退職、結婚を経て会社の後継ぎに。起業をする気持ちで挑戦します。
「感動とエンターテインメント」というテーマのもと、業務用の食品メーカーの後継者として、新しい挑戦の準備を進める篠田さん。大手IT企業を退職し、業界も規模も全く異なる会社に転職した背景には、どのようなキッカケがあったのでしょうか?
篠田 純希
しのだ じゅんき|食品メーカー勤務
業務用の食品メーカーの有限会社松蔵に務める。
有限会社松蔵
MATSUKURAふらんす亭(レトルトカレーなど市販用商品)
ディズニーへの強烈な憧れ
小さい頃から、ディズニーランドが大好きでした。
初めて行ったのは小学1年生の時、家族旅行のことでした。
存在自体は知っていたのですが、
「こんなところがあるのか!」
と驚きましたね。
特にシンデレラ城のツアーで、たまたま案内のお兄さんに選ばれて、
アトラクションの一環で、僕だけヒーローのメダルをもらったんです。
その瞬間、ここのお兄さんになろうと決めたんです。
本当にすごく嬉しくて、強烈に憧れたんですよね。
実家は岐阜だったのですが、それ以来、毎年必ず通うようになりました。
それに留まらず、自分なりに研究を始めるようになり、ディズニーを調べるのが趣味になったんです。
本もたくさん読んだし、オリエンタルランドの広報に問い合わせて、資料を取り寄せたこともありました。
「なんで?」と思ったことは全て調べました。
気づけば段々と経営につながっていき、ただのディズニー好きから、経営分析に変わっていったんですよね。
そんな背景もあり、高校3年生を迎える頃には、大学で経営を学びたいと考えるようになっていました。
ディズニーで働くという目的もあったので、東京の大学に進学することに決めたんです。
感動やエンターテイメントに関わる仕事
予定通り東京の大学に進学してからは、ディズニーランドの面接で、十何年抱えてきた夢を語り、
無事アルバイトとして採用してもらうことができました。
さらに、ちょうどシンデレラ城ミステリーツアーの人員に空きがあり、配属してもらうことができたんです。
「ついに、ここに自分が立てたんだ」
と、夢が叶ったことに対しての感動は大きかったです。
裏側も意識して研究してきたこともあり、仕事は本当に楽しかったですね。
残念ながら、私が2年生になるときにシンデレラ城のアトラクションは終わってしまったのですが、
受験後、浪人しようか迷っていた経緯もあったので、1年でも働けたことに運命を感じました。
その時々の選択が楽しかったと思える人生にしようと、改めて思いましたね。
毎週土日は必ずディズニーの仕事で、結局卒業ぎりぎりまで働きました。
私にとっては、サークルではなく、ディズニーでしたね。
ただ、卒業後はディズニーから離れることを決めていました。
もともと、キャストとして現場でお客さんと触れ合うことを夢に描いてきたので、
社員になり、お客さんとの接点が減っていくのは違うなと感じたんです。
自分でも一つ区切りを付けようと思い、就職活動を始めました。
じゃあ自分は何をしたいんだろう、と考えたとき、
漠然と可能性を感じていたのは、インターネットの領域でした。
その中でも、これまでの仕事の影響もあり、
感動やエンターテイメントと絡むような仕事ができたらいいなと感じたんです。
そんな経緯で、IT業界で活発な印象のあった企業に就職を決めました。
「この会社を無くしたくない」
入社後は旅行関係の事業で、箱根や熱海のホテルのコンサルティングを行う仕事に就きました。
自分の仕事で店舗の売り上げにつながった際はやりがいも楽しさもあったのですが、
反面、会社の方針や考え方が合わない部分もあったんです。
「これは本当にお客様のためなのだろうか」という思いになることもありました。
年数を重ねるにつれて、何か違うフィールドでやりたいなという気持ちを持つようになったんですよね。
そんな背景もあり、週末は彼女の実家の、飲食店等で利用する業務用の食品を作るメーカーで、
お手伝いをさせてもらうこともありました。
デイズニーのバイトをキッカケに付き合った彼女だったのですが、
結婚の話をしていく中で、実家の会社を継ぐという選択肢があることも聞いていました。
最初は迷っていたのですが、ある時、震災の復興支援のため、会社総出で炊き出しに行く機会があり、
その中で、漠然とですが、
「この会社を無くしたくないな」
と感じたんです。
自分の立場と運命を感じて、「自分がやるしかない」という思いを持つようになったんですよ。
全く違う業界での挑戦でしたが、私は会社を辞めて、彼女の実家の会社に入社を決めました。
起業するのと同じような感覚
まずは業界のことを知らなくては、という思いから、
静岡のレストランや自社商品を製造している工場で修行しました。
仕事は大変でしたが、実態を知れたことで、仕事の理解はとても深まりましたね。
その知見を生かし、今は営業として、大手チェーン店や飲食店で使用する業務用のソースの開発から携わり、
オリジナルの商品を作っています。
自社ブランドのカレーの味に絶対の自信を持っているからこそ、もっともっと多くの人に食べてもらいたいと感じているんですよね。
「営業」という仕事自体は前職と同じなのですが、今は自分の扱う商品にすごく自信を持っているんです。
かつては半信半疑だったが故に苦しんだので、100%自信を持てる環境は本当に幸せです。
まだまだ小さな会社ですが、小さいながらも喜んでもらえる人を増やしたいですね。
「会社を継ぐ」という位置づけではあるのですが、自分としては起業をするのと同じような感覚でいます。
食に留まらず、違う分野の事業でも会社を大きくしていきたいなと思っているんです。
会社を長く継続させるという、もう一つの使命のためにも、今は後継者になるための勉強に注力しています。
将来は、昔やりたくてできていなかった、インターネットとエンタメの融合にもう一度挑戦したいという気持ちもありますね。
「うわ、これすごい!」
というような、身震いするものを作りたいんです。
2014.06.03