してもらうことができました。使命感でしたね。

夢を叶えている人への憧れ


入社自体は希望していませんでしたが、いざ入るとしっかりやらねばと思ってしまい、首席で研修を終えました。研修の中で人事の人と関わる機会が多く、興味を持って配属希望を出したのですが、最初の配属は事務職。やってみるとデスクワークが性に合わず、仕事に行きたくない日々が続きました。

毎日すごいストレスで、1年目を終える頃には30キロ近く太ってしまったんです。一番大きい制服も入らないくらいになって、毎日泣きながら残業して。これ以上やったら病んでしまうと思って、勤務中に退職届の書き方を検索するまで追い詰められました。しかし突然、異動を言い渡されたんです。「よし、今の環境を抜けられる!」と思いました。

次の配属は商品企画の部署で、商品のデザイナーが多く所属していました。そこで初めて、自分の夢を叶えて働いている人を見たんです。「なんでデザイナーになったんですか?」と聞いて回ると、みんなそれぞれ小さい頃からの夢があって。それを実現させて今ここで働いているので、すごく楽しそうなんですよ。仕事は裁量が大きく大変な部分もありましたが、それをやっている姿もかっこよく見えました。夢を叶えている大人って素敵なんだなと感じましたね。

先輩たちを見ているうちに自分もインテリアデザインに関わってみたいと思うようになり、3年目には総合職に変えてもらって、インテリアの企画に携わりました。中国の工場に出張するなど新しい体験ができ、成長を実感できて楽しかったです。

ただ、ずっとこの仕事を続けて行くビジョンは描けませんでした。私は専門的なデザインの勉強をしてきた訳でもないし、今からそれを身につける熱量も持てなかったんですよね。4年目に差し掛かるころ、部署は宮城から東京に拠点を移し、私たちも東京に足を運ぶように。その中で東京で働く男性と知り合い、結婚を考えるようになりました。良い機会だと思って、東京に転職することにしたんです。

以前やりたかった飲食業界で働こうと考え、求人を探しました。しかし、住む場所を探す中で出会った不動産業者に、「うちにおいで」と誘われたんです。なんだか楽しそうだなと感じ、軽い気持ちで転職先を決めました。

やりたいことはこれじゃない


入ってみると、不動産は全然楽しくないし、きつい割に給与も低かったです。しかも、彼とも結婚が破談になり、どうしていこうか悩みました。そんな時、あるお客さんが「好きなことをやったほうがいいよ」と言ってくださって。それで今度こそカフェで働こうと決め、都内で様々なカフェを運営する会社に転職しました。子どもの頃からやりたかった仕事にやっとつけると思うと、とても嬉しかったです。

業務内容は、自分のイメージと同じで違和感はありませんでした。でも、やってみてすぐに「違う」と気づいてしまったんです。自分のやりたいことはこれじゃない、と。私がやりたかったのは、いわゆる珈琲店のマスターのような、人と話しながらサービスを提供できる仕事でした。店を回すのに精一杯で、人と触れ合う暇のない飲食の仕事は違うなと思ったんです。

小さい頃からの夢が叶ったのに、それは自分のやりたいこととは違った。どうしたらいいかわからなくなり、「お金があればなんでもできる」と思うようになっていきました。極端な話、お金があれば好きな場所に店を開いて、オーナーになれるかもしれない。結局全部お金なんだ、と。

今度はお金を稼げそうな不動産投資会社の営業に転職。「男の年収は1000万円以上ないとダメ」と公言するなど、全ての基準がお金になっていきました。

抑圧していた本当の気持ち


そんな2011年、東日本大震災がありました。地元が被災したのに、何もできない自分がいたんです。お金を求めて働く今が正しいのか、疑問を抱くようになりました。もう一度価値観を考え直そうと、紹介を受けて働き方が緩やかな人材会社に転職。さらにヘッドハンティングされて別の人材会社に入って、企業の研修などを行うようになりました。

その中で、ある会社の営業成績をあげるための研修を任され、どういう指導方法がいいのか模索しました。いろいろな本を読む中で、「コーチング」という技術を知ったんです。人にも勧められて、セミナーを受けに行ってみることにしました。

100人くらいの受講生が、3日間のセミナーに参加していました。その中で、ペアを組んでワークをすることに。ひたすら、「あなたにとって大切なことはなんですか?」と問いかけてもらうワークです。最初に問いかけられた時は、「お金を稼ぐことです」と答えていました。しかし、聞かれ続けるうちに答えが変わってくるんです。

あなたにとって大切なことはなんですか?
「母を守ることです」

あなたにとって大切なことはなんですか?
「地元に貢献することです」

あなたにとって大切なことはなんですか?
「家族を大事にすることです」…。

そして最後に問われたとき、私の口から出てきたのは「自分を大事にすることです」という答えでした。

これまでずっと、本当は自分のことが嫌いでした。年収にこだわる性格の悪い自分も、夢のない自分も、高卒で田舎育ちで経験値のない自分も、全部嫌いで劣等感があったんです。でも、本当はずっと、自分を大事にしたかった。子どもの頃から、それはしちゃいけないことだと、知らないうちに抑圧して生きてきたことに気が付きました。

私って、自分を大事にしたいって思ってたんだな。腹落ちして周りを見てみると、ペアを組んだ人も、他の受講者も、みんなが私と同じように、自分で気づかなかった自分の本当の気持ちを知ったところでした。それを見て「世の中にはなんて自分を抑圧して生きている人が多いんだろう」と思ったんです。コーチングが広がって、自分の本当の気持ちを知れる人が増えれば、もっと幸せになれる人が増えるんじゃないか。そう感じて、コーチングの勉強を始めました。

固定概念に囚われるな


独学でコーチングを学び、営業成績をあげるための研修に取り入れてみました。「あなたにとって大切なことはなんですか?」とは聞かないものの、営業成績をあげるという目標を叶えるための問いかけを研究し、参加者に問うていったんです。

すると、みんながどんどん楽しそうに仕事をするようになったんですよ。「僕たちは上司からも期待されてないし、この店なんていつ閉店するかわからない」と言っていた社員が、「今月の目標を達成して昇格しました。後輩たちに研修しなきゃいけないので、研修の仕方、教えてください」と言ってきてくれたり。数カ月前に言っていたことと、全然違うことを言うんです。そういう変化が見えてくるのがすごく楽しくて、やりがいを感じました。

また、コーチングをしたことで私生活も変わりました。実は、ずっと付き合って一緒に住んでいた彼がいたのですが、結婚を言い出せずにいたのです。結婚願望は強かったですが、プロポーズは男性がするものだ、自分から言ったら負けだ、と考えていました。それから、仕事を取るべきか家庭を取るべきかで迷いもあったんですよね。

でも、コーチングしてみて私の幸せは、結婚して家庭を築くことだと明確になりました。だから、婚姻届付きの結婚情報誌を自分で購入して、彼に渡したんです。男性から言われるまで待つとか、三歩下がって後ろを歩くとか、女性はそういうものだ、という勝手な思い込みがありました。でも本当に欲しいものがあるのなら、そんなのは些細なこと。固定概念を全て取っ払っても、欲しいものが手に入るならそれでいいんじゃない?と思えるようになったんです。30歳の年末にコーチングを知って、翌年の3月には彼と籍を入れました。

その経験から、自分がしたような体験をしている女性が多いのではと思い当たりました。女性は「こうあらねば」という固定概念が多いんですよね。プロポーズされないって悩んでる子も、結婚しなきゃいけないって思っている子も、子どもがいるから仕事を制限しなきゃと悩んでいる子も、彼氏がいないことがすごい劣等感になっている子も、すごく多い。でも、そこじゃないでしょ!って。本当は違うことをやりたいのかもしれないですよね。いろいろなものに囚われているからこそ、その枠を取っ払って本当に大事なものを見つけて生きていく選択肢を示したいと思いました。そこで、「東京営業女子会」というコミュニティをつくって、コーチングしていくようになったんです。

同じころ、通っていた講座で起業家の人と出会いお話しする中で、起業が身近に感じられるようになりました。それまで遠い世界のことだと思っていましたが、自分にもできるんじゃないかと思えたんです。ちょうど、会社はキャリアカウンセラーの資格取得を推奨しているところで、私の方針とは合わないと感じていました。キャリアカウンセリングは企業の求人ありきになってしまいがちなので、その人のやりたいこと、大切なものを引き出すコーチングとは方向性が違うと感じたのです。会社と話し合いをする中で、円満な形で独立することに決めました。

仕事もプライベートも理想の人生を


今は、個人でH&Sコーチングという事業を展開しています。HappinessとSuccess、両方を手に入れられる人を増やしたいという想いからこの名前をつけました。仕事もプライベートも、理想の人生を生きる大人を増やしたいと考えています。そんな大人たちを見ていたら、子どもたちも「あんな大人になりたい」と思えるんじゃないかと思うんです。他には、東京営業女子会をはじめ、女性、男性、親子向けとコミュニティも運営し、ワークショップなども開いています。

大事にしているのは、自分にとって本当に大切なものを見つけること。それがわかれば、そこに至る方法なんてたくさんあるはずなんです。ただ、それを見つけるのを妨げる固定概念が、世の中にはたくさんあるし、自分の中にも存在しています。特に課題感があるのは女性ですね。結婚しなきゃ、子供を産まなきゃ、家庭ができたら仕事はやめなきゃ、など、様々な枠が存在しています。それに囚われることはないんだよ、と示したい。現に私も、高卒だけど起業したし、人生経験はないけれどコーチングしています。自分自身が大切なものをブラさず、固定概念に囚われず生きていく姿を見せることで、そんな生き方もあるんだと伝えていきたいです。

2020.03.19

インタビュー・ライティング | 粟村 千愛
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